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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON154 日本の小学生は中韓より「学ぶ意欲」低い

2007年3月16日

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学習意識調査 日中韓の小学生に大差
将来のためにも、今がんばりたい
東京:48.0%、北京74.8%、ソウル:72.1%
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●子供の学習意識の違いは、親の教育問題


7日、日本青少年研究所の調査の結果、日中韓の小学生を
対象にした調査で、「将来のために今がんばりたい」と
考えている小学生は北京とソウルで7割以上なのに対して、


東京では半数以下だったことが分かり、同研究所は
「日本の小学生は勉強への関心が低くなっている」と
分析しています。


私は今回のようなアンケート調査というのは、
国柄などの事情で建前で答える影響があるので、
そのままの数字を鵜呑みにはできないと思っています。


しかし、今回の結果に関して言えば、ほぼ私が中国や韓国を
観察している印象と合致しています。


今回のアンケート結果である次の数字には、
日本の最大の問題が浮き彫りになっていると思います。


日中韓3都市の小学生の「なりたい人間像」についての質問で
「そう思う」と答えた人の割合(%)


・将来のためにも、今がんばりたい
(東京:48.0%、北京74.8%、ソウル:72.1%)


・勉強のできる子になりたいか
(東京:43.1%、北京78.2%、ソウル:78.1%)


・友達から好かれる子になりたい
(東京:25.3%、北京59.4%、ソウル:53.3%)


・先生に好かれる子になりたい
(東京:10.4%、北京60.0%、ソウル:47.8%)


(参考):「あてはまる」と回答した人の割合(%)
・テレビを見ながら食事をする
(東京:46.0%、北京11.8%、ソウル:11.7%)


※「日中韓3都市の小学校のなりたい人間像」
「日中韓3都市の小学校のなりたい人間像」チャート


これらの数字を見て感じたのは、
中国や韓国の子供たちの反応は、まさにかつての日本と
同じだということです。


今、中国や韓国はかつての日本と同じように、
何とか国を豊かにしたい、自分も豊かな暮らしがしたい
というガッツを持っていると思います。


一方、日本の子供たちは、自分自身でも、自分の夢が何なのか?
何を目標にしたら良いのか?ということが全くわかっていない
と感じざるを得ない反応です。


将来のためにもがんばりたいわけでもないし、
友人や先生から好かれるようになりたいわけでもないし、
勉強ができるようになりたいわけでもない。


「いったい、何をしたいの?」と思わず、聞いてみたくなります。


しかし、これは子供たちの責任ではなく、親による教育の結果です。


顕著な例として現れているのが、例えば、「テレビを見ながら
食事をする」という割合の高さです。


これは、親も一緒になってテレビを見ながら食事をしている
ということでしょう。


テレビを見れば必然的に話題はテレビのことになって
しまいます。テレビを見ないで食事をすれば、話題を自分で
作るという良い練習をすることができます。


つまり、意識の持ち方次第で、夕食の時間というのは
貴重な教育の時間になるわけです。


親がこういうことを分かっていないで、家庭での教育が
放任状態になっているから、子供たちは夢も希望も持てない
ようになってしまっているのだと思います。


小さなことかも知れませんが、家庭内の教育の1つ1つが、
教育再生会議以前の問題として、教育の土台を作る
非常に重要な課題だと私は感じています。


●もはや、国も教育委員会も人材育成の担い手に
なれないと認識するべき


教育環境を整備するという意味で、つい先日の中教審(中央
教育審議会)による、教育委員会に対する国の権限強化を
めぐる両論併記の答申が示されました。


焦点となっていた文科相の教育委員会への指示などを
認めるかどうかについては、「必要とする意見が多数」とする
一方、「地方分権の流れに逆行する」という反対意見を
併記する異例の結論になったとのことです。


この問題は要するに、教育委員会に対して
国が厳重注意できるのかどうか?という点が争点でしょうが、
私に言わせれば、そんな議論そのものが不要です。


将来、道州制になったら、基本的な人材育成の役割は、
道州に任せるべきだと思うからです。


そして、私が思うに、もはや国も教育委員会も、いずれも
人材育成ができる立場ではないだろうと思います。


今の国家が育てた子供たちが、今の子供たちの現状なの
ですから、国が教育対策に失敗しているのは明らかでしょう。


それでも理論的には、国が教育を担うという方法も
成り立つとは思います。


しかし、今の教育再生会議の様子を見ていると、
どうにかして戦前の国家観に戻っていこうとしているように
感じられます。


そんな状態では、国家が人材育成を担うのは、
"いつか来た道"に戻ってしまうような不安を覚え、
私は賛成できません。


また、教育委員会というのも時代遅れの存在です。


未だに、子供たちがインターネットでホームページを持つのが
妥当かどうかを論じている組織です。


こんなことは、学校の教育哲学と法律に照らし合わせて
考えれば簡単に判断できることです。


法律違反ならば罰するべきですし、学校の教育哲学に反するなら
その学校にはいるべきではないという、シンプルなことです。


これからの教育を考える上では、国も教育委員会も放っておけば
いいと思います。


この両者の勢力争いなど論じるに値しません。
家庭内の教育に加えて、基本的な人材育成のための教育を
道州が担うということを前提に、教育環境の整備に力を
注ぐべきだと思います。


そして、これらの教育の土台の上に、学校教育が存在します。
学校教育においては、それぞれの学校が自らの教育哲学を
打ち出すことが大切だと思います。


そして、それぞれの学校の教育哲学に賛同した子供たちが
入学するべきだと思います。


教育問題を考えるに当たって、まず今の日本の子供たちの現状を
作り出している原因をしっかりと認識するべきでしょう。


親の教育、地域の教育、教師や教育委員会が時代遅れになって
いること、などその原因に目を向けていけば、解決策も自ずと
見えてくるでしょう。


それらを見ないで、表面的な勢力争いをしても何ら解決には
なりません。


意味のない議論で無駄な時間を費やさず、いち早く
教育環境の整備に着手してもらいたいと思います。


                                     以上


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