大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕#142 日本には、チャレンジ精神・起業家精神を育む教育改革が必要だ!

2006年12月8日

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 米VCの投資先上場企業
 4社に1社の起業家が米国外生まれ
 出生地ランキングでは、インド首位
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●アメリカで活躍できる起業家。日本人はランク外


 全米ベンチャーキャピタル協会などがまとめた調査によると、
 1990年から2005年に米ベンチャーキャピタルの
 投資先上場企業356社の約25%が、米国外生まれの起業家が
 創業した企業になるとのこと。


業種別ではハイテクの比率が突出していて、
起業家の出生地ランキングではインドが首位になっています。


また、1980年以前から米VCが投資した上場企業の
累計725社のうち、144社を占める米国外生まれの起業家の
出生地別ランキングを見てみると、


インドが32社で断トツの首位。続いて、2位:イスラエル
(17社)、3位:台湾(16社)、4位:カナダ(7社)と
続いています。


※「米VC投資先企業数と起業家出生地ランキング」チャート
「米VC投資先企業数と起業家出生地ランキング」チャート


破竹の勢いで成長しているインド。
それに続く、イスラエルと台湾。中国よりも台湾の方が
上位であることを疑問に感じる人もいるかも知れません。


しかし、小さい国ながらも実は台湾の方が圧倒的に
アメリカでの影響力を持っています。


そして、このトップ3に加えて、近隣のカナダが4位に
位置しているのは、頷ける順位でしょう。


では、日本はどこに登場するかというと、
英国・フランス・ドイツ・中国・イタリアといった
経済大国に及ばないばかりか、12位:韓国・スイス(3社)、
14位:ベルギー・ハンガリー(2社)にも手が届かず、
ランクインさえしていません。


アメリカという国との親和性や、経済レベルでの国の大きさを
考えてみると、日本がベルギー・ハンガリーよりも
アメリカで活躍できていないというのは異常なことだと
私は思います。


こういう事実を突きつけられると、改めて日本人というのは、
起業というチャレンジ精神が欠けている国民だと
感じてしまいます。


自ら創業するというタイプよりは、大企業の中でコツコツと
作業をこなすとか、大学教授になって黙々と研究に励む
タイプが圧倒的に多いのでしょう。


これは、日本の教育による影響が大きいと感じます。
これまでの戦後教育がチャレンジ精神の薄い国民性を
作り上げ、結果としてこのような事態を招いているのだと
思います。


シリコンバレーで活躍している日本人というと、
ソレクトロン社の元CEO西村氏の名前が挙がることがあります。


しかし、西村氏は日系2世のアメリカ生まれですから、
今回の調査の対象外ですし、やはり日本の教育が生んだ
成功事例とは言えないでしょう。


国の経済レベルを考えれば、もっともっと多くの日本人が
活躍してしかるべきですが、現状は本当に情けない有様としか
言いようがありません。



●世界の資金とチャンスは、東欧・中欧・ロシアへ


先ほどの、米国外生まれの起業家が創業した企業数の時代別の
 推移をみると、年々その割合が上昇しているのが分かります。


1980年以前は「123社中8社(約6.5%)」、
 1980~89年は「246社中48社(19.5%)」で、
 90年~05年で「356社中88社(約25%)」になっています。


80年代以前の6.5%から比べると、今では、実に約4倍近く
 拡大してきています。


この事実は、米国のベンチャーキャピタルの投資先が、
 徐々に米国内だけではなく、国外の地域にシフトしてきている
 ということを意味していると思います。


 つまり、今後は益々インドやイスラエルなどの地域に、
 資金とチャンスの両方が集まっていくということに
 なるでしょう。


実は、同じようなことが、ヨーロッパ側のベンチャー
 キャピタルの動向からも伺い知ることができます。


例えば、米イーベイによって買収された
 スカイプテクノロジーズ社は、ルクセンブルグの
 マングローブ・キャピタル・パートナーズという
 ベンチャーキャピタルが資金提供をした会社です。


当初、1.9millionドル(約2億円)の資金を投下してから、
 たった18ヶ月のうちに100倍近い180 millionドル(約200億円)
 で売却に成功した事例です。


 そのマングローブ・キャピタルの幹部などは、
 今後の投資注目先として、チェコ、ハンガリー、ポーランド、
 ロシアを挙げています。


 今後は、スカイプの200億円近い売却益と成功例を手土産に、
 ヨーロッパから東へ進出していこうという
 意気込みを感じます。


このように、今後はアメリカ側からも、ヨーロッパ側からも、
 新興国地域に、資金とチャンスが流れていくことに
 なるでしょう。


残念なことに、こういった世界の情勢からは
 日本は蚊帳の外にいる情けない状況です。


 日本には世界に誇れる技術力も勤勉性もあります。
 しかし、新しいものを創造するチャレンジ精神や、
 自ら事業を起こすパワーが世界のレベルには達していないと
 言わざるを得ません。


先ほども述べたように、これらは一朝一夕に変化するものでは
 なく、教育による影響が大きいのは間違いありません。


教育基本法の改正が取り沙汰されていますが、
 字面だけの法律改正ではなく、国際社会の中で日本人が
 活躍できる素養を身に付けることができる、
 真の教育改正につながるような実施を
 期待したいと思います。


                                   以上


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