大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON403「本四連絡道路と休眠口座~真剣に「活用する」ことを考える」

2012年3月2日

 本州四国連絡高速道路
 全国基準の料金設定に引き下げ
 休眠預金
 被災起業支援に活用検討


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 ▼本州四国連絡高速道路の合併による値下げは、良いアイディアだ
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 国土交通省は、本州四国連絡高速道路が運営している高速道路が
 割高な料金設定になっているとして、2014年度から全国基準の料金設定
 にして引き下げる方針を明らかにしました。


 この路線は多額の債務を返済するため、割高の設定となっていたもの
 ですが、西日本高速道路と合併するなどして負担を軽減する方針です。


 これは非常に良いアイディアだと私は思います。
 そもそも、今の値段設定自体が間違っていて、
 それは是正されるべきだからです。


 現在の価格設定は、本州四国連絡橋を作る際、そこを通るフェリー
 の料金よりも安くならないように調整した結果です。
 せっかく橋を作るのだから、どんどん交通量を増やして使ってもらおう
 と考えれば良いのに、フェリー会社も生き残れるように
 価格を調整する方向に向かってしまったのです。
 いかにも日本的な発想です。


 淡路島と本州をつなぐ橋を作った時にも全く同じことが起こっています。
 フェリーに乗れば1時間の睡眠がとれるけれど橋を渡ると眠れない、
 といった屁理屈を並べて、結局既存のフェリー料金に合わせた値段が
 設定されました。
 結果、価格が高く交通量が増えないという事態を招いています。


 高速道路会社の主な経営指標を見ると、単純に直近決算の債務残高を
 収益で割ると、理論上、東・中・西日本を合算した負債は
 約21年で返済できる予定ですが、
 一方で本州四国は約46年もかかる試算が出ています。


 ならば、東・中・西日本に本州四国を合算してみたらどうなるか?
 と見てみると、実は約1年弱期間が延びるだけで大勢として
 ほとんど影響がないと分かります。


 これを前提に高速道路の料金をフェリーの料金に合わせるのをやめて、
 一般的な高速道路と同じくらいの価格帯に下げれば、
 四国から関西、あるいは逆に関西から四国への物流さえも活性化し、
 流通量が圧倒的に増加するでしょう。
 これは試してみる価値は大いにあると私は思います。


 政府は道路公団の借金をまるで嬉々として使っていますが、
 これはしっかりと返済するべきものです。


 その上で高速道路を全国の国道と同等にして国道0号線にするというのが、
 私が以前からずっと提唱している考えです。


 これを実現する財源として、私はプレート課税というものを
 提唱しましたが、残念ながら民主党は私の意見を曲解し 、
 財源を手当しないまま「高速道路無料化」とマニフェストに
 書いてしまったのです。


 これでは都合のよい解釈にすぎないですから上手くいくはずがありません。
 民主党がお粗末だったということです。


 その点、今回のアイディアは非常に効果も期待できますし、
 論理的に筋も通っているものだと思います。


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 ▼休眠口座のお金は、日本の将来を担う若者の起業資金として使うべき
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 政府は、銀行などで10年以上お金の出し入れがない「休眠口座」の預金を、
 東日本大震災の被災地企業の支援策などに使う検討に入りました。
 休眠預金は毎年800億~900億円発生しており、
 その一部を有効活用するのがねらいです。


 しかし、銀行業界は「もともとは顧客のお金。国が使うのはおかしい」と
 反発しているとのことです。


 もともとこのアイディアは私が発案したもので、
 何人かの大臣に説明しました。


 今回の発表を見ると、説明の仕方に問題があると思います。
 私が提案しているのは、このお金の使い途は「グレートソサエティ」を
 創り上げるため、というのが大前提です。


 少し話を広げると、高齢者で身寄りがなく亡くなった方や
 遺産相続をすることなく亡くなった方がいたときには、
 そこで残されたお金を「若い人」のために使う、ということです。


 もう少し具体的に言えば、「若者の起業資金」として使うのなら、
 国家にとっても非常に有益な資金運用になるという考えです。


 私は若者の起業を支援するファンド運営に携わっていますが、
 志ある若者が起業するときには「一口200万円」で資金を調達します。
 50口集まれば1億円になります。
 こうして支援されて立ち上がった企業の中から
 上場企業がいくつも出てくる可能性は十分にあります。


 私が主催するアタッカーズ・ビジネススクールは、
 約5500人超の卒業生を輩出し、これまでに750社くらい起業しています。
 中には上場した企業もいくつかあります。


 このような経験を民主党の議員に説明したところ、
 「国としても同じようなことをやらないとダメだ」という話になったのです。


 その結果として、「休眠口座」を若者の起業支援のための資金として
 活用するという展開になっていたのですが、
 そこから「東北の復興のためならOKではないか?」という
 役人独特の勝手な解釈で本来の目的とはずれてきているのです。


 今厳しい状況に置かれている東北を、というのは政治的には
 理解できる部分もありますが、
 「高齢者から若者に素晴らしい国作りをするために」という
 大前提から外れるべきではないと思います。


 銀行が「顧客のお金だから」と反発しているそうですが、
 銀行こそ最も出る幕がない立場にいます。


 現在、日本では10年利用しない口座(休眠口座)のお金の中には
 「一旦銀行の利益として計上」されているものがあります。
 顧客のお金を奪うなと言いながら、自分たちの利益としているのですから、
 開いた口がふさがらないとはこのことです。


 若者に限っての起業支援が上手く活用されれば、何万社も起業し、
 そこから多くの上場企業が出てくる可能性もあり、
 それは日本の将来を大きく変えるきっかけになり得ると思います。
 国がそこまで手を差し伸べてくれてくれるのなら、
 若者、あるいは定年退職した人なども、
 大いに刺激を受けて意識が変わるはずです。


 ぜひ日本の将来のために、若者が作る日本のために使ってもらいたい
 と思います。


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