大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON503「任天堂・ソニー・ルネサスエレクトロニクス・日立製作所~成功のカギを発見する」

2014年2月7日



任天堂 健康テーマの新規事業展開を発表

ソニー アメリカでの特許出願代行を開始

ルネサスエレクトロニクス 液晶向け半導体から撤退

日立製作所 連結営業利益5100億円見通し


-------------------------------------------------------------

▼ 任天堂はコンソールに執着しすぎて、自らの首を絞めている

-------------------------------------------------------------


任天堂の岩田社長は30日、「健康」をテーマにした

新規事業を展開する方針を示しました。


健康領域に関して岩田社長は、これまでゲームを主力としてきた

任天堂の事業領域を「一歩広げて考える」と指摘。


2014年中に事業内容の詳細を示して2015年度中に

開始する予定とのことです。


就任後しばらくは良かったのですが、

最近の任天堂を見ていると、

私は岩田社長の舵取りに不安を感じます。


スマホには手を出さず、従来からのコンソール商品に

こだわり続けて、ついに任天堂は赤字に転落しました。


任天堂はずっと6000億円程度の売上で安定してきた会社ですが、

2008年~2010年頃にかけて圧倒的なピークを迎えました。


それをもたらしたのは、任天堂DSとWiiの大ヒットでした。


ところが、あっという間に主体は変わり、

今はもうそれぞれの後継機種が発売されています。


残念ながら、任天堂DSやWiiほどの大ヒットにはなっていません。


ここに任天堂の大きな課題があります。

すなわち、コンソール商品の寿命が短すぎるのです。




あれだけの大ヒット商品の寿命がわずか3年です。

これは任天堂がコンソールに執着し過ぎているからでしょう。


普通であれば、コンソール商品を出してヒットしたら、

そこで使えるソフトを次々と発売していくべきです。


そうすれば、コンソールの価値はますます高まり、

寿命も長くなるはずです。


新しいコンソール商品をすぐに発売してしまうのは、

自らの首を締めているようなものだと私は思います。


Xboxがソフトを充実させることで

順調な様子を見せているのですから、

任天堂もそれに倣うほうが良いと私は感じています。


この状況で、さらに健康をテーマにした新規事業と言われても、

何とも不安は拭えません。


今さら健康業界で爆発するとは思えません。


3期連続赤字の責任をとり、岩田社長は報酬を

5カ月間半減させると発表していましたが、そんなことよりも、

今示している方向性に私は大いに不安を感じてしまいます。


-------------------------------------------------------------

▼ 特許出願代行は、ソニーでなくとも、インドに多くの会社がある

-------------------------------------------------------------


ソニーはインドの特許業務受託大手イーバリューサーブなどと組み、

米国での特許出願業務を担う合弁会社を設立します。


人件費の安いインドで書類を作成。


自社以外の日本企業からも業務を受託し、

規模の利益で費用を下げるとのこと。


特許訴訟の頻発で米国での特許出願を増やす日本企業の需要を

開拓する見込みだそうですが、今さら何を言ってるんだ?

というのが私の正直な感想です。


すでに私は、今から約20年前のインドで、世界各地の特許について

必要な言語に翻訳し、特許出願などの業務を代行してくれる会社を

いくつか紹介されました。


その1つがイーバリューサーブです。


英語力の高さなどもあり、インドというのは、

この種の業務に昔から非常に強いのです。


確かに特許訴訟件数は増えているので需要は高まっていくと

思いますが、私ならソニーに依頼するまでもなく、

直接インドの会社を探してきて依頼してしまうでしょう。


そのソニーに工場売却を決定したのが、

経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスです。


ルネサスエレクトロニクスは液晶向け半導体から

完全撤退する方針を固めたとのことです。


スマホなどに搭載する中小型液晶用半導体の開発子会社を売却し、

自動車向けに経営資源を集中し再建を急ぐとのことですが、

果たして持ちこたえることができるのかどうか、

難しいところかも知れません。


-------------------------------------------------------------

▼ 日立の本当の意味での再建には、キーとなる事業が求められる

-------------------------------------------------------------


日立製作所は2014年3月期の連結決算で、営業利益が23年ぶりに

最高を更新する見通しを発表しました。


予想は5000億円でしたが、鉄道インフラや自動車関連事業などの

好調で5100億円(前期比21%増)に上振れする見込み。


リーマン・ショック後に進めてきた不採算事業売却や

グループ再編も実を結んだ形になりました。


日立の再建は、儲かっている会社があればそれを取り込む

という形で行われました。


日本で最大級の会社の1つですが、最近の決算をみると、

売上は伸びていないが利益は回復しているのがわかります。


つまり、成長産業をみつけて参入した結果、

大きな利益を上げたというものではなく、赤字事業を

どんどんリストラして、スリムになった結果だと言えるでしょう。


ゆえに、これから先、さらに売上を伸ばしながら

好業績を維持できるのか?と問われると、

なかなか難しいかも知れません。

キーとなる事業が必要です。


欧州でも受注するなど、日立は鉄道にも力を入れていますが、

毎年安定的に売上が上がる事業ではないので、

キーとなる事業という意味では、

さらに別の事業が求められると思います。



問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点