大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON484「東芝・サントリー・マクドナルド・セブン-イレブン・アマゾン~プラットフォーム戦略を考える」

2013年9月20日


 東芝 印ヴィジャイの変圧器事業を買収

 サントリー食品 英グラクソと飲料事業買収で合意

 日本マクドナルドHD 立地特性に応じて価格を9段階に設定

 セブン-イレブン・ジャパン 2014年度に1600店を出店へ

 アマゾンジャパン 新設物流センターを稼働


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 ▼ 立地で価格を変えるマクドナルドの経営姿勢に問題あり

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 東芝は10日、インドの重電メーカー、ヴィジャイエレクトリカルの

 変圧器事業などを買収すると発表しました。


 買収額は200億円で、ヴィジャイの変電所向け変圧器の工場や

 販売網を活用し、経済成長が続くインドの送配電機器事業に

 本格参入するとのことです。


 日立や東芝などは、大胆に鉄道を始めとした欧州のインフラ投資に

 乗り出しています。


 経営力が伴っていけば、これらの海外投資はかなり良い成績を

 上げてくれると期待できます。


 またサントリー食品インターナショナルは9日、飲料事業の

 買収交渉をしていた英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)

 と基本合意しています。買収金額は2000億円超とのことです。


 サントリーとしては上場によって得た資金の使い途として

 考えたのでしょう。


 悪くはありませんが、この程度の会社しかなかったのかとも思います。


 一方日本国内では、これまで圧倒的な成績を上げてきた

 マクドナルドが動きを見せています。


 日本マクドナルドホールディングスは13日から価格を立地の特性に

 応じて9段階に分けると発表しました。


 従来は都道府県別の6段階でしたが、同じ自治体内でも観光名所や

 空港など需要が旺盛な場所を最も高くします。


 全国一律を基本としてきた日本の外食産業の価格戦略に影響すると

 見られています。


 私は最近のマクドナルドの戦略について、牛丼チェーン店や

 コンビニエンスストアなど惣菜市場を考慮していない点に

 問題があると指摘してきました。


 しかし、今回の方針はこれまでの何にも増して

 「お粗末な決定」だと思います。


 このようなことを平気で実行するということは、今マクドナルドは

 「お客さんに向いていない」ということです。


 そんな不道徳な経営は許しがたいと思います。


 海外では実施されているということを言い訳にして、客の弱みに

 付け込むような方針には、正直言って辟易してしまいます。


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 ▼ アマゾン一人勝ち。勝因はプラットフォーム戦略にあり

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 セブン-イレブン・ジャパンは2014年度、過去最高となる

 1600店のコンビニエンスストアを開く見通しです。


 大都市圏を中心に店舗網を広げ、日常の買い物に不便を感じている

 シニア層や働く女性の需要を取り込む狙いとのことです。


 10年ほど前までは、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート

 の出店数は6,000から9,000の範囲で拮抗していましたが、

 ここに来て完全に出店スピードに差がついて、セブン-イレブンの

 一人勝ちの様相を呈してきました。


 昨年四国に初めてのセブン-イレブンが出店したというのですから、

 まだまだ出店できる場所はあると言えると思います。


 一方で、人口密集地ではすでに過当競争になっていますから、

 既存店舗の整理も必要になるでしょう。


 いずれにせよ、過去最高の出店数を目指すというのは、

 かなりリスクの高い戦略です。


 おそらく半径300メートルという近距離でカバーすることになるので、

 コンビニを超えてコンシェルジュ機能を備えるなど、

 従来のコンセプトを変えることが必要だと思います。


 さらに順調に日本国内で一人勝ち状態になっているのが、

 アマゾンジャパンです。


 アマゾンジャパンは神奈川県小田原市に物流センターを新設し、

 3日、稼働を始めました。


 同社の物流拠点としては国内最大で、約1千人の雇用を創出します。


 また、出版業界の9団体は9月中に、海外から電子書籍を配信する

 事業者へ公平に消費税を課す要望書を政府の税制調査会に

 提出するとのこと。


 海外にサーバーを置く企業が配信する電子書籍には消費税が

 課税されないことを問題視したものです。


 アマゾンが脅威になるというのは、以前から分かりきっていたこと

 ですが、東日販の存在があるので大丈夫だと高をくくっていたので、

 このような事態になってしまったのです。


 私は十数年前から「アマゾンは利益を出す企業になる」と

 指摘していました。


 その理由は明白で、次の3つを備えたプラットフォーム戦略に

 則っていたからです。


 すなわち、「ポータル機能」「帳合(決済)機能」

 「配送(物流)機能」の3つです。


 ポータルサイトを保有し、その場でクレジットカードを使って

 決済が可能で、その後の配送も請け負えるというのは

 「プラットフォーム」として大きな強みになります。


 日本では東日販が価格統制をして値引きができませんが、

 その分、物流機能の充実に努めて、今では午前中に注文したら

 午後には配送される仕組みを作り上げてしまいました。


 米国にも巨大な配送センターをいくつも保有していますが、

 日本でも巨大なものを小田原に新設するということです。


 物流が強くなることで、アマゾンは当初の書籍だけではなく、

 アパレルから食品までありとあらゆる商品を扱えるように

 なりました。


 靴や洋服などは、「試着して返品も自由にできる」という

 仕組みまで作っています。まさに、物流機能の勝利です。


 日本の出版社や電子書籍関連企業にも期待していましたが、

 結局のところ全てアマゾンに持っていかれるという

 状況になっています。


 アマゾンのプラットフォーム戦略に、

 その勝因があると私は思います。

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