大前研一「ニュースの視点」Blog

KON535「吉田調書・朝日新聞~ファクトのない日本のマスコミを考える」

2014年9月19日 ファクトベース 吉田調書 朝日新聞

本文の内容
  • 吉田調書: 政府が吉田調書を公表「海水注入、絶対やめるな」
  • 朝日新聞: 記事は誤り、取り消すと発表

朝日新聞の転落の物語が始まった


政府は11日、東京電力福島第1原子力発電所事故時の状況に関し、政府の事故調査・検証委員会が吉田昌郎元所長から聞いた「吉田調書」を公表しました。

原子炉を冷やす海水注入に首相官邸内で慎重論があったにもかかわらず「絶対に中止してはだめだ」と部下に命じ注水を続けたと証言したことが明らかになりました。

調書の公表を受け、朝日新聞社の木村伊量社長は、同日「所員が吉田氏の命令に違反し撤退した」などと報じた記事は誤りで取り消すと発表しています。

まるで朝日新聞の転落の物語を読んでいるようです。

このようなお粗末な事例は、今回の件だけではありません。14日にも朝日新聞社は、任天堂と読者に謝罪しています。

それは、2年前に経済面に掲載した記事で、任天堂の岩田聡社長が公式サイトの動画で発言した内容をインタビューしたかのように掲載していたというのが理由とのことです。

こんなことがあり得るのか?と感じるかも知れませんが、私は何度も新聞社の取材を受けたことがあり、日常茶飯事だと知っています。

かつて私のところへ取材に来た、ある新聞記者は「締め切りまで時間がなくて急いでいる…」などと前置きしつつ、インタビューはわずか10分ほどで終わらせ、あとは私の著作を参考に追加的な内容を記事にしても良いか?と許諾を求めてきました。

要するに、私に取材・インタビューをする前から記事は出来上がっているのだと思います。まともに取材・インタビューをしようとする姿勢を感じません。記者が想定している内容と実際にその時私が伝えようとする内容は違うのだ、などと話し始めると非常に面倒な事態になります。ですから、私はある時期からテレビ番組にも出演しないと決めましたし、基本的に新聞社の取材も受けていません。

従軍慰安婦、吉田調書の一連の朝日新聞の誤報について、大きな問題だと感じることの1つは、朝日新聞の左翼的な勢力のせいで
日本の外交問題に発展していることです。

これら2つの記事は、左翼的な思想の元、日本という国を実態とは異なる姿で伝えています。そして中国、韓国では、これらの記事を読んで日本という国を理解し、語ろうとするわけです。影響力は大きく、かつ重要な問題だと思います。

 

日本のマスコミには、真実を伝えようという気持ちがない


また、これは朝日新聞社だけではなく、どこの新聞社にも共通することですが、日本の新聞社は「大本営発表をそのまま伝えるだけ」という戦争時の姿勢と本質は全く変わっていないというのが、大きな問題だと私は感じています。

例えば、私は震災直後の3月19日の時点で、「福島第一原発はメルトダウンどころかメルトスルーしている」と指摘していましたが、
当時は東電も事実を認めていませんでしたし、当然どのマスコミもそのような報道はしていませんでした。

その後、ようやく12月になって東電が事実を認めました。私はこの時、いくつかの新聞社に「東電も認めたのだから、事実を書け」と指摘しました。しかし、いずれの新聞社も「今さら、そんなことは書けない」と言うのです。

要するに、毎日のように政府の発表をそのまま報道し解説までしていたのに、まともな取材や事実確認をしなかったことを認めて、すべてひっくり返すことはできない、ということでしょう。これでは、大本営発表をそのまま報道しておいて、「いまさらミッドウェー海戦以降は勝っていませんでした」とは言えなかった、という戦時中と全く同じです。

さらに言えば、こうした体質は新聞社だけでなく、他のマスコミも同様です。NHKにしても、従軍慰安婦の報道、福島第一原発の報道、いずれに対しても朝日新聞と同じような論調でずっと報道しており、その後、報道内容を大幅に修正して発表などをしていません。何十年後になれば、NHKスペシャルのような番組で発表するかもしれませんが、現時点で言えばほとんど何もしていないというレベルだと思います。

このようなマスコミの体質を見ていて、私はもはや何も期待していません。彼らには「真実を伝えよう」という気持ちがないのですから、話になりません。もし、実態はどうなっているのか?という気持ちがあるなら、絶対に調査から始めるはずです。自分の足で調べるはずです。投げ込みの記事を書いたり、記者会見で聞いたりしたことをそのまま記事にするだけ。

そんな記者があふれている現状には期待するほうが無理なことです。原子炉の問題など、自分の足で調べれば、すぐに真実は分かったはずです。

マスコミの責任と役割などと言われますが、いかにエリートが集まっていても、今の日本のマスコミの姿勢では、「責任」や「役割」を論じる以前の問題だと私は思っています。

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今回は報道の信ぴょう性に関する解説をお届けしました。その都合の良さのあまり、マスコミは現場を取材して報道するというスタンス自体が問われています。

では、ビジネスの現場ではどうでしょうか?事実に基づかない恣意的な論理展開では、正しい意思決定を行えません。

大前が記事中で指摘しているように「実態はどうなっているのか?」というファクトベースの姿勢を持つことが大前提となります。

根拠となるファクトが抜けている、もしくはファクトを見誤っていては、成果を出すことはできないのです。

「論理思考を鍛え、バリューを創出する」
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
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