中国全人代
国民の不満対策が焦点
中国外交政策
中国の接待攻勢を米国が警戒
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▼ジャスミン革命の影響を恐れる中国
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中国の第11期全国人民代表大会第4回会議が5日、
北京の人民大会堂で開幕しました。
温家宝首相は施政方針演説に当たる政府活動報告で、
「今年から5年間の年平均成長率の目標を7%に設定する」
と表明しました。
今回の全人代で明らかになったことは、中国がチュニジアから
始まった「ジャスミン革命」に怯えているということです。
それゆえ、物価高騰に苦しむ所得の低い人に対して
「優しい」姿勢を見せつつあります。
また不動産を保有する所得の高い人に対しても、
固定資産税の負荷が強くなってきている点を配慮する動きを
見せています。
民主化要求が高まり危機感を募らせているサウジアラビアや
バーレーンの王室は、多額のばら撒きを行い必死な様相ですが、
中国もほとんど同じような心境になっているのではないかと
私は見ています。
全人代での中国政府の活動報告骨子を見ても、
その心境を伺えます。
・今後5年の年平均成長率は7%に引き下げ
・2015年のGDPは2010年比で1.4倍の55兆元(約690兆円)程度の見込み
・今後5年で都市住民と農民の所得の伸び率を7%確保
・今年の成長目標は8%程度に設定
・物価水準の安定を最優先
・人民元政策は従来通り
中国の財政支出の推移は年々増加し、2011年は約10兆元(約125兆円)
になる見込みです。
GDPがほぼ同じ規模の日本の財政支出は約92兆円ですから、
中国の10兆元(約125兆円)という規模は想像を絶する予算だと
言えるでしょう。
※中国の財政支出の推移
→
日本とは違い、中国は国家債務が少ないのでこれだけの支出にも
耐えうるという側面もあると思いますが、
何とも涙ぐましい努力をしていると私は感じます。
とにかく今年はたくさん支出してもいいから、
国民を何とか懐柔しようという意図が伝わってきます。
それだけ今の全人代には緊張感があると感じます。
●中国を警戒する米国/リビアに入り込み過ぎた中国
クリントン米国務長官は2日、上院外交委員会で証言し、
中国がパプアニューギニアなど太平洋の島国の指導者を北京に
招き、「飲み食い」させるなどして影響力の拡大を図っている
と指摘しました。
そうした中、3日付けの英紙フィナンシャル・タイムズ誌は
「リビア情勢が中国に残した教訓」とする記事を掲載。
中国が各国に及ぼす影響力と干渉主義とのバランスを保つことが
困難になりつつある現状を指摘しました。
太平洋島嶼は日本も影響力を増したいと考えている地域です。
現在、中国はかなり積極的に太平洋島嶼諸国を取り込もうと
しています。
資金的な援助を申し出る、あるいは外交官や事業家を呼び
植林や農業分野での投資の話を持ちかけていると言われています。
こうした中国の動きに対して、クリントン米国務長官は如実に不快感を
示しています。米国の影響力が太平洋から消えつつあり、
中国が米国の代わりになろうとしている現実に対して相当な警戒感を
顕にしています。
実際、私もクリントン米国務長官の演説を聞きましたが、
かなり興奮していた印象が残っています。
またフィナンシャル・タイムズ誌が指摘している点
について総括すれば、「中国がリビアに入り込みすぎたために、
いざという時を迎え大変な目にあっている」ということでしょう。
最近では中国はリビアの油田開発に積極的に乗り出し、
人馬一体で工場建設やオペレーション業務を行っていました。
総勢3万4000人もの中国人が派遣されていたというのですから、
相当な人数だと思います。
今回リビア情勢が悪化したことで、中国は3万人~4万人に及ぶ
中国人をリビア国外に脱出させる方法を考えたことでしょう。
普通に考えると、この規模の人数を国外に脱出させるのは
至難の業です。「戦地」からの脱出であれば尚更でしょう。
しかし今の中国には豊富な資金があるため、これを実現する
ことができました。
莫大な金額を費やして、運送会社にお金をばらまいて、
中国人を国外に脱出させる手筈を整えたのでしょう。
中国ほど資金がない国の場合には、自国民の救助はそれほど
簡単ではないと思います。
例えば、バングラデシュなど、チュニジアに来るのにも
何百キロも歩いてきているのですから、
脱出するのも容易ではないでしょう。
結果として中国は資金にモノを言わせて解決できそうですが、
余りにも入り込んでしまうと「いざという時」に大変な事態を
迎えるという教訓と言えると思います。