大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON304 合従連衡の時代突入した世界の自動車業界~日産や三菱自動車が生き残る道は!?

2010年3月26日

 日産自動車
ルノー、ダイムラーの提携交渉に参加も
中国自動車大手 浙江吉利控股集団
英マンガニーズを買収
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 ▼ 世界の自動車業界は、合従連衡の時代へ
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 日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は
16日、自身が会長を兼務する仏ルノーが、独ダイムラーと資本提携
交渉をしているとの一部報道について「多くの潜在的なパートナー
と話し合いをしているが、決まった事実はない」と語り、提携の
可能性に含みを持たせています。


 これについては日本だけでなくドイツでも報じられていますから、
 全くの事実無根ということはないだろうと私は見ています。日産は
 日本と米国、ダイムラーは中南米と欧州、そしてルノーはルーマニア
 を中心に東欧などに対してそれぞれ強みを持っています。


 しかし、これだけでは世界の自動車市場の中でカバーできていない
 領域がまだまだ残っています。そして世界の自動車メーカーのいず
 れを見ても、全世界的に市場をカバーするには不十分という状況で
 あり、今後はさらに業界の流動化が促進されると思います。


 2008年の主要自動車メーカーの販売台数概算を見ると、
 1位:トヨタ897万台
 2位:ゼネラル・モーターズ(GM)836万台
 3位:フォルクスワーゲン(VW)623万台
 4位:フォード540万台
 5位:現代415万台
 6位:ホンダ378万台となっています。


※「主要自動車メーカーの販売台数概算と協力関係」チャートを見る


 フォルクスワーゲンによるスズキの100%買収が成立すればトップ
 グループで安泰というところですが、まだ成立していません。


 ですから、もし日産(371万台)・ルノー(238万台)・ダイムラー
 (207万台)が手を組めば、3社連合で816万台となり、一気に
 業界3位に躍り出ることが可能です。


 世界の自動車業界の特徴として押さえておくべき点は、非常に流動
 化が激しくなってきているということです。


 ハイブリッドやクリーン・ディーゼルエンジンなどの技術革新も
 著しく、かつ新興国のウエイトが大きくなってきています。


 そのため、どこの企業であっても最早1社のみで対応できる時代で
 はなくなりつつあります。今後、世界の自動車業界において激しい
 合従連衡が相次ぐことは避けられないと私は思います。


 私の見込みでは、かつて英国のローバーに手を出して痛い目にあった
 ホンダや現代は今のまま1社戦略をとるでしょう。逆に、日産、
 ルノー、スズキ、ダイムラー、さらにはクライスラーと組んだ
 フィアットなども含め、5~6社はかなり流動化する可能性が高いと
 思います。


 これらの企業の中で、後は順列組み合わせで、どの企業同士が手を
 結ぶ事になるのか注目していきたいところです


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 ▼ 海外展開を見せる中国勢、三菱自動車が生き残る道は?
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 こうした世界の自動車業界の情勢下において、中国勢は積極的な
 海外展開を進める動きを見せています。中国自動車大手、浙江吉利
 控股集団は英国名物の「ロンドンタクシー」の製造会社を傘下に持
 つ英マンガニーズ・ブロンズ・ホールディングス(MBH)の経営権
 を、18日取得しました。


 吉利は米フォード・モーターから高級車ブランド「ボルボ」
 (スウェーデン)を買収する交渉を進めており、海外での相次ぐ
 買収でブランドイメージ向上と事業拡大を目指す考えのようです。


 しかし、率直にいって「目的・意味」が見出せない買収だと私は
 感じてしまいます。ロンドンの古いタクシー会社を買収して、どれ
 だけの買収効果があるのか、ブランドイメージの向上につながるのか、
 甚だ疑問です。


 80年代のバブル期、三菱地所がロックフェラーセンターを買収して
 話題になったことがありました。当時の日本企業と同じで、今回の
 買収は「買えるから(お金があるから)買っただけ」というのが
 本音だと思います。そういう意味では、単なる話題を提供しただけ
 と見るべきでしょう。


 日本勢の中で特に難しい立場に立たされているのが、三菱自動車です。


 今月初め、三菱自動車と仏プジョー・シトロエングループは業務提
 携を拡大する方針を確認し合ったものの、注目されていた資本提携
 は「現実的でない」と見送りを決めています。


 三菱自動車は2000年のリコール隠し問題以来、業績が悪化、財務
 状況は脆弱です。


 そのため、三菱東京UFJ銀行や三菱商事、三菱重工業など三菱
 グループが支援した結果、グループ各社が総額4000億円以上の優先
 株を保有していますが、これを処理することは難しく、三菱グルー
 プとしても現状では「打つ手がない」という状況でしょう。


 私はロシアの企業に買収してもらうのが良いと考えてきましたが、
 中国勢も盛んな動きを見せており、今後大きな動きがあるでしょう。


 世界の自動車業界の流動化で、三菱自動車が生き残る策をどのよう
 に見出していくのか注目していきたいと思います。


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