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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON429「脱原発問題と事故調査~本質を見抜く分析方法を考える」

2012年8月31日

 脱原発問題

 核燃料サイクル堅持を要望、青森県・三村知事

 討論通じて原発ゼロ支持者が増加


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 ▼ 核燃料サイクル堅持を要望、青森県

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 青森県の三村知事が、核燃料サイクル堅持を要望しています。国民の7割が

 脱原発を支持する中、民主党の政策議論を見ると、今国会で、

 古川国家戦略担当大臣も枝野経済産業大臣も脱原発を決めてしまいたい、

 と思っているようです。


 それはとんでもないことです。

 数ヶ月で政権が変わるかもしれないタイミングで、今後何十年も続く

 エネルギー政策の方向性を決めてしまうのは止めて欲しいです。


 脱原発をし、原発をゼロにすると三十年後には再処理する必要がなくなり、

 核燃料サイクルが不要になります。


 そうなると、再処理をするより埋めてしまえとなるわけです。

 結果、青森県が最終埋め立て地になってしまうと思います。


 これまで、青森県は再処理施設を受け入れるという

 厳しい選択をしてきました。


 ただし、中間貯蔵はいいけれども、永久貯蔵となると話が変わってきます。

 永久貯蔵であれば、全てを断ると表明しています。


 従来から推進してきた核燃料サイクルを横に置いて、

 原発と再生可能エネルギーの比率の議論だけをどんどん進めているのは、

 青森県民としては煮え湯を飲まされた感じがあるでしょう。


 しかし、三村知事には気の毒ではありますが、国民はそのあたりの事情を

 全く知らなかったというのが、現在の状況になります。

 

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 ▼ 事故調査は、まず物理的な原因の特定から

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 今回の福島第一原発の事故調査委員会(事故調)は基本的に

 不十分だと思います。

 

 素人が10人20人寄せ集まり議論をしても、的外れな結果になりがちです。

 一人で行う方がまだ良いと思います。

 

 そもそも、事故というのは物理的な原因で起こります。

 なので最初に物理的な分析をする必要があります。

 

 その上で、物理的な原因が分かったら「こうすれば防げる」と解決策を

 考えなければいけません。

 

 例えば、飛行機の事故があれば、そこには物理的な原因があるはずです。

 

 それを、前日にパイロットが飲酒し睡眠が十分じゃなかったためと、

 そんな議論になってしまっています。

 

 私の事故調査が唯一、物理的に原因を究明し、明確に対策を提示しています。

 

 この報告書は、大飯原発再稼働の判断時にも使われていますし、

 細野原発担当大臣と橋下大阪市長とのディスカッションの

 ベースにもなっています。

 

 もちろん、仮に組織と人が優れていた場合に福島の事故は防げたかというと、

 それは難しかったと思います。

 

 GEが行った設計上、福島第一で全電源喪失が起こってしまうと、

 あの事故になってしまう。

 

 あそこに天才がいても爆発を遅らせることは出来たかもしれないですが、

 避ける方法は無かったと思います。


 組織や人の問題ではなく、設計の問題でした。

 だから、私は再発防止が出来ると思っています。


 今回の事故では福島第一原発のような状況にならなかった発電所もあります。

 まずは物理的な状況をみて、原因を想定すべきです。


 しかし黒川事故調では、1300人とインタビューし、シューという音がしたため

 地震の後に配管破断が起こった可能性が否定できないと結論づけています。


 当時、アイソレーションチャンバーが動いていましたので、

 シューという音はします。


 それを配管破断と決めつけているのが、黒川事故調の

 詰めの甘いところだと思います。


 まずは、福島第一原発だけではなく、第二、東通り、女川、東海第二の

 全部を含めて一分ごとにどうなっているかを把握する、そういった労を

 いとわずにやり、物理的な原因を究明して欲しいです。



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