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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON390「中国経済~バブルを経験した「先輩」として変化をどうとらえるか」

2011年11月25日

 中国の金融制度に警鐘 IMF
 中国経済 10月の消費者物価指数 前年同月比5.5%上昇
 中国ホテル市場 ホテル稼働率が急速悪化


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 ▼中国銀行の貸付問題が、いよいよ表面化の兆し
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 国際通貨基金(IMF)は14日、中国の金融制度について、金利や
 為替相場、銀行監督などを含む広範な改革を急ぐよう求める評価報告書を
 初めて公表しました。


 報告書は「中国金融セクターは複数の短期リスクに直面している」と
 指摘しています。銀行ローンの質の劣化や欧州債務不安による連鎖的
 な影響、さらに住宅など不動産バブル崩壊の懸念などを挙げています。


 IMFが指摘している銀行ローンの質の劣化というのは、主に中国銀行が
 中堅自治体へ貸し出している部分を指しているのだと思います。
 この債務が返済されるかと言えば、おそらく相当難しいでしょう。
 国そのものが動かなければ、ここを解決することはできないと私は思います。


 自治体への貸し出しに加え、民間への貸し出しも不動産市況が
 翳ってきているため、非常に厳しい局面を迎えつつあります。
 さすがにこれまで強気な姿勢を見せていた中国政府も、踊り場に差し
 掛かっていることを認めざるを得ないでしょう。


 この状況になると国としてコントロールする際に、難しい手綱さばきが
 求められます。無理にコントロールしようと手を出すと、一気に問題が
 噴出して経済が大下落してしまう可能性があります。


 逆に何もせずに放置したままだと、中国の銀行が本来実行すべき緊縮財政に
 向かわない可能性があります。


 また先日、バンク・オブ・アメリカが保有する中国建設銀行の株を
 大量に売却しましたが、このような動きが中国銀行の株価下落を助長しています。


 3~4年前、中国の銀行は外国の銀行から積極的に資本提供を受けました。
 資本の強化と同時に、国際化の方法などの様々な経営ノウハウが学べる
 という大きな利点があったからです。


 中国への足掛かりを探していた外国の銀行にとっても絶好の機会でしたから、
 Win-Winの関係などと言われていました。しかし今回のバンク・オブ・アメリカ
 による大量放出を見ていると、その関係は崩れ去り、明らかに中国建設銀行の
 将来を危ぶみ、大きく下落する前に売り払ってしまおうという意図を感じます。


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 ▼中国輸出は未だに増加傾向も、ホテル市場は厳しい局面
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 中国国家統計局は、10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ
 5.5%上昇したと発表しました。伸び率は7月の6.5%をピークに
 3カ月連続で減少していて、5カ月ぶりに5%台に低下しました。


 また、18日発表した10月の主要70都市の新築住宅価格指数は、
 34都市で前の月に比べて下落したことがわかりました。
 中国政府は不動産バブル対策で投機目的の住宅購入を厳しく制限しており、
 販売不振に陥った不動産業者の間で物件を値下げする動きが広がっている
 ものです。


 最近、中国の不動産価格を維持するのは難しいと言われていましたが、
 ついに現実化してきたようです。中国の不動産価格が下がるのは
 正当な動きと言えるでしょう。


 ただ一方で、中国の輸出入額の推移を見ると、数年前に比べると輸出の
 伸び率に翳りは見えるものの、依然として伸びていて輸入を上回っています。
 前年同月比15.9%増という数字は、それほど悪くないと思います。
 相変わらず、中国に外貨が溜まるという構図に変化はありません。


 一方で、厳しい状況になっているのが中国のホテル市場です。


 世界のホテルチェーン各社にとって最大の成長市場だった中国で、
 客室稼働率に急ブレーキがかかっています。
 米調査会社STRグローバルによると上海市の9月のホテル稼働率は
 前年同月比16.5ポイント低下の62.7%にとどまったことが分かりました。


 これはアジアで最大の下げ幅です。昨年は稼働率が約80%でしたらから、
 相当厳しい状況になってきているのが分かります。
 ただ東日本大震災後の日本では、外国人向けのホテルなどの稼働率は
 20%~30%程度に落ち込みましたから、それに比べれば「マシ」だと
 見ることもできるでしょう。


 私の実感で言えば、中国はホテルを建て過ぎていると感じます。
 例えば、上海などは良い例でしょう。私もたびたび上海に行く機会が
 ありますが、その際ホテルの賑わいに少し寂しさを感じることがあります。


 中国経済に急激なペースダウンの兆候が見え始めています。
 どのような業界・市場で変化が起こってくるのか、今後も注目していきたいと思います。


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