大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON520「商業販売統計・税制改正・骨太の方針・休眠預金・医療用検査薬~時代に即した打ち手を考える」

2014年6月6日


休眠預金 社会福祉事業の財源に

商業販売統計 4月の小売販売額 11兆110億円

骨太の方針 人口減、高齢化など中長期課題に取り組み

税制改正 夫婦一体の所得控除案を検討

医療検査薬 市販拡大への検討に着手


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▼ 休眠預金は未来の若者のために/消費増税の反動が顕著に

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日経新聞は、1日「休眠預金、社会福祉事業の財源に」と

題する記事を掲載しました。


金融界は預金者からの要請があればいつでも払い戻しが

できるなどの条件を満たせば、活用には応じる構えです。


もちろん社会福祉は大切なことですが、

ここに資金を投じるのは「底なし沼」に

足を突っ込むような感覚があります。


悪いことではないですが、私としては明日の日本を担う若者のため、

ベンチャー投資に使う方が有効だと思います。


また、ここに来て消費増税の影響が顕著になってきています。


経済産業省が先月29日発表した4月の商業販売統計によると、

小売業の販売額は前年同月比4.4%減の11兆110億円でした。


消費増税による駆け込み需要で3月は11.0%増と

大きく伸びていましたが、その反動が出た形です。


想像以上に反動が大きいということでしょう。


コンビニはそれほど影響は出ていませんが、

特に百貨店など大きなモノの販売が苦しい状況になっています。


アベノミクスで上向きだという予想が

見事に外れてしまったと言えるでしょう。



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▼ 骨太の方針に具体性なく、中途半端な議論ばかり

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政府が6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)

原案が先月30日明らかになりました。


少子化対策として「第3子以降の出産・育児・教育への重点的な支援」

を掲げています。


来年度予算については社会保障費以外の歳出を、

「前年度と同程度の水準」に抑えるよう求めるものとなっています。


骨太の方針と言われても、各々の項目を見ると、

私にはどのあたりが「骨太」なのか理解し難いものばかりです。


NISAにしても大したものではないですし、

外国人労働者も特区のみの適用では話になりません。


少子化問題対策として掲げられている、第3子以降にインセンティブというのも、

効果はどうか懸念してしまいますし、50年後も人口1億人の維持については

何ら具体的な方法論が示されていません。


合計特殊出生率の推移を見ても、ドイツや韓国と同様、

相変わらず低い水準で改善されていないのは明らかです。


また、女性活用の税制についても指摘されていましたが、

非常に中途半端だと私は感じました。


この点については先月24日の日経新聞でも報じられていました。


配偶者控除の見直し問題で妻の収入がいくらになっても

夫婦全体の控除額が変わらない新制度を作る案が、

政府内に浮上してきたとのことでした。


この問題を突き詰めると、方法論は2つしかありません。


1つは、夫婦合算して税率を決める方法です。


この場合、独身者の税率は高くし、

子どもがいる場合には特別な控除を設定すればいいでしょう。


もう1つは、各々が独立したものとして計算する方法です。


このときも子どもがいる場合には同様に対処します。


いずれにせよ、昔とは違って、

「旦那が働いて、奥さんも子どもも扶養家族になる」

というスタイルが全体の4分の1にも満たない事実を受け止めるべきです。


過去のスタイルに根ざした税制ではなく、

抜本的に考え方を変える必要があると思います。


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▼ 検査薬を開放すると、実際にどのように使われるか?

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厚労省は4日、医療や薬局関係者、消費者代表などが参加する

審議会を開き、病院で使われる医療用検査薬を薬局や

ドラッグストアで買えるようにする検討作業に

着手することが明らかになりました。


欧州では、日本よりも身近に検査薬が売られていて、

消費者が購入することができます。


日本では規制が厳しかったわけですが、今回、

不妊症に悩む人向けに排卵日の検査薬を販売しても

良いという許可が下りると言われています。


私が気になるのは、実際にこの検査薬が販売された時には、

不妊治療に悩んでいない人も使うのではないかということです。


おそらく避妊を目的に使われる可能性が高いと思います。


ドイツや米国では、習慣的に避妊薬としてピルを

服用している女性が少なくありません。


日本ではピルの使用量は少ないですが、

果たして排卵日検査薬が販売された時にはどうなるのか?


非常に気になるところです。



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