- 本文の内容
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- ケンコーコム: 後藤玄利社長が退任意向
- 大塚製薬: ブラジル・ジャスミンを買収
- ネスレ: コーヒーマシンを無償設置
- マクドナルド: マクドナルド負の連鎖
特許切れ問題を買収なくして乗り切る大塚製薬
ケンコーコムは27日、後藤玄利社長が辞任の意向を表明したと発表しました。
同社は後藤氏退任について、「楽天グループとのシナジーを最大化することにより企業価値を向上させるのにふさわしい経営陣に移行するのが最善」と理由を説明していますが、私は本当の理由ではないと感じています。
OTC医薬品(通称:大衆薬)のネット販売について、矢面に立たされて国と戦わされることに疲れたのだろうと思います。
最近はOTC医薬品以外のものについても、楽天グループとして取り組みを命じられているようですし、ずいぶんと悪者にされています。
直接話を聞いたわけではないので、推測の域を出ませんが、おそらく現状に耐えかねたのではないでしょうか。
私でも、都合の悪い国の相手ばかりやらされていては嫌になると思います。
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大塚製薬は28日、ブラジルの健康・機能性食品最大手、ジャスミンをフランス子会社のニュートリション・エ・サンテを通じて買収すると発表しました。
ジャスミンの全株を月内に取得し、費用は数十億円とみられています。大塚グループが南米で食品事業を展開するのは初めてとのことです。
また先日発表された中期経営計画では、主力の抗精神病薬「エビリファイ」が米国で15年4月に特許切れを迎えるものの、新薬の販売拡大などで18年業績回復を目指すと発表しています。
エビリファイと言えば、大塚ホールディングスの売上の約4割を占める主力商品です。世界的な製薬会社の特許切れ問題への一般的な対処方法は、他社の買収です。
例えば、武田薬品は、米ミレニアム・ファーマシューティカルズやスイスのナイコメッドなど約2兆円の買収をしています。
マーケットも特許切れ問題の影響を危惧していましたが、中期経営計画によれば買収などをせず、ほとんど自社の商品だけで乗り越えられるという見通しとのことで、非常に好印象を残しました。
その後、大塚ホールディングスの株価は上場来高値をつけています。正直言って、少し出来すぎの感もあります。
ボンカレーやポカリスエットで有名ですが、メインは医療会社であり、今期は日本で一番の収益を上げた製薬会社になりました。
特許切れ問題を自社製品だけで乗り越えていくというのは、世界的に見ても珍しく、非常に特徴的です。
ネスレ、マクドナルド、LINEに見るそれぞれの課題
ネスレ日本は独自開発のコーヒーマシンを活用してコーヒー需要を開拓すると発表しました。
企業向けのマシン無償貸し出しで運輸業界や高齢者施設などへの設置を始め、顧客数を2020年までに現在の3倍の50万件を目指します。
シェアは家庭向けが37%なのに対しオフィス向けを含む家庭外は3%にとどまっています。
一杯だけコーヒーを作れる独自開発のコーヒーマシンを使い、家庭外での需要を掘り起こす狙いとのこと。
日本人は相変わらず、インスタントコーヒーの割合が一番多く、レギュラーコーヒーがそれに続いています。
この市場に対し、ネスレは「レギュラーソリュブル」という新製法のコーヒーを展開しているわけですが、これが非常にわかりづらいと私は思います。
「インスタントではない」という切り口で訴求しようというのはわかりますが、日本人に馴染みがない言葉なので、この名前ではピンとくる人はいないでしょう。
お茶で「朝摘み」や、『綾鷹』のコピーのように「急須で入れたような」などと聞けばイメージできますから、飲む気になりますし、売れるのもわかります。
天下のネスレにしては、あまりにも初歩的なミスだと思います。もっとネーミングに工夫をするべきでしょう。この時点で戦略を間違っていると言わざるを得ません。
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先月31日、日本経済新聞は「マクドナルト負の連鎖」と題する記事を掲載しました。
中国上海市の仕入れ先が使用期限切れの鶏肉を使用していた事件が起きて、日本マクドナルドホールディングスの既存店売上高は急落し、業績の予想すらできない窮状に陥っています。
一方でキャンペーンを展開するマックウィングの販売価格を米国本社が管理しきれず、国内全体の8割以上で過剰請求していた問題も発覚しました。
これは原田前社長の「負の遺産」であることを見逃してはいけません。
原田マジックと称された原田前社長の経営ですが、実際にはフランチャイズ店を売却した利益が大きかっただけで、既存店の売上は減少していました。
これは、売上高の対前年同月比の推移を見ればわかることです。
今になって、売却対象となるフランチャイズ店もなくなり、収益を上げる材料がなくなってきて、追い打ちを掛けるように食品問題が浮上したという格好です。まさに負の連鎖です。
原田前社長が用いていた「経営手法」に問題があったということが重要なポイントだと私は思います。
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無料対話アプリのLINEは先月27日、電子商取事業に本格参入すると発表しました。
商品を共同購入すると最大半額で買えるほか、プレゼントを贈り合う仕組みなどを導入し、国内に5200万人いる
会員間の「つながり」を消費につなげる狙いとのことです。
急成長を続けるLINEですが、アプリのダウンロードとは違って大きな壁があることを認識することが大切です。それは、決済と物流です。
どれだけユーザーを獲得しようと、ECを展開する以上、「どうやって決済してもらうのか?」「どうやって届けるのか?」というのは外せない要素です。
そして、この2点において楽天よりも圧倒的に強い仕組みを構築したのがAmazonであり、ゆえにAmazonが日本一になったのです。
「決済」と「物流」の仕組みをどう構築するのか?これは一筋縄では行きません。時間もかかるし、大変なことだと思います。