大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON414「電機・製薬大手とソーシャルゲーム規制 ~利益の中身を考える」

2012年5月18日

 電機大手 選択と集中の差で明暗
 製薬大手 武田薬品 営業利益が前期比40%減
 ソーシャルゲーム規制 「コンプリートガチャ」を5月末までに廃止


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 ▼東芝と日立の決算数字を単純に比較はできない
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 東芝が8日に発表した前期の連結決算は最終利益が
 前期比46.5%減少となりました。


 発電所向け設備など社会インフラ事業が堅調な収益をあげ、
 赤字転落は免れました。


 一方、日立製作所の純利益は3471億円と過去最高となりました。


 大手各社の業績推移を見ると、営業損益・最終損益が
 リーマン・ショック後にV字回復しているのが見て取れます。


 パナソニックの最終損益が大きく落ち込む中、
 確かに日立の純利益が過去最高になっています。


 とは言え、数字そのものも大した額ではありませんし、
 もう少し「中身」を見て判断する必要があります。


 セグメント別の営業損益を見ると、まずパナソニックの
 「デバイス」「エナジー」「AVCネットワークス」といった
 デジタルデバイスなどの赤字が大きいのが分かります。


 規模そのものが巨大だったので赤字も必然的に大きく
 なってしまったのでしょう。


 ただし、この家庭用デジタルプロダクツという分野はサムスンでも
 赤字に転落しているので、世界的な問題と認識して良いと思います。


 一方、日立と東芝を比較すると面白いことが分かります。


 日立では「電力システム」が赤字ですが、東芝は黒字です。
 また「デジタルメディア」分野では両者共に赤字ですが、東芝のほうが
 赤字は小さいのです。


 この点だけを見ていると、日立よりも東芝のほうが
 順調だったように感じます。


 では、なぜ日立が最終損益で過去最高となっているのかというと、
 「建設機械」「通信情報システム」など一部分野の
 大きな黒字があるからです。


 が、実はこれらのセグメントではかつては別会社で計上していたものを
 今は本社に取り込み「日立製作所」として計上しています。


 東芝で言えば、利益の大きい東芝メディカルなどの数字を
 一緒に計上しているようなものです。


 上記のような「計上方法」の違いを考慮すると、一昔前のように
 単純に日立と東芝を比較することに意味はないでしょう。


 この5年間で日立は多くの優良会社を本社直轄にしています。


 このあたりの条件を同一にした上で両者を比較しなければ、
 どちらが良いのかは分からないと思います。


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 ▼大塚HDが製薬業界の勢力図を塗り替える
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 武田薬品工業は11日、2013年3月期の連結営業利益が前期比40%減の
 1600億円になる見通しだと発表しました。
 
 また第一三共は連結純利益が前期比85%減の103億円、大塚ホールディングスは
 連結純利益が前期比12%増の921億円だったとのことです。
 
 武田薬品は、かつて3000億円を超える莫大な利益を出していましたが、
 医薬品の特許切れ問題などもあり、今はかなり利益が下がってきています。
 
 第一三共はランバクシー・ラボラトリーズの買収で抱えた損失が大きく、
 安定した利益を出せていない状況です。
 
 そのような中で、大塚HDは安定しており、緩やかですが利益も
 伸びてきています。
 
 これは医薬品だけでなく、ポカリスエットなどの食品部門が
 支えているのでしょう。
 
 大塚HDは薬品業界というより食品業界と考えられることも
 ありましたが、今では利益も1000億円を超え、薬品業界でも
 トップ3グループに食い込んできています。
 
 日本の製薬業界の勢力図も大きく変わろうとしています。
 
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 ▼ソーシャルゲーム市場に警察の天下りを入れるな
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 ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーなど
 6社は9日、自社ゲームで「コンプリート(コンプ)ガチャ」
 と呼ばれるアイテム商法を5月末までに廃止すると発表しました。


 この手の商売については私も心配していました。


 新しい会社ですから致し方ないとも感じますが、
 子供が何十万円も使い込んでしまうという事態になってしまったので、
 法律規制の動きも出てくることが予想されます。


 このような事態になって私が一番恐れているのは、パチンコ業界のように
 「警察利権」「天下り」の対象となる可能性が生じることです。


 パチンコ業界が大きくなりすぎて、警察にとってもその利権は
 手放せないほど「美味しい」ものになっており、そのことが
 日本における「カジノ」の認可に歯止めをかけているという噂すらあります。


 ソーシャルゲームというのは新しい業界ですから、現時点では
 このような問題は起こっていませんが、今回の件を契機として警察の
 天下りが入ってくる可能性は大いにあると思います。


 「天下りを受け入れるので、少し緩くしてくれないか」といったような
 妥協をするべきではありません。


 警察のテリトリーにされないよう、自分たち自身でやるべきことをやって、
 それ以上のことについては徹底的に戦う姿勢を見せてほしいと思っています。


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