大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕#143 安倍政権の基本的な性格と問題点

2006年12月18日

#15日(金)更新分の記事ですが、記事が正しくアップロードされておりませんでした。深くお詫び申し上げます。
それでは、大前研一「ニュースの視点」をお楽しみ下さい。


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国民投票法案
憲法改正を対象とした国民投票権、原則18歳以上に
3年間は改憲案の提出や審議を凍結
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●安倍政権の基本的な性格は、妥協的なズルズル主義


6日、憲法改正手続きを定める国民投票法案についての
与党修正案の内容が明らかになりました。


今回の法案の主な修正点は、次の点です。


(1)投票年齢は18歳以上、成人年齢を定めた関連法規が
    改正されるまでは20歳以上


(2)投票の対象は憲法改正に限定


(3)国民投票法の施行時期は公布から3年後とし、
その間は新設される「衆参憲法審査会」の
    憲法改正原案の審査権限を凍結


上記を含む9項目が修正案のポイントになっています。
今回の修正案は、民主党の独自案との一本化を睨んだ形。


 そもそもの与党案では、国民投票の対象を憲法改正に限り
 投票できるのは20歳以上、などとしていた部分など、
 3党それぞれが歩み寄り、部分的に妥協しあった修正案に
 なっています。


このように述べると、お互いの意向を尊重しあったベターな
 修正案になったように聞こえるかもしれません。


 しかし、そうではありません。
 私は、今回の修正案を見てがっくりきてしまいました。


なぜなら、法案そのものの質も勿論ですが、安倍政権の性格が
 「妥協的で、かつ、問題先延ばしのズルズル」主義だと
 分かったからです。


例えば、投票年齢について
 「18歳以上としつつ、成人年齢を定めた関連法規が
 改正されるまでは20歳以上とする」という部分など、
 非常に中途半端です。


 私は以前から、参議院・衆議院の選挙権そのものを
 18歳以上にすべきだと主張しています。


 国民投票を18歳以上にするなら、自然な流れとして、
 選挙権についても同様にすべきでしょう。


 しかし、今回の修正案にはこの部分は含まれていません。
また、「交付から3年間は改正案の提出・審議を凍結する」
 という点も、単に反対意見に対する中途半端な妥協案を
 提示し、問題を先送りしているだけに思えます。


「成人年齢を定めた関連法規が改正されるまで・・・」とか
 「3年間は凍結・・・」といった「妥協的で曖昧な態度」や
 「問題先送りのズルズル主義」という
 安倍政権の基本的な性格は、他のあらゆる政策にも
 影響する重要な問題だと感じます。


●政策論議の前に、基本的な性格改善が必要


安倍政権の基本的な性格が顕著に現れた事例が、
さらにもう1つあります。


それは、道路特定財源の一般財源化に関する問題です。


今回の修正案で、
 道路特定財源の余剰分(約5,100億円)のうち、


 3,000億円前後を高速道路料金引き下げなどの
 道路関連予算に充て、残りの約2,000億円は使い道を定めない
 一般財源とする方向で調整することが発表されました。


そもそも、この道路特定財源の一般財源化は、
 小泉前首相から引き継いだ問題です。


 小泉前首相が01年春の就任直後から改革を試みていましたが、
 道路族議員の強い反発もあり、ずっと難航していた
 問題なのです。


 それが、昨年の衆院選の圧勝を背景にようやく小泉前首相が
 動かし始めた改革のバトンを、安倍首相が受け取った形です。


たしかに、衆院選の圧勝があったとは言っても、
 自民党の道路族議員の力は大きいでしょうから、
 まだまだすんなりと事が運ぶということは
 ないのかも知れません。


しかし、今回の安倍政権の対応は、「難航する、しない」と
 いったプロセスや結果以前の問題だと私は感じています。


 結局のところを言えば、先に取り上げた国民投票問題と同様、
 この道路特定財源の問題についても、
 「妥協的でズルズル主義」という性格そのものの対応に
 なってしまっています。


小泉前首相から引き継いだとおり、
 今回は予算作成のときから、道路特定財源を「一般財源化を
 する」というのが安倍政権の全面的な意向だったはずです。


それなのに、道路族から猛反対を受けてあっさり妥協して
 しまいました。道路族から反対があることなど、


 これまでの経緯を見ても当初から十分予想できることなのに、
 安易に妥協し、一貫性を保てない姿勢に、
 私は呆れてモノが言えません。


細かい点を挙げれば、
 「3000億円は高速道路、残りの2000億円は一般財源」という
 金額の分配の論拠も分かりませんし、


 一般財源化するといっておきながら、結局3,000億円を
 高速道路などの関連予算にするということは、 
 道路公団への補助金と同じでしょう。


 さぞ道路族の方々は喜んでいることでしょうが、
 国民からすれば納得できた話ではありません。


これまでのいくつかの対応を見てきて、安倍政権の基本的な
 性格が明らかになってきたと感じます。


 まず、安倍政権について言いたいのは、
 この「妥協的で、ズルズル主義」の基本的な性格を改めて
 もらいたいということです。


自らの意見を一貫して主張できないようでは、
 政策を議論する準備すらできていない状態だと私は思います。


 私は小泉前首相の政策にも、色々と反対意見を述べました。
 郵政民営化に反対していたのは、ご存知の通りです。


しかし、たとえ意見が異なっても、
 お互いに一貫した主張であれば、そこには議論が生じますし、
 意味もあるでしょう。


 まず、民主主義国家として、議論できる最低限の素地として、
 安倍政権の基本的な性格そのものを改革して
 いただきたいと思います。


        以上


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