台湾総統選
米中を揺さぶる台湾の総統選
英フィナンシャル・タイムズ
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▼台湾総統選の行方は、台湾コンセンサス次第
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先月22日付けの英フィナンシャル・タイムズは、
「米中を揺さぶる台湾の総統選」と題する記事を掲載しました。
台湾という小国の総統選に中国、米国などの世界の大国が関心を持って
いると紹介。特に今回は中国が対立する候補者のどちらを支持するか
決めかねているとして、選挙民は純粋に経済政策に焦点を絞った投票が
できるとしています。
今回フィナンシャル・タイムズで紹介されていた記事では、民進党の
蔡英文氏は「独立志向が強い」という点を指摘していましたが、
この点については少し違うかもしれません。
蔡英文氏は、前政権の中国に対する宥和政策を認める姿勢を示して
います。蔡英文氏が目指しているのは、独立ではなく、
新たな「台湾コンセンサス」を作ることだと私は見ています。
現在の国民党と中国共産党の間ではシンガポール会議によって、
「中国は1つである」という原則(92年コンセンサス)が認められ
ています。
ただし、「台湾と中国のいずれの1つなのか」を不問にし、
それを棚上した状態です。
これが台湾と中国両国間における現時点でのコンセンサスです。
蔡英文氏の主張としては、このコンセンサスは国民党と中国共産党が
合意しただけであって、「台湾人」が合意したものではない、というものです。
それゆえ、新たに中国との間に台湾人が認める「新しい台湾コンセンサス」を
作りたいというのです。私はこの観点は非常に素晴らしいと思います。
台湾総統選の行方は、このポイントをどのように押さえるかが大きく影響
するでしょう。馬英九氏が勝つには、蔡英文氏が主張する
「新しい台湾コンセンサス」を受け止めて認めてしまうことだと思います。
その上で、台湾コンセンサスを再定義するにあたって、
中国との友好関係を優先することなどを盛り込めば、
現政権が行なってきた政策を認めることにもつながりますから、
蔡英文氏の出る幕はなくなるでしょう。
逆に馬英九氏が、かつてのシンガポール会議で決定された「1つの国」
というコンセプトにこだわってしまったら、蔡英文氏に負ける可能性が
高いと私は思います。
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▼2012年は日本を取り巻く列強の状況が大きく変わる
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台湾総統選だけでなく、2012年は主要国の首脳選出が相次ぐ、
非常に重要な年になります。1月に台湾総統選があり、3月にはロシア、香港、
4月にはフランスでも選挙があります。
ロシアはメドベージェフ大統領が出馬しない意向を示しているので、
事実上プーチン首相の信任投票のような形になると思います。
4月にはフランスで大統領選があり、セゴレーヌ・ロワイヤル氏などの
社会党の候補者と現サルコジ大統領との争いが予想されます。
そして、10月には中国で選挙があります。習近平氏が総書記になれるかどうか、
また先ごろ「死去した」と誤報が伝えられた江沢民前国家主席の健康状態は
どうなのか、という点が注目です。世論では「習近平氏でほぼ決まり」
という雰囲気ですが、まだ分からない状態だと私は思います。
また習近平氏が総書記になれば、必然的に李克強氏が首相になると見られて
いますが、李克強氏が首相の任に耐えうるかどうかは疑問が残ります。
私としては第3のダークホースが登場する可能性もあるのではないかと見ています。
この点についても江沢民前国家主席次第とも言えるでしょう。
そして年末に向けて、11月には米国大統領選があり、オバマ大統領が
再選されるかどうかが注目です。12月には韓国の大統領選もあります。
韓国の場合、大統領は再選がないため、現在のイ・ミョンバク大統領は
非常に優れた大統領だと思いますが、必ず新しい大統領が誕生することに
なります。次の大統領が誰であれ、イ・ミョンバク大統領ほどビジネスに
通じている人は珍しいので、その点では心配です。
来年は日本を取り巻く列強の状況が大きく変わる1年になる可能性があります。
非常に重要な年であり、日本としても注目していく必要があるでしょう。