大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON326「日中GDP逆転~マスコミも国民も「尻尾を巻いて逃げる」日本を見過していいのか!」

2010年8月27日

 中国軍拡問題
 中国の軍事力拡大に警戒感
 中国経済
 日中GDP逆転
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 ▼ 中国の軍拡は日米関係にも大きく影響
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 米国防総省は16日、中国の軍事力に関する2010年版の年次報告書を
 公表しました。


 それによると中国軍が太平洋の東側海域やインド洋まで活動範囲を拡大
 させる可能性があると警戒感を示したほか、中国としては初の国産空母
 の建造を年内に開始するとの見方を示しました。


 また、クローリー米国務次官補は16日の記者会見で、日米安全保障条約
 による米国の日本防衛の義務が尖閣諸島に及ぶかどうかにについて、
 「適用対象」であるとの見解を明言しました。


 日中の防衛費の推移を見ても、中国軍が大きく拡大していることが分か
 ります。03年頃に日本と中国の防衛費は逆転し、2009円は約500億円弱も
 差が開いています。


 中国自身は軍備の近代化のためには「12兆円が適正」だと主張しています。
 そして、先進国の中でもあまり保有されていない、高度な技術と高額な
 運用費用が求められる航空母艦の建造にも力を注ぎ始めたとのことです。


 これは中国が「米国やロシア並み」の国防力を求めている野心の表れだと
 私は思います。


 中国の軍事力が爆発的に大きくなれば、太平洋地区の軍事バランスが
 崩れてしまいます。


 そして日本にとってみれば、日本が航空母艦を保有するなどというのは
 不可能ですから、どうしても米国に頼らざるを得ないと思います。


 現在、沖縄を含めて「米国には出て行ってもらおう」という意見が強く
 なっていますが、こうなってくると沖縄に対する見方も変える必要がある
 でしょう。


 守屋元防衛事務次官が刊行した『「普天間」交渉秘録』の中では、沖縄県
 の対応に問題があった点が指摘されているとのことです。


 日本のマスコミは盲目的に沖縄の肩を持つような報道が目立ちますが、
 今後はもっと冷静に「防衛の観点」から沖縄を見る必要があると感じます。


 沖縄県も今までのように自分たちの意見は何でも通ると思うべきでは
 ないでしょう。そして日本政府は「沖縄に頼らない」という選択肢も
 持っていくことが大切だと思います。


 中国の状況を見ると、これまでのように悠長に沖縄県と付き合っている
 暇はないと私は感じています。


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 ▼ 日本はすでに負け犬の状態
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 内閣府は16日、中国の4~6月期の名目GDPが日本を上回ったとの
 試算を発表しました。


 それによると中国は1兆3369億ドルだったのに対して、日本は1兆
 2883億ドルだったということで、これについて米国の各メディアは一斉
 に速報し、今後は中国の存在感が一段と増すことなどを指摘しました。


 日本の名目GDPは95年に5.3兆ドルのピークを迎え、その後15年に
 わたって、ほぼフラット状態です。


 最近少し上昇傾向が見られますが、これは円高のためで実際には「ほぼ
 フラット」な状態に変わりはありません。


 対して中国の名目GDPは95年には1兆ドルにも満たなかったのに、
 この数年で特に急激に伸び、ついに日本を逆転しました。


 話は少し変わりますが、メディアの沖縄報道を鵜呑みにできないのと
 同様に、一流誌の報道だから間違いないという認識を改める事例を最近
 発見しました。


 2010年8月30日号のTIME誌には、珍しいほど「明白な間違い」が
 ありました。


 それは、米国・中国・日本の経済規模と経済成長率を比較している記事
 です。


 GDPによる経済規模では


 米国:14兆ドル
 中国:1.33兆ドル
 日本:1.28兆ドル
 
 そして経済成長率では


 米国:-2.4%
 日本:-5.2%
 中国:9.1%


 というグラフが掲載されていました。


 中国と日本の数値は四半期のもので、米国だけが1年間の数値になって
 います。


 これでは比較している意味が全くありません。さすがに米国でもGDP
 が日本の10倍以上ということは考えられません。


 こんな数字に気づかずにそのまま掲載してしまうとは、よほど不注意な
 人が記事を書いたのかも知れません。


 今回のニュースについて海外のメディアが積極的に報道しているのに
 対して、日本のマスコミからは「議論を深めていく」様な報道が見られ
 ません。


 対策の動きを見せない日本政府に、諦めムードの漂った国民、そんな
 印象さえ受けます。


 私はこんな日本を見ていて、まさに「尻尾を巻いて逃げる犬」を連想
 してしまいました。


 強い相手に立ち向かうことなく、「負け」を見ているかのようです。日本
 のマスコミはトップニュースで取り上げながらも、「まだ挽回できるから、
 がんばれ」という類のメッセージを発していませんでした。


 まだまだ挽回できる方法はいくらでもあるし、私はその方法を何度も
 提言しています。負けを認めてあきらめるのではなく、問題を解決し
 それを乗り越えていく姿勢を見せてほしいと思います。


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