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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON426「米IT企業の上場とタブレット市場~期待値の演出を考える」

2012年8月10日

 米ネット企業

 新興ネット企業の株価に明暗

 タブレット端末

 4-6月期世界出荷台数 米アップルが首位


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 ▼ 上場時が期待値の最大になってはいけない

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 2011~12年に相次いで株式公開した新興の米インターネット企業の株価が

 明暗を分けています。


 フェイスブックは6営業日連続で下落し、2日には一時、

 20ドルを割り込みました。


 一方、4~6月期決算を発表したリンクトインは同日の時間外取引で株価が

 9%超上昇しました。


 広告に加えて「会員情報を活用した企業の採用支援ビジネス」と

 「会費収入」を収益源としていることが成長期待を生んでいると見られます。


 リンクトインも収益だけを見ると、この四半期では落ち込みを見せていますが、

 フェイスブックの後からスタートしたサービスとしての強みを感じます。


 米国の新興インターネット企業の株価推移を見てみると、リンクトインや

 イエルプといった比較的小規模な企業のほうが堅調です。


 一方で、大型上場として一世を風靡したジンガやフェイスブックの株価は

 かなり落ち込んできています。



 上場時に比べると、ジンガの時価総額は約60%以上減、

 フェイスブックが約40%減といった状況です。


 このような状況を見ると、「とりあえず上場してお金を稼げばいい」という

 考えがあるのではないかと私は感じてしまいます。


 かつてはマイクロソフトなどを見ても分かるように、

 上場してからがスタートであり、そこから大きく株価も伸びていきました。


 ところが現在では、上場時に「期待値」は最大となっていて後は落ちるだけ、

 という状況です。


 市場が過剰に期待値を演出する一方で、その割を食うはめになっているのが、

 上場時に期待して株を購入する「一般株主」という構図です。


 新興インターネット企業を観察するときには、上場後の動向にも

 注意をはらっておく必要がますます高くなっていると感じます。

 

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 ▼ アンドロイドOSとiOSの差が開き始めている

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 米調査会社IDCが2日発表した4-6月期のタブレット型多機能端末の

 世界出荷台数調査によると、米アップルが前年同期比84%増で

 首位を維持しました。


 3月に発売した新型の「iPad」が好調で、シェアは約70%と2位の

 韓国のサムスン電子(9.6%)を大きく引き離して独走しています。


 これは相当、根が深いポイントだと思います。


 iPhone・iOSに対して、アンドロイドはOSを無料で利用できるということが

 利点になっていますが、結局のところ誰もアンドロイドOSに

 ついて責任を持って取り組んでいる人がいません。


 一方のiOSはアップルがそれこそ命がけで開発を進めています。


 ここに来て、OSそのものの信頼性やアプリの優秀性の点で

 両者の間に差が出始めています。


 2011年第2四半期のタブレット端末のメーカ別シェアでは、

 トップのアップル61.5%に対して、2位サムスン電子が7.3%で

 赤丸急上昇と思っていました。


 ところが今年(2012年第2四半期)になって、2位サムスン電子9.6%と

 伸びているものの、トップのアップルが68.2%までシェアを伸ばし、

 両者の差は広がっています。


 このシェア推移を見る限り、アップルの強さが際立っており、

 OSの性能、豊富なアプリケーションなど、全体の整合性の点でも

 抜きに出ている印象です。


 日本では、KDDIがiPhoneに乗り換えた一方で、NTTドコモは今後も

 アンドロイドOSを採用していく方針のようです。


 最近、NTTドコモでは通信・システムトラブルが頻発し、

 システム面に弱いという「力不足」を露呈しています。


 今後もアンドロイドOSを採用するのか否かという点は、

 今後の非常に重要な判断になると思います。


 盤石と思われているNTTドコモであっても、

 このOS問題は慎重に整理していくべきでしょう。



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