大前研一「ニュースの視点」Blog

KON542「日立製作所・国内電機大手・タカタ~価値ある情報収集を考える」

2014年11月7日 ソニー タカタ 問題発見 情報収集 日立製作所

本文の内容
  • 日立製作所 連結営業利益5800億円見通し
  • 国内電機大手 電機大手8社の連結決算出揃い
  • タカタ 広がるリコール、タカタの甘い認識

日立はまだまだ収益力を上げられる/ソニー不振の原因は社長にあり


日立製作所は先月29日、2015年3月期の業績予想を上方修正し、営業利益が前期比9%増の5800億円になる見通しを発表しました。

従来予想から200億円引き上げ、2期連続の最高益。IT分野が好調なほか、中国向けの昇降機などインフラ関連も拡大しているとのことです。

確かに日立は好調ですが、GEなどに比べて見ても、さらに収益力を上げることができると感じています。

最近の動きで特筆すべきだと思うのは、オーストラリアの資源大手リオ・ティントと巨大鉱山の運営で連携するというものです。リオが持つ鉱山の運営ノウハウと日立のインフラ管理技術を持ち寄り、鉄鉱石の生産コストの約1割削減を目指すそうですが、このような事業展開は非常に面白いと思います。

売上・利益の推移を見ると、日立の売上はほぼ横ばいで利益も6000億円です。日経新聞を読んでいると、全てが右肩上がり状態だと感じてしまいますが、日立が本格的に伸びるのはこれからですし、そのように手を打つべきです。

日本最大の企業集団ですから、やろうと思えば相当なことができるはずだと私は見ています。

***

国内電機大手の状況を見ると、日立だけでなく三菱電機や東芝なども調子が良い一方、ソニーの苦戦が見て取れます。

先月31日に出揃った電機大手8社の2014年4~9月期連結決算を見ると、パナソニックや日立製作所などが大幅増益となるなど全体としては復調傾向でした。一方で、ソニーは中国・韓国のメーカーの価格競争力の前にシェアが低下し、再建の屋台骨であるスマートフォンも早々に失速し、構造改革の進捗と稼ぐ分野の見極め具合で明暗が別れた形になっています。

ソニーの赤字の原因はどこにあるのでしょうか?

スマートフォン事業の不振が赤字の原因として、ソニーは先月30日スマートフォン事業を手掛ける子会社ソニーモバイルコミュニケーションズの鈴木社長の退任を発表しています。いわゆる、更迭人事でしょう。

しかし、問題があるのはソニーの平井社長だと私は思います。そもそも、スマートフォン事業に選択と集中という判断をしたのは平井社長だからです。

私に言わせれば、サムソンやアップルという競合のこと、将来価格が1万円に下落するという見通しを考えれば、スマートフォン事業に手を出すこと自体が、経営者として失格です。

「今、儲かっているもの」に飛びついて、「選択と集中」するというのは、非常に単純な発想です。

もともとソニーといえば、「無から有を生む」という文化を持つ企業です。それにも関わらず、スマートフォンや不動産など、目の前にぶら下がっている美味しそうな果実に飛びついてしまうというのは、事業を自分で創ったことがないサラリーマン社長の悲哀だと私は感じています。

また、ソニーの取締役会にも問題があります。「モノ言う取締役会」として有名なソニーでしたが、今は全く機能していません。

ハワード・ストリンガー元社長も追い出すことが出来ず赤字を垂れ流し、現平井社長もすでに4期連続の赤字です。経営能力がない社長をクビにできない体制も改善すべき課題だと思います。

 

原因救命されないと、タカタは会社存亡の危機


東洋経済オンラインは先月27日、「広がるリコール、タカタの甘い認識」と題する記事を掲載しました。2013年4月以降、タカタ製エアバッグに起因するリコールは、トヨタ、ホンダ、日産など10社に広がり、自主回収まで含めると、グローバルでは計1600万台に達すると紹介されています。

米メディアの批判報道は過熱し集団訴訟の動きもあるなど、タカタが窮地に追い込まれていると紹介しています。

現状、タカタは400万台・400億円相当の対応になると見込んでいるようですが、米国の報道だと一部の議員からは、全てを取り替えろという意見も出ているようです。

もし本当に全てを取り替えるとなると、1600万台を超えて3000万台~4000万台に達すると思います。こうなると負担額は3000億円~4000億円になり、タカタの負担能力を超えてしまうでしょう。

なぜこんなにお金がかかるのか?というと、今のエアバッグはハンドルと一体化しているからです。そのためエアバッグを取り替える場合、ハンドルごと取り替える必要があります。ちょっとした部品交換では済まないのです。

また一番大きな問題は、原因が究明されていないことです。フロリダやルイジアナなど、高温多湿な地域で発生する可能性が高いとも言われていますが、確実なことは判明していません。

原因がわからない限りは、「全て取り替えろ」と言われても致し方ない状況になっています。

ホンダなどは長年タカタとの関係性もあって、それほど厳しい条件を突きつけていないようですが、米国のユーザーからの突き上げが激しくなっています。

原因がはっきりしない限り、まだまだこの問題は広がるでしょうし、下手をすると命取りになります。タカタは日本の中堅企業として非常に優秀な企業ですが、壊滅的な打撃を受けつつあり、今、窮地に追い込まれています。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今回はタカタのリコールの事例を取り上げました。不具合の原因が究明されないため、数千億円を負担しかねない状況に同社は陥っています。

問題解決の基本として情報収集はかかせませんが、闇雲ではなく効果的に作業を進めていく必要があります。

・分析するテーマを分解して、情報収集に必要な項目を考えておくこと
・関係者にインタビューを行い、得た情報を整理統合して仮説をつくっておくこと

このような準備を予め行っておくことで、本質的問題の発見につながる、価値ある情報収集が可能となります。

★価値ある情報収集のスキルを鍛える
BBT問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=JTqCUl02&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点