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ポールソン米財務長官 「円相場を非常に注視」
米上院議員 為替操作国を提訴する新法案提出へ
G7財務相も、円安牽制の構え
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●米自動車メーカー不振の原因は、円安・人民元安ではない
31日、ポールソン米財務長官は、米自動車メーカーが
最近の円安傾向に不満を強めている点について「円相場を
非常に注意して見ている」と強調。
また、米上院のスタベノウ議員とグラム議員は、
対ドルで過小評価されている円や人民元を念頭に為替操作国を
世界貿易機関(WTO)に提訴することを狙った新法案を
提出する考えを明らかにしました。
このような動きは日本としていいことはないのですが、
現状からすると円からドルへ流れる
円キャリーは、円ベースで利回りが上昇しない限り、
今後も継続していくだろうと私は思います。
ただ、今回アメリカが、米国自動車メーカーの苦戦の原因と
して「日本円安と人民元安」を指摘している点については、
こちらも事実としては正しくないと私は思います。
ドルの対円相場の推移を見てみると、ドルは05年から07年で
見ると下落の推移が見られます。
しかし、00年からの大きな流れで見ると、円安もあれば
円高もあり、全体としてはほぼフラットと言えます。
だから、米自動車メーカーの不振の理由を円安に求めると
いうのはおかしいと思うのです。
さらに言えば、円高になっているときに米自動車メーカーの
業績が回復したのか?という点を考えれば、
この指摘のロジックが破綻しているのは明らかでしょう。
また、人民元についても、2%の切り上げ実施(05年7月)からの
推移を見てみると、1年半で4.5%上昇し、今では、
1ドル7.8元を超えて香港ドルよりも高い値を記録しました。
※「中国為替相場の推移」チャートを見る
管理フロート制の下とは言え、中国において、このような
値がついたのは、画期的なことだと思います。
このような事実から人民元についても「元安」を指摘するのは
おかしいと思います。
かつての日本円の円高ほどの水準ではありませんが、
それでも1ドル7元台といえば、「元は高くなった」とさえ
感じます。
一方、ヨーロッパ側も13カ国の財務省会合で「円安を懸念して
おり、G7でも円安をけん制する」と発表しています。
ユーロの対円相場の推移を見て分かるように、
ユーロに対しては1本調子で100円前後から157円まで円安が
進んでいますから、ヨーロッパが円安を許容できないのは
理解できます。
※「ドル、ユーロの対円相場の推移」チャートを見る
おそらく、今後、ヨーロッパと日本が競うような業界
(例えば自動車業界など)では、関税率を上げるなどの対応を
取ってくるのではないでしょうか。
●円安はどこまで進むのか?世界経済の最大の不安定要因は日銀!?
現在の金利水準がこのまま続くと、2002年1月当時の
135円付近まで円安が進むのではないか?という懸念も
ありますが、日本経済の基盤が大きく崩れでもしない限り、
私はそこまで円安が進むことはないと思います。
と言うのも、世界中で円安に対するバッシングが
強まるにつれ、日銀も利上げ判断を早めざるを得なくなると
考えられるからです。
ただ、米欧との金利差が縮まり、円ベースで一定の利回りが
期待でき、更には為替差益も望めるようになったとき、
相場は一気に110円前後までゆり戻しを受ける
可能性があります。
一方で、今回のポールソン米財務長官による指摘以上に、
世界から"ガツン"と厳しく咎められない限り、
日本政府が自ら円安対策に動き出すことはないだろうと
思います。
それは、財界・政界のどちらを見ても、円安を助長する
傾向が見えるからです。
経済界の重鎮であるトヨタ系の奥田氏や張氏、
あるいはキヤノンの御手洗氏にしても、みんな
「円安大歓迎」という人たちばかりです。
自動車業界をはじめ、約20年にわたって円高に悩まされた
人たちですから、「円安=夢心地」となるのも仕方ないかも
しれません。
しかも、現在の状況は、主要通貨に対する円の価値を示す
実質実効レート(1973年3月=100)が1月時点で97.7と、
85年9月のプラザ合意前以来、21年ぶりに
100を割り込んでいます。
※「円・ドル相場と実質実効為替レートの推移」チャートを見る
これは即ち、現在の1ドル120円前後という水準は、
実質実行レートで見るとプラザ合意前の水準と同じという
状況で、輸出という面で考えると、かなり恵まれた貿易環境と
言えるでしょう。
逆に言えば、円の購買力が低下しており、輸入物価の上昇に
よるインフレ圧力が高くなっていると見ることも出来ます。
また、政治面から見ても、参院選をにらんで、銀行や
一部の業界のために利上げを阻止しようと言う圧力が
日銀にかかっています。
つまり、経済オンチの政治家が、参院選対策のために、
政治圧力によって日銀の金融政策を左右しているという構図に
なっており、世界経済の最大の不安定要因は日銀である
という人さえいます。
中央銀行がこのように中立性を欠くような状況では
世界からの批判は免れません。
以上