大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON473「中国株式・影の銀行・中国経済・コマツ~過去の事例と照らし合わせて考える」

2013年7月5日


 中国株式 上海総合指数が急落

 影の銀行 「理財商品」残高 約130兆円

 中国経済 経済成長鈍化を容認

 コマツ 株価が一時5%安


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 ▼ 住専、サブプライムと同じ問題が中国でも起こっている

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 中国の代表的な株価指数である上海総合指数が24日に急落しました。


 前週末比5.3%安となり、心理的な節目である2000を約半年ぶりに

 割り込みました。


 そんな中、米ヘッジファンド、

 グランドマスター・キャピタル・マネジメントのパトリック・ウルフ氏は、

 中国の腐敗や不良債権の増加が危険な状態に達しており、

 今後株価が急落する可能性があるとの見方を示しています。


 今週は少し落ち着きを見せましたが、

 上海銀行間の金利は乱高下を続けていて、13%まで金利が

 上昇する局面もありました。


 上海総合指数は下降傾向が続いており、今中国は非常に

 手が出しづらい状況です。


 中国経済の大きな問題の1つは「シャドーバンキング」です。


 かつての日本の「住専問題」や米国の「サブプライムローン問題」

 と同じように裏金融が膨れていくという問題です。


 先月29日には中国の銀行業監督管理委員会の尚主席が、

 高利回りの資産運用商品である理財商品の2013年3月末の残高が

 8兆2000億元(約130兆円)に達したと明らかにしています。


 理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める

 中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在であり、

 理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の

 不動産・インフラ投資に流れています。


 地方政府の悪党役人が、自分のプロジェクトのために

 シャドーバンキングから資金を借りまくっているのですが、

 当然支払い能力がありません。


 中国経済のバブルが崩壊したとき、この問題が表面化してくるでしょう。


 日本が住専につけかえたように、中国もほとんど似たような状況に

 なるのではないかと思います。


 約130兆円という規模は中国のGDPの16%程度です。


 当時の日本よりはやや軽くなりますが、それでも中国経済に

 打撃を与えるに違いありません。


 多くのアナリストが、この問題を中国の「住専」、

 中国の「サブプライムローン」と判断し、警戒を始めています。


 中国の場合、中央政府が強引に問題解決に乗り出して資金を

 提供してしまえば、ある程度は対処できるかも知れません。


 しかしその場合には、これまで悪事を働いてきた人も

 救済することになってしまうので、舵取りが難しいところでしょう。


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 ▼ 中国経済は爆発寸前か?コマツへの影響は?

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 中国の習近平指導部が経済成長の鈍化を容認する路線に傾いています。

 

 前指導部時代が残した課題を一掃する政治的な思惑も働き、

 安易な景気刺激策には動かない構えです。


 そんな中、産経新聞のメディアが

 「中国経済、7月恐慌!6大時限爆弾が破裂寸前」と題する記事を

 掲載しました。


 輸出の鈍化、消費低迷などに加え、地方政府の巨額債務や

 「影の銀行(シャドー・バンキング)」など六重苦が連鎖しており、

 いったん火が噴けば、危機が連鎖する「複合恐慌」となりかねないと

 指摘しています。


 今、巷にはこの手の情報が溢れています。


 これを反転させるのは、習近平政府にとっても至難の業だと思います。


 ロバート・フェルドマンをして、バブル崩壊直前の日本経済は

 「逆立ち」しなければ良い面は見えてこないと言われましたが、

 まさに今の中国経済に関する報道も似たような状況になっています。


 中国経済のバブル崩壊という地雷は、まさにこの7月にも

 爆発するのではないかと言われています。


 中国経済に暗雲が漂い始め、日本企業にもその影響が見え始めてきました。


 25日の東京株式市場でコマツ株が一時、前日比120円(5%)安と

 急落しました。


 中国市場での短期金利上昇などを受け、現地ユーザーの資金調達が

 難しくなるとの懸念が台頭したためで、市場の関心は中国金融市場の

 動揺が建設機械市場にどう波及するかに向かい始めた模様です。


 コマツは中国でも上手に事業展開をして、かなり好調でした。


 しかしここに来て、やや中国での状況に変化が現れてきました。


 「日本(コマツ)が輸出するショベルカーなどに搭載されている

 GPS機能で、中国の個人情報を盗んでいる」などと報じられる

 事態も発生しています。


 ただ実際のところ、コマツの株価が下落したのは、

 中国経済がパワーダウンし、ブルドーザーやショベルカーなどの

 高額商品を購入できる企業が少なくなったからだと私は思います。


 中国の問題が大きく騒がれていますが、コマツの売上に占める

 中国の割合はそれほど大きくありません。


 中国よりも、アジア全体のほうが大きいですし、中南米、北米、

 オセアニアでも強さを見せています。


 全体的に非常にバランスが良い状態なのです。


 中国での問題によってコマツは久しぶりに問題を抱えていますが、

 それでもコマツの経営は安定しており大勢には影響はないと見て

 良いと思います。

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