大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON488「ヤフー・日産自動車・花王~顧客ターゲットを考える」

2013年10月18日



 電子商取引大手 ネット通販株が急落

 日産自動車 「インフィニティ」を国内高級車ブランドに採用

 花王 カネボウ化粧品と研究・生産部門を統合


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 ▼ ヤフー孫会長が恐れているのは、楽天よりもアマゾン

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 8日の東京株式市場でヤフーや楽天など電子商取引大手の

 株価が急落しました。


 前日にヤフーがネット通販サイトの出店料を無料にすると

 発表したことを受け、価格競争が本格化し、事業の収益性が

 低下しかねないとの懸念が広がったものです。


 ヤフーは9日、同社の通販サイトへの出店希望数が1日で

 約2万6千件に上ったと発表しました。


 中小事業者や個人の申し込みが殺到しており、

 法人の出店ペースとしてはこれまでの数百倍規模とのことです。


 楽天によれば、法人に対する支援は大変でとても無料でできる

 ものではない、とのことです。


 現在は楽天の株価が急落していますが、ヤフーとしても

 この後が難しいところです。


 無料で集めておいて、ある程度時間が経過したら後から

 有料化を考えていると思いますが、大バッシングを受けるでしょう。


 あるいは、良い場所に出店するのは有料とするというのも、

 当然想定していると思います。


 ヤフーの孫会長としては、アマゾンを最も恐れているのでしょう。




 アマゾンはネット通販に新しい生態系を確立しています。


 出店料をとらないモデルも存在し、様々な切り口でビジネスが

 存在してます。


 世界最大の小売業を目指すアマゾン。


 今回のヤフーの出店料無料というのも、主にアマゾン対策が

 強いと思います。


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 ▼ 日産は国内マーケティングを今一度見直すべき

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 日産自動車は海外で展開してきた高級車ブランド

 「インフィニティ」を初めて国内向け車種に採用します。


 主力高級スポーツ車「スカイライン」の次期モデルを

 同ブランド車として今冬にも発売。


 現在、国内の高級車販売は好調が続いていますが

 需要を獲得しているのは主に欧州車。


 日産は国際的に知名度の高いインフィニティブランドを

 活用して独BMWなどに対抗していくとのことです。


 率直に言って、これは無理だと私は思います。


 トヨタが米国で成功したレクサスブランドを日本に持ち込むと

 言ったとき、私は同じように無理だと言いました。


 トヨタのレクセスは日本でも成功しているのでは?と感じる人も

 いるかもしれませんが、世界で48万台販売されているうち、

 たったの4万台に過ぎません。


 あれだけ日本国内の販売に力を入れておきながら、

 4万台では成功しているとは言えないでしょう。


 むしろ、トヨタがあれだけ力を入れれば、どんなブランドでも

 4万台くらいの数字には達すると思います。


 日産はインフィニティを国内で販売しなくても、

 スカイラインGTRがあります。


 スカイラインでポルシェやBMWと戦えるはずです。


 またスカイラインをなくして、インフィニティが成功するか?

 と考えると、スカイラインの購入者層を考えても厳しいでしょう。


 今、スカイラインを購入している人は、若い頃には買えなかった

 「あのスカイライン」を今なら買えるという中高齢の男性です。


 そこに青春を感じるのです。


 それがインフィニティになってしまったら、

 全く意味がありません。


 このターゲット層を逃してまで、インフィニティで

 カバーできるのか?私には疑問です。


 そもそもインフィニティは米国でもそれほど成功していません。


 日産はまともにマーケティングを考えているのか?

 と疑いたくなります。


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 ▼ 花王は、カネボウのマーケティング部門だけでも残したいはず

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 マーケティング的な観点を考慮した上で、

 全く別の決断を下したのが「花王」です。


 花王は8日、子会社のカネボウ化粧品と研究・生産部門を

 統合すると発表しました。


 カネボウの美白化粧品で肌がまだらに白くなる「白斑」被害が

 出た問題を受け、経営に深く踏み込む必要があると判断。


 本格参入から半世紀以上続く化粧品の名門「カネボウ」は

 事実上、花王に吸収されることになりました。


 本当はもっと別の道があったはずですが、

 これは致し方ないと思います。


 そもそも花王は化粧品の取り扱いがあったものの、

 石鹸、洗剤などのイメージが強い会社でした。


 そこで純粋な化粧品会社を求め、資生堂と伍する立場にあった

 カネボウを傘下に収めました。


 花王としては、カネボウのブランドは残したままにして

 おきたかったと思いますが、今回のような不祥事がおきて、

 致し方ない対応に迫られたということでしょう。


 生産、研究部門はもちろんのこと、品質保証や顧客対応も一体化し、

 さらには総務・人事も取り込むということです。


 ただし、現時点でもマーケティング部門だけは、いまだ花王に

 取り込む決定はされていません。


 かつては資生堂とも戦ってきたマーケティング部門ですし、

 花王のそれよりも一歩先んじているのは間違いありませんから、

 何とか残しておきたいという意向が強いのでしょう。


 カネボウの立場からすれば、取り返しの付かない痛恨のミスを

 犯したと言えます。


 まさに自滅ですが、この悔しさは一生拭うことはできないでしょう。



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