大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON485「集団的自衛権・尖閣諸島・韓国済州島~安倍政権の集団的自衛権の方針を紐解く」

2013年9月27日


 集団的自衛権 行使地域をめぐり政府内にズレ

 尖閣諸島問題 日本政府の姿勢を批判

 韓国済州島 韓国人が懸念、済州島が中国人に乗っ取られる


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 ▼ 集団的自衛権については、3つの質問に回答すれば解決する

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 19日、自民党の安全保障合同部会が開かれました。


 政府が集団的自衛権の行使を認める場合、

 「自衛隊は地球の裏側に行って戦争をするのか」と問われた

 高見沢官房副長官補は、

 「『絶対、地球の裏側に行きません』という性格のものではない」

 との見解を示しました。


 集団的自衛権については、シンプルに次の3つの質問に答えることで、

 安倍政権の方針が分かるようになります。


 1つ目は、「中近東について米国に従うのかどうか」です。

 

 中近東は米国が紛争に巻き込まれやすい地域です。

 今回ニュースで取り上げられた「地球の裏側」はイラクやシリアの

 ことで、まさにこのケースに当てはまります。


 2つ目は、「中国に対して米国に従うのかどうか」です。


 もし中国が武力行使をしてきた場合には、沖縄の米軍が狙われます。

 その際、日本の領海に侵入してくる前に、米軍に同調して中国に

 先制攻撃をするかどうかということです。


 3つ目は、「オーストラリア・米国に従い、インドネシアへの攻撃を

 許可するのかどうか」です。


 日本はオーストラリア・インドネシアのいずれとも良好な関係性を

 維持しています。


 ところが、(現在はそれほどではありませんが)オーストラリアと

 インドネシアは伝統的に仲がよくありません。


 米国はオーストラリアと軍事同盟を締結しています。

 万一争いが起きた場合、日本は米国に従い、オーストラリアに

 与するのかどうかということです。


 日本とインドネシアの関係を考えると、おそらく答えは

 「ノー」でしょう。


 世間でも複雑に論じられることが多いですが、

 集団的自衛権については、この3つの質問に

 「イエス」「ノー」で回答すれば解決するはずです。


 ところが実際には、米国に依頼されるまでは何とも言えない、

 というのが日本政府の態度です。


 ドイツのように、「イラクはノーだが、アフガニスタンはイエス」と、

 自分たち自身で答えを出せれば良いのですが、残念ながら今の日本は、

 米国との関係性がこじれるのを恐れてしまい、

 自分たちで判断する力がありません。


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 ▼ 密約をベースにした国と国の約束をやめるべき

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 中国の王毅外相は20日、尖閣諸島について、

 「日本が41年前の日中合意を否定して国有化したため、

 中国としても対抗措置をとらなければならない」と述べ、

 日本政府の姿勢を批判しました。


 王毅外相は口が滑ってしまったのでしょう。


 41年前の周恩来氏と田中角栄氏による日中合意というのは、

 いわゆる2者間で交わされた「密約」です。


 正式な文書にもなっていないでしょう。


 それを反故にしたと言われても、安倍総理としては

 「どこにそんな文書があるのか?」と言うだけです。


 当時の田中派以外は「そんなものは知らない」で済ませることが

 可能だからです。


 こうした背景も理解した上で、私が今提案したいのは、

 密約ベースのものを国と国の約束にするのではなく、

 もう1度やり直すことです。


 周恩来氏と田中角栄氏はそれぞれ非常に優秀な政治家ですが、

 ボスの政治家同士で決めたことは、ボスが変わると

 上手く機能しなくなってしまう、ということでしょう。


 中国国営新華社通信の情報サイトは、21日、中国の無人偵察機の

 開発スピードは世界最速、日本を無限に混乱させることも可能と

 報じました。


 これに対し日本側も撃ち落とす研究を早速開始したとのことです。


 無人偵察機とは言え、攻撃力を有していますから

 当然の対応でしょう。


 これにより、今後、日中間では偶発事故が起こる可能性は

 非常に高くなってしまいました。


 これは米国が懸念していることの1つです。


 また中国の元大連市長の薄熙来氏に対して、公金横領や

 職権乱用などの罪で無期懲役の判決がくだりました。


 一方ニューヨーク・タイムズ紙で、莫大な隠し財産を報じられた

 温家宝首相についてはお咎めなしということで、この中国の

 対応については世界から批難の声が上がってくると思います。


 中国は政治優先の社会であり、司法と行政・立法が

 独立してはいません。


 昔から中国の権力闘争というのは、大抵がこのようなパターンです。


 今後、世界の批判を受けながら、中国はますます信頼を

 失うことになると思います。


 そんな中、中国国営新華社通信は、

 「韓国人が懸念、『済州島が中国人に乗っ取られる!』」

 と題する記事を掲載しました。


 韓国の済州島では中国資本が大規模な不動産開発を行っています。


 韓国政府に対し、中国人の投資移民の受け入れを再考するよう

 求める声もあがってきているとのことです。


 しかし、これは韓国が済州島を豊かにするために、約50万ドルの

 お金を持ち込めば永住権を与えるなどの政策を打ち出しているので、

 致し方ないことだと私は思います。


 これまでは済州島に訪れる観光客のトップは日本人でしたが、

 今は完全に中国人です。


 中国人がお金を落としてくれているわけですから、

 これを否定するのはおかしな話です。


 もし、韓国政府がそれを望まないのなら、済州島に対する

 優遇政策をやめれば良いだけだと私は思います。

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