大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON323「とんでもないことになっている日本~でも政治家・国民はやる気なし!?」

2010年8月6日

 2011年度予算
概算要求基準原案を議論
政府
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 ▼ 来年も同じことを繰り返す予算案/自ら成長戦略を作れない政治家
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 政府は27日午前の閣僚懇談会で、2011年度予算の概算要求基準原案に
 ついて議論しました。


 原案では公共事業や防衛費などの一般歳出に地方交付税交付金を加えた
 「歳出の大枠」を約71兆円以下に抑えることなどが盛り込まれていま
 したが、焦点となったのは社会保障費などを除いた予算の一律1割削減
 で、各省庁のこれまでの削減努力をより反映するよう、原案を微修正す
 る方向となりました。


 要するに、来年も民主党の「とんでもない予算」を継続するということ
 です。


 2兆円削減する、あるいは予算の一律1割削減などと言っていますが、
 これは民主党が自らのマニフェストを守り、自分たちが言うところの
 成長戦略を実現しようとしているだけです。


 こんな自分勝手な方針がまかり通るべきではないでしょう。もしこの
 削減案が実現できたとしても、民主党が主導する「無駄遣い」は承認
 されるでしょうから理不尽極まりないと思います。


 ただし、結局のところ予算の一律1割削減と言っても、役所が反対すれば
 その言い分が通ることになると私は思います。


 「成長戦略」なる方針が沢山出回っていますが、あれらは全て役人が
 書いた文章です。政治家自身が成長戦略を作ることが出来ず、役所から
 案を募集し、それをまとめて政治家が話しているに過ぎません。
 私に言わせれば、そんな政治家は「拡声政治家」です。


 これが民主党による「政治主導」の実態です。政治家自身では何も生み
 出せないという事実が浮き彫りになったと言えるでしょう。


 民間の委員を採用していましたが、民間の委員にしたところで、成長
 戦略をゼロから作り上げられる人は滅多にいません。


 実際、私は2つの役所で成長戦略の話をする機会がありましたが、発表
 された成長戦略には役所から出された案以上のものは何もありませんで
 した。


 政治家も民間も自分たちでは案すら作ることが出来ず、ゆえに結果として
 役所・役人の言いなりになってしまうという悲惨な状況になっていると
 私は見ています。


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 ▼ 頑なに変化をしない日本
   民主党の参院選惨敗は、増税問題だけに非ず
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 2010年8月2日号のTIME誌のカバーストーリーは、「日本は上昇する
 のに苦労している」様子を風刺的に描いていました。


 その主張は、なぜ日本という国は自らが変化することに対してそれほど
 抵抗するのか?という点にあります。キャメロン首相が主導する英国と
 は対照的に、何も動かず変化をしない日本の謎。


 日本の将来に対する不安、それぞれの問題についても言及がありました。
 昨年の日本の実質GDPは5.2%減っており、累積債務は対GDP比で
 193%にも達しています。


 なぜ、こうした数字から見えるように将来の問題が明白になっているに
 も関わらず、日本は変化をしようとしないのか?と指摘します。


 TIME誌では、貧困レベル以下で生活している日本人の割合が15.7%に達し
 ている点も指摘していますが、私はこの点はそれほど大きな数字ではない
 と見ています。


 貧困レベル以下(1万3000ドル以下)の定義に当てはまる人も、日本の場合
 には米国に比べて親元で暮らしている人も多く、ホームレスなどの社会不安
 要因にはならないと思うからです。


 こうしたTIME誌の指摘は、他人に言われるまでもなく、十分に分かって
 いることです。それにも関わらず、日本は国民もマスコミも変化に対して
 「NO」と言うのです。


 かつての日本は違いました。日本は「変化」をしてきたからこそ、今のような
 立場になれたのだと私は思います。


 例えば、石油ショックの際、日本は世界のどの国よりも「石油ショック」に
 対応し、自ら変化を成し遂げた国でした。


 原油頼りにならいように、備蓄を進め、中東への依存を減らし、さらには
 原子力エネルギーの開発にも力を入れました。当時を振り返ると、圧倒的な
 「危機感」があったのだと感じます。危機感を持ったときには日本の動きは
 相当に早いと思います。


 その点、今の日本には「危機感」が欠如しているのでしょう。これは長い間、
 自民党によるばら撒きを受け続けた結果、国民が文句を言わずに耐えて待ち
 続けるという習性を身につけてしまったのだと思います。


 そんな日本を変えてくれるかと期待が高かった民主党ですが、すでに散々な
 状態になっています。参院選での民主党の敗北は、菅首相の増税発言の影響だ
 と言われているようですが、私は違うと思います。


 増税問題だけが影響しているのではなく、8ヶ月に及ぶ民主党政権を見て、
 首相を見てきて、国民は民主党そのものに嫌気が差してしまったのだと私は
 思います。


 消費税の問題にしても、当初は自民党が主張していた10%に上手に便乗しました。
 ここまでは良かったと思います。


 しかし、批判を浴びせられたときに毅然とした態度で臨むべきだったのに、
 菅首相は曖昧な態度をとりました。年収400万円以下の人は消費税を免除する
 などという非現実的な話を持ち出す始末でした。


 結局、このような民主党のいい加減な態度に対して、国民がネガティブな
 票を投じたために、参院選の惨敗につながったのだと思います。


 「自分たちが選んだ民主党はこんな政党ではなかった」、「福島みずほ氏
 や亀井静香氏に振り回されて、民主党はどうしてしまったのか」という
 のが有権者の本音だと私は感じています


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