大前研一「ニュースの視点」Blog

KON540「年金運用・ラップ口座・国内株式市場・リクルートHD~調達した1000億円をどう使うか」

2014年10月24日 401k ラップ口座 リクルート 国内株式市場

本文の内容
  • 年金運用 確定拠出年金見直しへ
  • ラップ口座 主要4社残高が2兆円超
  • 国内株式市場 PBR1倍割れが5割
  • リクルートHD 東証一部に新規上場

年金について国任せではなく、「自分でやる」という意識を植え付けるべき


厚生労働省は14日、運用成績によって将来もらう年金額が変わる確定拠出年金(日本版401k)の見直しに着手しました。

公的年金の目減りが避けられないなか、老後の備えを厚くするため、企業年金制度の加入者を増やす考えとのことです。また、約130兆円の公的年金を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は17日、国内株式での運用比率の目安を12%から20%台半ばに大幅に引き上げる方向で調整に入っています。低収益の国債中心の運用を改め、年金給付の原資を増やす狙いです。

GPIFに関しては、塩崎恭久厚生労働相が「日本の株価を支えるにはこれしかない」と一生懸命取り組んでいます。国債中心で進めていると、日本国債が暴落したら目も当てられない事態をまねきます。国債が安全ではない時代だということは忘れてはいけません。

確定拠出年金については、先進国の年金給付水準を比べてみると日本の課題が見えてきます。20歳から標準的な支給開始年齢まで平均賃金水準で働いた場合に支給される年金の所得代替比率は、だいたいの国は50~60程度が年金として給付されます。米国はやや水準が低いですが、私的な年金も含めると70程度になります。そのような中、日本は30程度しか年金として受け取れません。

以前、年金と同じように毎月支払われるという仕組みを持つ、一時払い養老保険がありましたが、いつの間にか下火になってしまいました。

人情としては、生涯平均給与の6割~7割り程度は毎月支払われて欲しいところでしょう。国に任せて安心ではない時代ですから、政府は国民に対して、私的な年金運用も含め「自分たちでやらなければいけない」というメッセージを伝えるべきだと私は思います。

そのような中、日経新聞が13日報じたところによると、富裕層などの個人がまとまった資金の運用を金融機関に任せる「ラップ口座」の残高が2014年9月末で2兆円を超えたことがわかりました。

これは前年同月比2倍、3月末に比べて6割強増加したもので、脱デフレへ期待が広がるなかで、長期の資産づくりを目指す金融商品の一つとして関心を集めているとのことです。

当初は1億円など最低受付金額が高額でしたが、現在は300万円から可能になっています。米国ではこのような「お任せ」の形態は非常に一般的ですが、日本ではかつて多くの事故を招いたことから、取引一任勘定取引を禁止とされてきました。ここに来て、時代背景もあって、その状況が変わってきているということでしょう。

 

リクルートは調達した1000億円で何をやるべきか?


東京株式市場で投資尺度のPBR(株価純資産倍率)が1倍割れとなる銘柄が増え、17日は東京証券取引所第1部の5割を占めました。世界的な株価の急落で投資家心理が弱気に傾き、理論上の「解散価値」とされる1倍割れとなっても買われない状況です。

1倍割れということは、時価総額が帳簿価格よりも低い状態で、非常に珍しいことです。極端なことを言えば、買収して解体して売りさばくだけで利益になるでしょう。世界的に見ても、政治・経済にいい材料がなく、米国企業の業績は良いのですが、それだけでは力不足ということでしょう。

国内株式市場が冷え込んでいる中、リクルートホールディングスは16日、東京証券取引所第1部に株式を新規上場しました。初値は3170円と公募・売り出し価格(公開価格)の3100円を上回りました。初値をもとにした時価総額は1兆8100億円で、1990年以降に新規上場した企業ではNTTドコモ(7兆4600億円)、日本たばこ産業(JT)(2兆8700億円)に次いで3番目の大型上場となりました。

リクルートは、創業者の江副氏が東京大学在学中から始めた企業で、非常に長い歴史を持っています。江副氏はリクルート事件後、リクルートからは身を引くことになりましたが、その後も株式投資を始め、若手の音楽家への投資・支援事業、外国人向けのウィークリーマンション事業など、色々な事業へ意欲を見せていました。

もともとリクルートは上場しないというポリシーでしたが、江副氏は色々な事業を展開するにあたり、保有している株をキャッシュに変えたいと思うようになっていたようです。私も江副氏とは面識がありましたが、非常に立派な経営者だと思います。世の中を見る視点が鋭く、今のリクルートの土台を築き上げた人物です。昨年、亡くなられてしまいましたが、もし今回の上場を目にしていたら、新規事業を始められる資金ができたと喜んでいたでしょう。

3年連続で売上も利益も全て右肩上がりという絶好調を示して上場を果たしたリクルートですが、今後の展開には課題もあります。今回、約 1000億円の資金を調達したわけですが、それを何に使うのか?既存の事業領域でみると、国内にはそれほど投資できるものは残っていません。今まで手を付けていない、インターネット関連事業の買収などは検討の余地があると思います。

そうなると、海外を模索することになると思いますが、すでにアデコなどリクルートよりも大きな企業が展開しています。 中途半端な大きさの人材会社を買収しても、太刀打ち出来ないでしょうし、規模で闘うには1000億円では足りません。

江副氏の後継者であるリクルートの経営陣が、このあたりの課題をどのように乗り越えていけるか、注目していきたいと思います。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


上場することで1000億円を手に入れたリクルート。今後、何に投資をしていくかが課題となっています。

大前は記事中、インターネット関連事業の買収の余地や海外展開の難しさについて言及しましたが、皆さんはどう考えますか?

もし自分が○○だったらどうするのか?正解が決まっているわけではありません。

現在進行形で起きているリアルなケースに対して思考訓練を重ねることが、問題解決に必要となる「自ら考える」力の習得につながっていきます。

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