大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON469「日本の成長戦略とPFI事業~定量的な目標に基づいて施策を考える」

2013年6月7日


 成長戦略

 2017年度までに成長戦略の工程まとめ

 PFI

 運営権売却の概要発表


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 ▼ 成長戦略の意味を理解していない人が、絵空事を述べているだけ

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 政府は28日、2017年度末までの向こう5年間を緊急構造改革期間とする

 成長戦略の工程表をまとめました。


 国が運営するハローワークの求人情報を14年度からオンライン上で民間企業に

 開放することや、高度な技能を持つ外国人は3年で永住資格を取れるように

 することが盛り込まれており、金融緩和と財政出動に続く第3の矢で

 日本経済を息の長い回復軌道に乗せる考えです。


 金融対策、財政出動に続いて、成長戦略はいわゆるアベノミクスの

 3本目の矢です。


 とは言うものの、その中身を見てみると、ほとんどインパクトが

 ないものばかりです。


 私に言わせれば、全く「国家の成長」をわかっていない人が作った

 としか思えません。


 例えば、「リースを使った投資支援」では自己資金による

 投資のリスクを減らすためにリースの活用を認めるものですが、

 値下がりリスクの一部を国が負担します。


 企業の無謀な投資に対してなぜ国民の税金を使うのでしょうか?


 「社外取締役の導入を原則化」をしても成長戦略に関係ないのは、

 ソニーの事例を見れば明らかです。


 「ハローワークの求人情報を民間開放」しても

 「子どもが3歳になるまでの育児休業」を認めても、

 やはり国家の成長戦略には寄与しないでしょう。


 子どもを生んだお母さんが3年間子育てに専念できるのは、

 社会政策としては正しいかもしれません。


 しかし、「成長戦略」ではないのです。


 「全ての一般薬品のネット販売」を認めても、国民が病気になって

 3倍薬を購入する量が増えるわけではありません。


 購入する場所が変わるだけです。


 そして「国家戦略特区の選定」などとありますが、基本的に

 「特区」というものは役人がやりたくない施策です。


 政治家に言われて渋々やらざるを得ないから、

 「特区」を設けるのであって、そうでなければ全国で展開すれば

 いいのです。


 これまでに「特区」で始まって全国に広がった施策など

 私は記憶にありません。


 小泉首相のときに限定的に導入された「株式会社立大学」も

 全く広がっていません。


 私たちのBBT大学など、片手の指で数えられるくらいしかありません。

 

 極めつけは、「対内直接投資」を35兆円にするということですが、

 果たしてどうやって実現するつもりでしょうか?


 去年は実質マイナスだったのに、全くその青写真は見えてきません。


 国家の成長指標はGDPです。


 すなわち、企業が生み出す付加価値の総計ですから、

 右から左に数字を動かしただけで、成長戦略などと言っても

 全く無意味です。


 絵空事ばかり並べ立てていないで、もう少し基本的な部分から

 理解して出直してほしいと思います。


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 ▼ 関空は2兆円をライトオフして、ゼロベースで始めるべき

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 国が100%出資する新関西国際空港会社が検討している

 運営権売却(コンセッション)の概要が28日明らかになりました。


 国内外の民間企業や投資ファンドを対象に年内に募集を始め、

 年明けにも1次入札を実施し、運営期間は

 40~45年程度とする方向で検討。


 調達額は6000億~8000億円程度とみられており、

 民間資金を活用したインフラ整備(PFI)の事業規模を今後10年間で

 現在の2.5倍の12兆円に拡大する方針も固めました。


 これも「PFI」の何たるかを理解しているのか

 疑問を持たざるをえません。


 日本のPFIというのは、オーストラリアのPPPのように

 完全に民間に委託するものではありません。


 予算の関係でお金は調達したいけど、

 コントロールから外したくないときに役人が使っている手立てです。


 日本の場合、実質的に役人のコントロールする範囲内でしか

 企業は動けません。


 運営権売却先として、オーストラリアの投資銀行マッコーリー銀行の

 名前が挙がっているそうですが、マッコーリー銀行が受けてくれるのか?

 私には疑問です。


 かつて羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングに、

 マッコーリー銀行が投資したいと手を挙げたとき、

 日本の国交省はNGを出しました。


 日本の国家機密とも言える空港の運営権を海外の企業に

 譲るわけにはいかない、という理由でした。


 英国、オーストラリアなどで最も実績を上げている企業に対して、

 よくぞ言ったものだと思っていましたが、今度は手のひらを返して

 関空の運営権売却先に考えているようです。


 余りにも虫が良すぎる話だと私は思います。


 関空の場合、国が2兆円をライトオフして、もう1度ゼロベースで話を

 進めるなら引き受けてくれる企業が出てくるかも知れません。


 マッコーリー銀行への応対といい、世界の事例を知らなすぎるとしか

 言えません。


 そのような人が、「●●競争力会議」などで発言しているのですから、

 もう少しまともになってもらいたいと思います。

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