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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON504「国内株式市場・NISA・住宅ローン金利~他国のケースと比較して見る」

2014年2月14日


国内株式市場 日経平均が今年最大下げ幅

NISA 開始1ヶ月人気首位は武田薬品工業

住宅ローン金利 「フラット35」の2月適用金利を発表


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▼ 国内株式の下落は、アベノミクスへの調整の結果

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4日の東京株式市場では日経平均株価の終値が前日に比べ

610円安となり、今年に入り最大の下げ幅を記録しました。


外国為替市場では円相場が一時1ドル=100円台に上昇しました。


テレビや新聞などは、新興国経済を巡る警戒感に加え、米国景気の

先行きに対する懸念も浮上し、投資家が運用リスクを回避する姿勢を

一段と強めたなどと報じていますが、これは間違いです。


誰も米国の経済を心配しているわけではなく、

日本の経済を心配し、それが株価に影響しているのです。


今年になってからアベノミクスが見直され始め、

明らかに「潮目」が変わったと、私はすでに何度も述べてきました。


昨年1年間、世界の株式市場で最も伸び率を記録したのが日本です。


しかし一方で、今年になってからの下落率もトップです。


これは過大な期待を寄せられていたアベノミクスに、

調整が入ったと見るべきだと私は思っています。


冷静に日本経済を見てみれば、

今の水準が妥当だと判断されているわけです。


業績回復を見せている日本企業ですが、赤字事業の撤退など

引き算で業績回復を図ったところが多かったのも特徴です。


新しいものを生み出し、足し算で業績を回復させた企業は

非常に少ないと言わざるを得ません。


アベノミクスの第三の矢である「成長戦略」などは

まるで実行されていません。


株価の下落などの兆候が現れると、

すぐに日本のマスコミは米国など「外」に原因を求めますが、

基本的にはほとんどの場合、的外れです。


原因は自分たち自身にあるのです。


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▼ 結局、NISAは形を変えた定期預金

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NISAの開始から個人が買い入れた人気銘柄では武田薬品工業が

トップになりました。


他の人気銘柄は、みずほフィナンシャルグループ、キヤノン、

トヨタ自動車など、武田と同様、配当利回りが比較的高い

大型株が並んでいるとのことです。


ブルーチップについて言えば、どこの国に目を向けても

同様の傾向が見られます。


将来的な見通しが良いというわけではありませんが、

とりあえず資金が潤沢にあり、

自社株買いと配当をしてくれそうな企業に人気が集まります。


本来、株価は将来に対する期待から購入するものですが、

このような判断になってしまうのも致し方ないかも知れません。


銀行の預金金利が低いので、定期預金よりも金利がいいから

NISAを使おうという判断です。


武田薬品の例で言えば、時価総額に対して3%ほどの配当

になるでしょう。


すなわち、これは「形を変えた定期預金」であり、

個人の資産運用の方法が「株」にシフトした

というものではないと私は見ています。


ゆえに、将来性ではなく、

現時点での配当が判断基準になってしまうのです。


ブルーチップという概念そのものが、銀行預金よりも安定する

「長期安定銘柄」に流れていく傾向があり、私に言わせれば、

NISAもその「つまらない」流れに乗ってしまったと思います。


米国では1兆円規模の自社株買いを行い、

5%~7%の配当を出す企業もあります。


このままだと、日本も同様に、

自社株買いと配当の国になってしまいます。


非常につまらない結果だと私は感じています。


そんな日本では、もし今、家を建てるつもりなら

世界で最も恵まれた条件が整っていると言えます。


住宅金融支援機構は4日、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の

2月の適用金利を発表しましたが、それによると主力の返済期間35年以下は、

取扱金融機関の最低金利が1.79%と前月比で0.01%下がり、

昨年4月以来10カ月ぶりに過去最低を更新したとのことです。


35年間の固定金利でこの利率というのは、

世界でも類を見ない数字です。


残念ながら、日本は空き家率が13%もあり、

今後は家を欲しがる人が少なくなるかもしれませんが、

この数字だけを見れば「家を建てたい人には天国」と言える条件です。


いずれ日本にハイパーインフレが起きると、

このような数字は維持できないでしょうから、

その意味でもチャンスかも知れません。


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