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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON524「空港運営権・パイロット不足~海外からの人材受け入れの必要性を考える」

2014年7月4日


空港運営権 関空、伊丹の運営権売却

パイロット不足 パイロット不足対策まとめ


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▼ 空港運営のポイントは、日本の縦割り行政がどれだけの自由を認めるか

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関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の事業運営権の売却に

向けた入札条件が明らかになりました。


両空港を運営する新関西国際空港会社に対し、

原則として運営期間の45年間、毎年488億円以上を支払うとのこと。


総額は最低で約2兆2千億円となり、同社はこの収入で

約1兆2千億円の債務と金利負担分を完済する方針です。


この数字を達成するためには、50%程度利益率が

高くならないと現実的ではないでしょう。


オーストラリアのマッコーリー銀行などであれば、

経験もありますから十分実現できる数字だと私は思います。


ただし、日本の場合には役所が縦割りになっているため、

どの程度自由度が与えてもらえるのか、疑問の余地があります。


ボーディングゲートのこと、乗り入れの条件のこと、

あるいは周辺の土地に対するアクセスについてなど。


例えば、関空の場合には空港にアクセスする際に、

必ず有料道路を使って橋を渡らなくてはいけません。


本来は、代替としての無料道路がなく、有料道路のみ

というのは認められないはずですが、

関空ではそのような状態になっています。


もし私が経営者なら、「有料道路のみは法律違反」だと

道路公団に交渉を持ちかけ、無料で渡れるように

働きかけると思います。


また、検疫や税関の問題、消防署や警察との関係はどうなるのか?


など、様々な課題があります。これらを決定していくためにも、

縦割りの日本の行政がどこまで自由を認めてくれるのか、

非常に重要なポイントでしょう。


今の日本は金余り状態なので、低金利で借り入れ可能です。


ゆえに、日本で借りたお金をオーストラリアなどで

運用して利回り5%もつけば御の字です。


しかし結局のところ、こうしたエコノミクス的な

メリットはあっても、日本の縦割り行政がどこまで自由を

認めてくれるのかがはっきりしないと、

本当の意味でメリットもわからなくなってしまいます。


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▼ 世界市場からパイロットを調達し、管制塔の改革から着手せよ

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国土交通省の有識者会議は27日、深刻なパイロット不足への

対応策をまとめました。


自衛隊OBによる民間転身の促進や現在64歳までとする

年齢制限の緩和など即戦力の活用と、パイロットを養成しやすい

環境整備の両面から対策を盛り込んでいます。


人手不足の影響は格安航空会社(LCC)の欠航などで

旅行やビジネスに影響が出始めており、

国が本腰を入れて対策に乗り出す構えを見せています。


日本はパイロットの絶対数が少ないのが、大きな課題です。


パイロット総数が6800人しかいない上に、その大部分の5686人が

エアラインのパイロットで、全く余裕が無い状態です。


一方、米国は総数270000人もいて、そのうち主要エアラインの

パイロットはわずか10分の1で28000人に過ぎません。


さらに軍隊の中にもパイロットが多数います。


英国でも、総数18000人に対して、エアラインのパイロット数が

3688人です。


日本がどれだけ切羽詰まった状況にあるのか理解できると思います。


自衛隊OBによる民間転身の促進や年齢制限の緩和などの

対策が挙げられているようですが、私に言わせれば

「外から輸入する」のが最善策だと思います。


飛行機はもともと国際的なものですし、

機体を製造しているのも、エアバス、ボーイングという

海外メーカーです。


特に私が推したいのは、管制塔に外国人を配置する

という方法です。


世界的に見て日本人は英語が上手くありません。


日本人が管制塔にいても、やはり海外のパイロットとの

相性はあまり良くない印象があります。


米国ではエアラインからリストラされた人材が

たくさんいますし、台湾やイスラエルなど元軍人の

パイロットも世界中にはたくさんいます。


元の人数が少ない日本人パイロットで

どうにかしようとするのではなく、何万人、何十万人単位

でいる市場から人材を引っ張ってくる発想が必要でしょう。


そして、管制塔の改革から先に着手するのが良いと私は思っています。


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