大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON360「必要がなかった「計画停電」~消費者心理を萎縮させた人災」

2011年4月28日

電力対策 夏の節電「一律15%減」
海外旅行 4月の海外ツアー予約 前年同月比26.2%
消費動向調査 消費者心理の悪化顕著
 -------------------------------------------------------------------
 ▼必要のない計画停電を実施した理由は?
 -------------------------------------------------------------------


 菅政権は21日、東京電力と東北電力管内における今夏の最大使用
 電力の削減目標を、家庭、企業とも一律、前年比15%減とする方針
 を固めました。


 政府の当初案では、削減幅を大口需要家25%、小口需要家20%、
 家庭15~20%と決めていましたが、供給力を増強するめどが立ち、
節電目標を引き下げるとのことです。


この発表と合わせて、夏の電力供給力について従来見通しの5200万
 キロワットから約300万キロワット積み増し、通常の夏のピーク需要
 である5500万キロワット分を確保する方針を東電は明らかにしてい
 ます。


 今さら「5500万キロワットは確保できる」と言われても、
一体どういう事なのか?と質問したくなります。


 これらの数字を見れば、3月~4月に電力量のピークに達することは
 絶対に有り得ません。それなのにあの時点で「計画停電」を行った
 理由は何でしょうか?「計画停電」が必要なかったことは自明です。


 おそらく夏にかけて25%程度電力が足らなくなる可能性があるので、
 「今のうちから」国民に節電の癖をつけさせようという意図だったの
 でしょう。


 「計画停電」は日本全体を混乱に陥れました。電車が止まり、信号機
 が止まり、日本を訪れる外国人の数も減るなど、結果として経済が
 混乱し、未だに多くの産業でそのダメージは残っています。


 私に言わせれば、これは東電の「人災」であり、極論すれば知的犯罪
 とさえ言えるでしょう。同時に政府が許可したということですから、
 その点でも愚策中の愚策と言わざるを得ないでしょう。


 現時点では5500万キロワットの電力量を確保する見通しが立ち、
 電力削減目標を「15%程度」で済むとのことですが、ここは甘く考え
 ないほうが良いと思います。


 今後の余震などによって1つでも火力発電所が機能しなくなれば、
 あっという間に5%程度の発電量が失われてしまいます。


 「15%程度」などというリラックスした目標ではなく、やはり「20%
 ~25%程度」という厳しい目標設定をするべきでしょう。今はまだ
 リラックスする時期ではないと、気を引き締めて欲しいと思います。


 -------------------------------------------------------------------
 ▼ 旅行業界などへの影響
 -------------------------------------------------------------------


 日本旅行業協会がまとめた旅行大手7社の4月の海外パッケージ
 ツアー予約状況は、参加人数ベースで前年同月比26.2%減となり
 ました。東日本大震災後の自粛ムードなどが響いたとのことです。


※「海外パッケージツアーの予約件数の推移」
 → 


 海外パッケージツアーの予約件数は前年同月比26.2%減と大きく
 落ち込み、旅行業界では値段を安くして何とか事態の打開を図ろうと
 しています。


 今後ゴールデンウィークでどれくらいまで回復するのかを見ていく
 しかないでしょう。


 訪日外国人旅行者数と出国日本人の推移を見ると、出国する日本人の
 数も減ってきていますが、それ以上に「訪日外国人」の数が激減して
 いるのが分かります。


 2011年3月は前年同月比でマイナス50%以上になる見通しです。
 これはあのリーマン・ショック後の数値よりもさらに悪い結果です。


※「訪日外国人旅行者数と出国日本人数の推移」
 →


 現状は厳しく今のところ回復の兆しは見えないとされていますが、
 一部東京に外国人が戻ってきているようです。


 先週末、私の妻がナショナル麻布に買い物へ出かけたところ、もの
 すごく混雑していたそうです。外国人が久しぶりに日本に戻ってきて
 冷蔵庫の中身もないので、買い物に来ていたのでしょう。


 広尾あたりに注目していると、東京に外国人が戻ってきたかどうかは
 大体分かります。午後のショッピングの体験からすると、外国人が徐々
 に日本に戻ってきていると言えるでしょう。


 一部回復への希望も見え始めていますが、それでも厳しい現状にあり
 ます。この状況を悪化に導いた一因である東電の「計画停電」の愚に
 ついては糾弾されて然るべきだと思います。


 内閣府が19日発表した3月の消費動向調査によると、消費者心理の
 動向を示す消費者態度指数は前月比2.6ポイント減の38.6となって
 います。


 この落ち込みの原因は「地震でも津波でも原子炉」でもなく、「計画
 停電」によるところが大きいと私は見ています。


 こうした事実を踏まえ、政府には「正しい認識」を持ってもらいたい
 と強く思います。


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点