大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON508「海外利益・政府系ファンド・公的年金~海外事例を施策に活かす」

2014年3月14日



海外利益 海外子会社からの受取額 3兆5200億円

政府系ファンド 昨年末の日本株保有額 約3兆7700億円

公的年金 運用利回り目標など検証へ


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▼ 投資アイディアがない日本企業。一方、日本を研究し投資するノルウェー年金基金

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日経新聞は4日、2013年に国内の親会社が海外の子会社から

配当や利子として受け取った額は、前年より7割多い

3兆5200億円に増加したと報じました。


税制改正により海外から利益を戻しやすくなったことが

背景になっているとのことです。


95%の税金免除というのは非常にありがたく、

資金を日本の国内投資に回せるという点でも

意味があります。


しかし、実際には日本国内には資金がだぶついているので

直接的な問題解決にはつながらないでしょう。


日本国内企業の手元資金は220兆円を

超えていると言われていますから、海外からの

3兆円など本来必要ありません。


投資が活性化しないのは資金不足ではなく、

投資のアイディアや勇気がないということです。


ここに一石を投じることができなければ、結局、

資金がだぶついて終わり、

というだけになってしまうでしょう。




一方、世界に目を向ければ、投資のアイディアを持ち、

スキルが高い人たちがいます。


世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金は

昨年末の日本株保有額は約3兆7700億円に達し、

前年末から約1兆8300億円増加しました。


日本企業の構造改革が進み、成長力が高まるとの期待から

中東やアジア諸国も日本株投資を増やしています。


世界でも最も高いパフォーマンスを誇る

ノルウェー政府年金基金を運営しているのが、

ノルゲスバンクという銀行です。


非常に戦略的に世界分散投資をしており、

またその手口・手法を公開しているのが特徴です。


また、日本株を非常によく研究しています。


保有率を見ると、トヨタは0.7%ですが、

ファナックは2.54%、さらには、パイオニアの6%を保有しています。


かつてスタートトゥデイの5%を保有していたこともあり、

パイオニアに対しては「大化け」を

期待しているのだと思います。


安定ブルーチップから、将来有望なもの、そしてパイオニアのような

「逆張り」まで、相当細かく日本を研究した上で80兆円の資金のうち、

かなりの部分を日本株に投資しています。


彼らの手口・手法は、インターネットで一般の人でも

見ることができるので、参考にしてみると良いでしょう。


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▼ 日本の年金基金の実力は、まだまだ未熟。

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厚生労働省は6日、公的年金の積立金運用で想定する利回りの目安を

社会保障審議会の専門委員会に提示しました。


5年ごとに実施する年金財政の検証作業の一環で、

具体的な利回り水準として、将来の経済状況に応じ名目で

年3.0~6.0%程度を確保する必要があるとの考えを示しました。


最近では国債保有率が減少してきていますが、

それでも現状のままなら日本国債が暴落したら、

銀行も年金もすべておしまいです。


今後は、国内の株式、外国の株式、外国の債権へ

シフトしていくべきでしょう。


問題は日本の年金基金には「投資・運用のスキル」がないことです。


最近、カナダの州の年金ファンドと組んで、

一部運用を任せる動きなども見せていますが、

これは良いことだと思います。


知識がないのに無理に運用すればかつて証券化商品で

損失を出した農林中金の二の舞いになります。


取りあえず、外部に委託という形でも

賢明な判断だと言えるでしょう。


ただ将来的には、一流のファンドマネージャーを

連れてくる必要があると私は思います。


先日、米大手運用会社PIMCOのモハメド・エラリアンCEOが

辞任したというニュースが報じられましたが、

私ならばすぐに彼を招聘することを考えます。


ハーバード大学の基金運用に参加していた経験を持ち、

間違いなく世界でもトップレベルの

ファンドマネージャーの一人です。


そういう人材を連れてくるべきです。


今、日本の年金基金の利回りが上昇してニュースになっていますが、

長い期間で見れば、ずいぶんと利回りが低い時期もあり、

安定していません。


シンガポールの年金基金のように、30年間にわたって

好成績を維持できるようになることを期待したいところです。



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