大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON401「日米両国の本音~在日米軍、軽自動車問題にみる日米関係」

2012年2月20日

 在日米軍問題
 在日米軍再編の見直し法案を発表
 日米貿易
 「軽廃止」の対日要求を撤回


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 ▼米軍には居て欲しい、それが日本の本音だ
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 野田政権は、在日米軍再編の見直しに関する基本方針を発表すること
 を決めました。
 沖縄の海兵隊のグアム移転を先行させ、米軍普天間飛行場の移設と
 切り離すことが柱となっています。


 普天間基地からの移転先として、半分はグアム、残りは辺野古
 というのが日本の想定でした。


 ところが、ここに来て米国海兵隊の人気が急上昇してきていて
 状況が変わりつつあります。南沙諸島の問題もあり中国脅威論が
 台頭してきていることが背景にあります。


 日本の本音を言えば、米国海兵隊には居てもらいたいはずです。
 日本の自衛隊は攻撃機能を保持していませんから、積極的に攻撃できる
 米国海兵隊が居てくれることは、中国への牽制という意味でも
 大きな役割を果たします。


 だから普天間基地からの移転にあたっても、
 「グアム移転の費用の6割は日本が負担する」
 「その代わりに辺野古に海兵隊を残す」という形に落ち着けようと
 しているのです。


 滞在先としてグアムの評判は米国海兵隊員にあまり良くないようで、
 その点、沖縄のほうが魅力的だと言えるかも知れません。


 ただし中国脅威論のおかげで、オーストラリア、さらには
 かつて米国を追い出したフィリピンまでも海兵隊を受け入れる姿勢を
 見せているので、日本としては安心できる状況にはないでしょう。


 日米の共同発表を見ていると、どちらも「本音」を発表しておらず、
 私としてはお互いに本音をぶつけあってすぐに解決の道を探って
 欲しいと思います。


 米国の本音は
 「グアムには行きたくないし、日本からの資金援助は欲しい」で、
 日本の本音は「米国海兵隊には近くに居て欲しい」というものです。


 日本は「辺野古でなければ嘉手納、岩国、三沢」などと言ってないで、
 本音をズバッと言うべきです。


 さらに言えば、米国の本音として「グアムは嫌だし、資金援助は欲しい」
 と思っているのですから、
 「米軍に居てもらうための費用を支払うので日本に居て欲しい」
 というところまで言ってみるのもアリでしょう。


 この問題に関して、本音を隠し、日本の国防上の重要課題について
 長年国民を騙してきた自民党の罪は非常に大きいと私は思います。


 誰もが分かっているのに口にしない、
 そんなやり方はもう止めにしてもらいたいと思います。


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 ▼米国が軽自動車規格の撤廃要請取り下げた、その理由は?
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 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加で焦点となっている
 自動車の市場開放を巡り、米自動車大手が日本独自の軽自動車規格
 の撤廃要請を取り下げたことが明らかになりました。


 TPPから波及した問題ですが、これは非常に興味深い話です。
 軽自動車という種別は日本独特のもので、米国にはありません。
 米国の場合、軽自動車に相当する車種でも1000~1300CCの排気量があり
 (日本の軽自動車は660CCくらいが一般的)
 一回り大きなサイズになっています。


 日本では、軽自動車の税金は安く、高速道路料金も割安です。
 この点について、軽自動車が優遇されすぎているので不公平だと
 米国は常々不平をもらしていて、市場開放を求めていました。


 私に言わせれば、米国も日本並みの大きさの軽自動車を作って
 参入してくればいいと思うのですが、米国としては
 今ある「米国の軽自動車もどき」を日本で売りたいというのでしょう。


 そして市場が解放されればそれが実現できると思っていたようです。


 しかし、ここに誤算がありました。
 実際に日本の軽自動車が売れているのは、優遇されているからだけではなく、
 むしろ1リッター当たり20-30キロ走れるという様な「質の高さ」が
 理由になっています。


 「日本の軽自動車を甘く見ていたけど、実は乗用車並みの性能を持った車だ」
 ということにようやく米国は気づいたのでしょう。


 TPPが成立すれば「相互に自由」になりますから、
 1000~1300CCの米国の「軽自動車もどき」で日本市場に攻めこもう
 と思っていたのに、これでは逆に日本の軽自動車に
 米国の市場を席巻される恐れがあると感じたのだと思います。


 実際、日本の軽自動車はタウンカーとしては十分な機能を持っています。
 燃費の良さ、駐車の手軽さなどを考えても非常に使い勝手の良い車です。
 米国でも受け入れられる可能性は大いにあると思います。


 その可能性に思い至ったために、米国は急に市場開放の撤廃要請を
 取り下げたということです。
 これくらい自己中心的な話はないと思います。


 私は以前から日本の軽自動車を徹底的に米国で売るべきだと
 言ってきましたが、ぜひ日本から攻め入って欲しいところです。


 もし日本が攻めなければ、おそらく中国がその役割を果たすことに
 なると思います。奇瑞汽車(チェリー自動車)など勢いのある
 自動車メーカーが頭角を現してきていて、
 世界を見ていると中国以外の国でも、中国メーカーの車を見かける機会が
 増えてきたと実感しています。


 中国に負けず、日本から積極的な姿勢を見せて欲しいと思います。


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