大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON348「肥大した国の借金と無駄~休眠口座と番号制度で小さな政府を目指せ」

2011年2月4日

休眠口座
「休眠口座」活用を検討
国民番号制度
番号制度導入へ具体案
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 ▼休眠口座を活用して、日本国債の元本返済に充てるべき
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 菅首相は27日、預金者の死亡などで長期間利用のない金融機関の
 「休眠口座」に関して「制約を打ち破って国として活用できる道
 がないか。内閣、民主党として、あるいは他党の皆さんにも
 検討いただきたい」と語ったとのことです。


 これは英国のキャメロン首相が推し進めている「ビッグソサエティ」
 という、社会政策の多くを慈善団体や社会的起業家などにゆだねる
 構想です。


 私はさらに慈善団体や社会的起業家、非営利組織(NPO)などに限定
 せず、個人が社会活動に参画できる「グレートソサエティ」という
 構想を持っています。


 菅首相の真意は分かりませんが、こうした構想に基づいて考えても
 「休眠口座」に手をつけるのは正解だと思います。主要国の休眠口座
 の活用事例は次のようになっています。


※「主要国の「休眠口座」活用事例」
 → →  
 英国の場合には「15年間口座が開かれた状態で、口座名義人の取引
 活動がない」状態が休眠口座となります。


 休眠口座の預金残高は「約4億ポンド」で、請求基金などに活用され
 ています。アイルランドもほぼ英国と同様のルールです。


 韓国の場合には「債権・請求権の消滅時効が成立した」口座で、現在
 「約140億円」の預金額になっています。活用先は主に福祉事業と
 いうことです。


 日本の場合、ゆうちょ銀行は10年利用しない場合に休眠口座になり
 ますが、各銀行によって定められている年数は異なります。そして
 驚くべきことに、一旦銀行の利益として計上されています。


 英国のキャメロン首相は現行の15年という期間から5年へ短縮させ
 たい意向のようですが、私はさらに「3年」で十分だと思います。


 他界してしまった人の預金のうち1千万円を超える部分を3年で取り
 込む試算をしてみると、休眠口座の預金残高は数十兆円規模になる
 でしょう。


 私はこれを日本国債の元本返済に充てるべきだと思います。日本国債
 は背水の陣と言っても過言ではないところまで追い詰められている
 ためです。


 休眠口座に手をつけるのであれば、ぜひ菅首相にはここまで考えて
 もらいたいと思います。


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 ▼ 電子政府を見据え、大きな枠組みで考える
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 政府の社会保障・税の番号制度に関する実務検討会は28日、2014年
 6月に国民一人ひとりに番号を配り、2015年1月に利用を始める基本
 方針を固めました。


 配布されるICカードには年金手帳、医療や介護の保険証などの機能
 を持たせるとともにインターネット上で過去の医療費や年金給付額を
 確認できる仕組みを創設することも検討しているとのことです。


 各国の番号制度を見ると、スウェーデンと韓国は住民登録番号を
 「税務」「社会保障」「住民登録」「選挙」「教育」「兵役」と多目的に
 利用しています。日本の場合にはデンマークのように「医療」まで
 含める方針のようです。


※「各国の番号制度」
→  


 番号制度を導入して何よりも費用的なインパクトが大きいのは、電子
 政府・電子選挙を可能にすることで選挙費用を削減できることです。


 1回の総選挙で約750億円の資金が必要になるわけですから、相当な
 影響があるでしょう。


 そのためには衆議院と参議院を下院一院にまとめ、
 上院は国民による直接投票、下院は全国の国会議員による運営
 にするべきだと私は考えています。


 重要案件は国民による直接投票にすれば、選挙も可能です。そして
 タッチパネルやパソコンを介して投票できる仕組みを作り上げておけば、
 世界中どこにいても日本人は選挙に参加できることになります。


 現在の構想の中には「生体認証」は含まれていないようですが、
 投票のことを考慮すれば必須だと思います。私はかつて「声紋認証」に
 ついての特許も出願したことがありますが、可能なら声紋認証も同時
 に進めるべきだと思います。


 さらに生活者主権・生活者の立場から考えれば、運転免許なども統一化
 するべきだと分かるはずです。日本の運転免許を持っていても国際免許
 は別途1年で更新する必要があります。日本はジュネーブ条約に参加
 しています。


 そして米国など諸外国の中にも日本の運転免許を認めると言ってくれ
 ている国があります。


 それでも国際免許が必要なのは、日本の運転免許の表記が英語でなく、
 外国人が読めないからです。


 端的に言えば、「名前」「有効期限」「免許の番号」さえ読み取れれば
 問題ありませんから、そこを改善するだけで済むはずです。


 結局、日本の役所がバラバラに動いていて一元化されていないために、
 こんな簡単なことが何年経っても改善されないまま放置されています。


 「IC 運転免許証」なども話題になりましたが、一元化の構想はあり
 ませんから大きな効果は全く期待できません。


 電子政府と言うからには、戸籍を廃止し、本籍・所属は全てコンピュータ
 で管理し、さらには納税記録や健康記録も全て一元化しておくべきだ
 と思います。


 少なくともここまで見据えていなければ「電子政府」とは言えないで
 しょう。


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