大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕#136 マンションは今買い時か?

2006年10月27日

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マンション市場
首都圏マンション発売戸数 前年同期比14.3%減
06年見通しは、8万戸前後
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●マンションを供給できないのではなく、
単に売り渋っているだけ


不動産経済研究所は、06年の首都圏マンション発売戸数の
見通しを下方修正しました。


前年同期比14.3%減で、
8年ぶりに通年で8万戸を下回る可能性もあるとのことです。


首都圏のマンションの発売戸数は、
96年以降00年に9万戸を越えるピークの後、
現在の8万戸前後に至っています。


ここ数年、ずっと横ばいといったところです。
しかし、これはマンション需要が伸び悩んでいるのでは
ありません。


※「首都圏の販売戸数」チャート
「首都圏の販売戸数」チャート


マンションに対する需要は引き続き高いので、
これは供給側である分譲各社が、価格操作をして、
「売り渋り」をしているのだと私は見ています。


私がこの伸び悩みを「売り渋り」に違いないと思うのには、
大きく2つの理由があります。


まず、大量に土地が余っているのに、
早々に開発を進めようとせず、のらりくらりとゆっくり
やっているとしか思えない点です。


例えば、JR東日本が所有している品川の操作場は
開発できる土地は十分にありますが、特に開発計画などを
立てているようには見えません。


また、住都公団が所有している横浜みなとみらいも、
駅前の開発は遅々として進んでいないのは明らかでしょう。


さらに言えば、最近は50階建てというような
多くの居住人数を確保できる超高層マンションの建築も
可能になっているのですから、旺盛なマンション需要に
応えようとすれば、それに応えるべくできることは
たくさんあるはずだと思います。


次に、賃貸市場がペイしないという点も
見逃してはいけません。賃貸の市場が伸びているのならば、
販売ではなく賃貸へシフトするという戦略も
ありうるでしょう。


しかし、実際には、収益還元価格で計算すると、
賃貸の利回りは下落していて、もはやペイできない
レベルだといえます。


土地が余っているのに、
需要に応えられる高層建築もできるのに、
そして、賃貸市場もペイしないのに、販売に力を入れない
というのは、どう見ても売り渋っているとしか
私には思えないのです。



●分譲各社が、売り渋る理由とは?


では、分譲各社が、売り渋っている理由は何でしょうか?


一見すると、賃貸市場が停滞していて、
販売市場が旺盛なら、どんどんマンションを販売すれば
いいじゃないかと感じるかもしれません。


ところが、そういった中で、
首都圏の土地の価格がようやくプラスに転じ、
これから回復していく兆しを見せています。


全国平均の基準地価変動率で見ると、
住宅地も商業地も90年に対前年比で約15%の上昇率を
示していた数値も、バブル崩壊で一気にマイナスに
転じました。


90年以降は、毎年-5%前後の減少率になっていて、
06年も住宅地-2.3%、商業地-2.1%という状況です。


※「基準地価変動率の推移」チャートを見る
「基準地価変動率の推移」チャート


全国平均の地価ではこのように引き続き下がっているので
見落としがちになってしまいますが、


三大都市圏(東京・大阪・名古屋)においては
地価が下げ止まり、回復してきているということに
注目するべきでしょう。


同じく3大都市圏の基準地価変動率を見てみると、
住宅地の地価は90年頃まで約20%の上昇率でしたが
バブル崩壊で下落に転じます。


93年頃には約-10%の減少率になりましたが、
94年頃から-数%で推移し、06年には0.4%のプラスに
転じました。


この背景を知っている分譲各社は、
販売市場の価格が今よりももっと高くなっていくだろう
という予測しているでしょう。


だから、少なくとも都心の物件に関しては、
「じらす・遅らせる」という売り渋り戦略で、
地価のさらなる高騰を待っているのだと思います。


本来ならば、市場メカニズムがもう少し正常に働いて、
適正な価格での提供ができると望ましいのですが、
日本の場合にはそれが難しいのが現実です。


なぜなら、
需要と供給のバランスが完全に崩れているからです。


マンションを買いたい人が大勢いて、
需要が旺盛なのに対して、供給者は非常に限られています。
大きなところで言えば、JRや住都公団になってきます。


供給者が限られていますから、そこには競争が生まれず、
市場メカニズムが機能しなくなってしまうわけです。


だから、ある意味では、供給側の好き勝手に、
自由にやられているというのが現状だろうと思います。


先ほども例で取り上げた、
住都公団の土地である横浜のみなとみらいの駅近郊も、
意図的にゆっくりと開発を進め、地価がもっと上がった
ところで売っていこうという姿勢にしか、私には見えません。


売り手がより高い価格で販売したいという心理は
理解できますし、資本主義経済では当然のことでしょう。


しかし、マンション市場のように、
需要と供給のバランスが大きく崩れてしまうと、
そこでは市場メカニズムが適正に機能しません。


独占的な供給者が、市場を支配して好き勝手にできるのは
当然避けるべきです。


JRや住都公団についても、
もう少し需要に応えるように動いてもらいたいものだと
思います。


                              ―以上―


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