欧州経済
財政再建による景気失速を否定
ECBトリシェ総裁
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▼ 日経ビジネスでようやく取り上げられた日本経済の実態
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欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は9日、「歳出削減が成長を阻害
するとの考えにはまったく賛同できない」と述べました。
ユーロ圏16カ国が財政再建を進めれば、景気が失速しかねないとの
批判がユーロ圏外にあることを踏まえ、財政赤字を圧縮することの
正当性を強調したとのことです。
財政再建が持続的成長につながる、というトリシェ総裁の主張は、私に
言わせれば「教科書通り」のことで驚くことではありません。日本経済
の実態や日本国債のあるべき姿について私がこれまでに様々なメディア
で述べてきた見解も同じです。
これまで日本の新聞や雑誌などで私が主張するような内容をまともに
取り上げるものはありませんでしたが、ようやく現れました。7月12日号
の日経ビジネスのカバーストーリーには「日本倒産」という大きな見出し
がついています。
「日本倒産の危機」「消費税率は30%」などがテーマとして取り上げら
れています。また財政危機で炎上している国を見てみると、累積債務が
高く財政赤字が大きいという特徴があり、日本は危険なゾーンに入って
いると指摘しています。
財政危機は「積み木倒し」のように世界に広がっていくという主張も、
私のものと同一です。
ドバイショックに端を発する欧州のソブリンリスク問題は、ギリシャ
からスペインへと波及し、最後には日本にまで影響が及ぶ、ということ
を私は何度も述べてきました。これはかつてのアジア危機が、タイ、
インドネシア、マレーシア、さらには韓国からロシアにまで波及して
いったのと非常によく似ています。
今回の日経ビジネスを読むと、私が主張してきた内容が一連のストーリー
としてまとめられていたという印象です。ようやく日経ビジネスのよう
な雑誌が、まともな内容を掲載してくれたと感じます。
ただし、いまだに全国紙やNHKニュースなどを見ても、こうした世界
経済の流れや日本経済の実態について「まとも」な内容を主張している
ものは少ないと言えます。中には「国債のメルトダウンは嘘だ」と未だ
に主張する雑誌もあり、何が事実なのか国民は慎重に見極めなければ
いけません。
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▼ 野党の頃の方が正論を述べていた民主党
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また日経ビジネスでは「日本国債のバブルがいつはじけてしまうのか?」
という点も、取り上げられていました。
基本的に日本国債は外国人が保有している割合は少ないのですが、
それでも今年の3月末で31兆円程度はあります。
もし日本国債がデフォルトするという見通しがたてば、外国人に空売り
されるだけでも日本国債のバブルははじけてしまいます。
まだ日本国債の買い手がいると安心している人もいるようですが、最近
は買い手が躊躇し始めているようですから注意すべきでしょう。
財政再建こそ重要だという主張に対して、菅首相は先日のG20で「財政
再建も景気刺激も両方やります」と述べていました。
私は理解に苦しみます。このような菅首相の態度に対して日経ビジネス
でも疑問を投げかけていました。
「三兎を追う者は」というタイトルで、菅首相が主張するような「強い
経済」「強い財政」「強い社会保障」は実現可能なのか?という点に言及
しています。
率直に言えば、このようなことが実現できるわけがありません。これら
3つを同時に実現するなど、世界を見渡しても例はありません。
なぜ菅首相が平然と主張できるのか、私には全くわかりません。
こういう議論をするなら、例えば北欧の国のように「租税負担率を50%
に上げる」代わりに「強い社会保障」を提供するのか?という点を考え
るべきです。
租税負担率50%というのは非常に高い割合ですが、その代わり預貯金を
していなくても全部国が面倒をみるという体制を作りあげるのです。
そこまで実行するのか否か?を議論するべきです。
こうした議論を全くしないままに「強い経済」「強い財政」「強い社会
保障」などと発言している菅首相を見ていると、今の民主党の無責任さ
を感じます。
かつて民主党が野党だった頃、年金問題について長妻厚生労働大臣は
「失われた年金データベース」の追求をしていました。しかし自分が
与党になった途端、この追求をやめてしまいました。
この理由は非常に簡単で、そもそも年金データベースのデータには不足
があって、追求することなど不可能だからです。社会保険庁の役人が
ポケットに入れてしまったもの、ミスのためにそもそも入力されていない
もの、こうしたデータが沢山あるはずです。
菅首相や長妻厚生労働大臣を見ていると、民主党は野党の頃の方が正論
を言っていたと感じます。非常に残念でなりません。