大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON427 「米大統領選と財政問題~問題解決の実践方法を考える」

2012年8月17日

 米大統領選 米共和党副大統領候補にポール・ライアン氏

 米学生ローン問題 米経済の将来をむしばむ学生ローン問題

 米住宅公社 6月末時点で資産超過 ファニーメイ、フレディマック


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 ▼ ライアン氏の言が正しいなら、すぐに実践するべき

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 11月の米大統領選で共和党の大統領候補に内定している

 ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は11日、選挙戦でコンビを組む

 副大統領候補に、ポール・ライアン下院議員を選ぶと発表しました。


 ライアン氏について「行動力と洞察力を備えた聡明なリーダー」と説明。


 一方、ライアン氏は

 「経済の回復は、この70年で最も悪い。どんな言い訳をしようが失敗だ」と

 オバマ大統領を批判しています。


 ライアン氏は下院の予算委員長を務め、経済に明るく、

 スモールガバメントを標榜する「レーガンの再来」と評判の人物ですが、

 私がいくつか彼の学説を読んだ感想で言えば、非常に説明が分かりにくいと

 感じました。


 財政再建論者として幾つもの持論を展開していて、自分の言うとおりに

 すれば国家財政は黒字にできると主張しています。


 確かに、その「結論」を聞くと「すごいな」と思うのですが、

 それを実現するために「各論」として何をすれば良いのか?となると、

 途端にぼやけてしまう印象です。


 ライアン氏が本物かどうか、まだ現時点では判断できないと

 私は思っています。


 

  オバマ大統領を批判する気持ちも分かりますが、

 ライアン氏にしても予算委員長なのですから「結果を出す」という

 具体的な形を示すべきとも感じます。


 オバマノミクスはたくさんの資金を費やしましたが、

 結局、財政は悪化しました。


 米国にはまだまだ将来の借金が多く、予算、国債など

 数々の問題を抱えています。


 本当にライアン氏の持論が正しいのなら、米国民のためにも一刻も早く

 「実践」して証明して欲しいと思います。


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 ▼ リーマンショックからの復調の兆し、一方で学生には不安が残る

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 米政府の支援を受けて再建中の住宅公社2社は8日までに発表した

 4~6月期決算で、6月末時点で両社とも資産超過であると発表しました。


 債務超過を回避したのは米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)が

 2四半期連続、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が

 5四半期ぶりです。


 これに伴い、両社とも米財務省への追加支援の申請を見送っています。


 ファニーメイ、フレディマックの2社がリーマンショックで

 破綻に追い込まれ、米国の住宅市場は一気に冷え込みました。


 というのは、米国の金融機関は個人の住宅ローンという債権を

 これらの会社に販売し回収を一任することで、

 自らは別の貸付を行えるという「仕掛け」で動いていたからです。


 リーマンショック以降、この仕掛けが機能しなくなっていたわけですが、

 ここに来て2社が債務超過から資産超過に転じたというのは良い兆候でしょう。


 3年間続いてきたサブプライムの後遺症からようやく

 回復してきたのだと感じます。


 もう少し黒字が継続しないと安心はできませんが、しばらくすれば、

 再び金融機関が住宅ローンを扱える時期が来るかも知れません。


 リーマンショックからの米国経済復調の兆しが見え始めた一方で、

 逆に次のような懸念も広がっています。


 7月31日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は

 「米経済の将来をむしばむ学生ローン問題」と題する記事を掲載しました。


 世界の若者の13%近くに職がないという国際労働機関(ILO)の統計を

 紹介しながら、米国の大学の卒業生が1人当たり

 平均2万5000ドル(約196万円)の学生ローンを抱えているとし、

 米経済の成長に悪影響を及ぼしかねないとしています。


 米国の学生ローン利用者の状況を見ると、1万ドル未満:43.1%、

 1万~2.5万ドル:29.2%となっています。


 卒業後に返済を続けている人も含めて利用者数全体で見ると、

 約3700万人が学生ローンを利用しています。


 就職して、順調に5万ドル~10万ドルの年俸を受け取れるようになれば

 問題ありませんが、職がなければ、当然、学生ローンを返済できません。


 社会人としてのスタートダッシュに失敗した若者には、

 確かに厳しい将来が待ち受けています。

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