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旭硝子
ロシアで建築用板ガラスを増産
モスクワ拠点に約210億円の設備投資
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●旭硝子がグローバル化・海外事業展開に成功した理由
22日、旭硝子は、ビルや住宅で使う建築用板ガラスを
ロシアで約6割増産すると発表しました。
投資額は約210億円で、経済成長が続くロシアやその周辺諸国
では建築需要が拡大しており、増産体制を整えて
成長市場でのシェア固めを急ぐ考えとのこと。
生産能力は日産1,000トンと、1つの窯としては世界最大規模
ということですから、これは思い切った投資と言えるでしょう。
私としては、このような旭硝子の海外展開のプロセスを、
ぜひ他の企業の経営者には参考にしてもらいたいと思います。
なぜなら、旭硝子は、あまり一般には知られていないかも
知れませんが、日本を代表するグローバル企業の1つで、
海外事業を上手に展開している稀有な存在だからです。
そもそも、旭硝子がこのような海外事業展開に成功した
要因は、30年程前の段階で、ベルギーの由緒ある
総合板ガラスメーカー・グラバーベル社の株式を取得し、
経営に参画したことに始まります。
その当時から、ヨーロッパ側から世界を見るようになり、
海外事業の展開を行って来たことが、今日の成功に
大きく影響していると私は見ています。
旭硝子の海外拠点は50を超えていて、そこで働く人々は
3万人を越えていますが、旭硝子から派遣されている社員は
わずか250名程度ということです。
このあたりにも旭硝子が持つグローバル化・海外事業展開力の
強さやノウハウを感じます。
昨年、業界2位の日本板硝子が英ガラス大手のピルキントンを
買収しましたが、旭硝子に比べてみると、遅すぎる対応と
感じざるを得ません。
●旭硝子が成功した"プロセス"を参考にすべし
具体的に、旭硝子の地域別連結業績の推移を見てみると、
2006年12月期では約1兆9千億円の売上を記録していて、
その内訳は次のようになっています。
※「旭硝子の地域別連結業績の推移」
・日本:9,100億円、アジア:4,400億円、
米国:2,100億円、欧州:3,700億円
営業損益の推移では、ここ5年間、米国が逓減していて、
苦戦しているのが見受けられます。
しかし、コーニング社など基盤の強い会社がいることを
考えると、致し方ないと言えるでしょう。
一方、日本では日本板硝子とのほぼ独占状態の中、
飛躍的に利益を伸ばしつつ、アジア・欧州では堅実な数字を
残しています。
日本を代表する大企業である三菱重工や日立製作所でも、
海外事業の売上は全体構成比の50%に満たない程度ですから、
グローバル化・海外事業の展開という点では、
旭硝子が稀有な存在だと理解できるでしょう。
グローバル化を声高に叫んでいても、
実際にはドメスティック企業に過ぎないというのが、
大半の日本企業の実態です。
企業のグローバル化・海外事業展開の重要性は、
今後より一層高まってくるでしょう。
逆に、そのような視点を持った経営ができなくては
淘汰されるのは必至だと思います。
旭硝子のように、グローバル化に成功している企業は、
ごく少数ではありますが、存在します。
今さら、単にその結果だけを見て、真似ようとしても
意味がありません。
どのようなグローバル化のプロセスを踏んで旭硝子が
成功したのか?という点に注目して、プロセスとその考え方
そのものを参考にしてもらいたいと思います。
以上