大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON465「憲法改正への有権者意識と国会のあり方~憲法改正議論のポイントを考える」

2013年5月10日


 憲法改正

 現行憲法

 「改正すべき」56%

 「現在のままで良い」28%


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 ▼ 第9条の改正には、日本の冷静な判断能力が問われる

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 日本経済新聞社とテレビ東京は共同で世論調査を実施し、

 夏の参院選の争点に浮上している憲法改正への有権者の

 意識を探りました。


 現行憲法を「改正すべきだ」との回答は56%に上り、

 「現在のままでよい」の28%を上回りました。


 現状維持が3割を下回ったのは2005年の調査以来

 8年ぶりとのことです。


 マスコミは否定的でしたが、以前から私は憲法改正が

 参議院選挙の争点になると述べていました。


 現在の世論では、

 「第96条だけ変えるのか?それとも他も変えるのか?」

 という「改正」が前提になっています。


 憲法改正論がマスコミの間で広がってきた結果、いつの間にか

 憲法を改正すべきとの回答者が56%に達したとのことですが、

 私としては「簡単に決めすぎていないか?」とも感じます。


 逆に現行憲法のままで良いと回答した人が28%とのことですが、

 一度憲法を読んでみて欲しいと思います。


 私に言わせれば、日本語のレベルとしても

 疑いたくなる文章であり、内容も然りです。


 どの点が現行のままで良いのか議論して欲しいところです。


 憲法第9条の改正となると、日本に集団的自衛権が必要なのか?

 という点が議論も発生してきます。


 もともと自民党は自由に憲法を解釈することで、

 憲法改正をしなくてもいわゆる防衛力を整備してきました。


 今回、安倍首相はこれまでのなし崩し的な形ではなく、

 憲法によって明確な立場を取りたいということだと思います。


 ドイツは多大な犠牲を払ってアフガニスタンに派兵しましたが、

 国際社会の一員として日本も同じくらいのことはするべきだと

 考えているでしょう。


 当然これまでのように、武器が制限され、後方支援のみ、

 ではなく他の国の軍隊と同様の任務を遂行するものとして

 派遣できることが前提だと思います。


 集団的自衛権の行使が憲法で定められたならば、

 今以上に日本には冷静な判断能力が求められると思います。


 例えば、サダム・フセインを追い詰めた米大統領の

 間違ったキャンペーンに乗っかるべきではありません。


 あくまでも人類の大義のために集団的自衛権を行使することが

 重要であり、米国にしっぽを振るものではありません。

 

 安倍首相が想定している集団的自衛権が間違っていないことを

 願っています。


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 ▼ 憲法改正において議論すべきテーマは?

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 先ほども見たように今回の世論調査では、

 「憲法改正すべき」が56%で、「現在のままで良い」の28%の

 2倍になっています。


 具体的な改正のポイントはどこかと言うと、まず二院制など

 国会のあり方です。


 橋下氏は一院制を推していますが、私も新大前研一リポートで

 発表して以来、元祖一院制論者です。


 私の場合には、一院制+道州制であり、加えて国民投票です。


 衆議院で結論を出す一方、重要事項については国民が

 直接承認する方法が良いと考えています。


 憲法改正の要件を緩和すべき、すなわち第96条の改正も

 ポイントになっています。


 おそらく参議院選挙で自民党が憲法改正を争点にすれば、

 第96条が前面に出てくることになると思います。


 第9条の改正を争点にしてしまうと、収集がつかなくなる

 可能性が非常に高いので、そこは避けてくるでしょう。


 第96条の議論であれば、みんなの党、維新の会も足並みを

 揃えていけるので好都合です。


 参議院選挙の争点にするには間に合わないと思いますが、

 安倍政権には次の3つの課題も残されています。


 すなわち、前回の安倍政権で定めた国民投票法案に定められた

 附則事項です。


 「18歳選挙権実現の法整備」では、

 18歳以上に国民投票の投票権を与えたものの、

 公職選挙法の選挙権や民法との整合性をどうするのか?


 「公務員の政治的行為」では、政治的行為に制限を受けている

 公務員について、国家公務員、地方公務員の規定にどのような

 変更を加えるのか?


 「国民投票の対象拡大」では、国民投票を憲法改正以外にも

 適用出来るのか?


 上記の点は具体的に議論を進めていく必要があると思います。


 例えば、国民投票の対象拡大が首相の選任に適用された場合、

 今の日本国民の政治に対する関心の低さを考えると、マスコミの

 人気投票になってしまうリスクを考える必要があるでしょう。


 今の日本だと著名人・芸能人が首相に選ばれる可能性も

 大いにあります。


 実際、過去数十年の首相に選びたい人のランキングを見ると、

 田中真紀子氏や石原慎太郎氏が上位にいます。


 憲法改正にあたっては、こうした諸々の問題も具体的に

 議論していく必要があります。

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