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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON294 民主党長期政権に向けた布石~田中角栄の染色体を受け継ぐ小沢一郎という存在

2010年1月15日

 民主・小沢幹事長
 「小沢査定」に業界団体動揺
 参院選で自民候補の擁立を見直し
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 ▼ 参院選で自民候補の擁立を見直し
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 ●小沢幹事長の目的は、自民党からの利権を奪うこと、ただそれだけだ


 民主党の小沢一郎幹事長が陳情の扱いや予算の重点要望の主導権を
 一手に握ったことで、これまで自民党を支持してきた業界団体の動揺が
 広がっています。


 民主党は今夏の参院選での各団体の民主党への距離感を基に、団体から
 の要望へ露骨に差をつけ、自民党寄りとみなされた団体には予算を削減
 したり、関係閣僚との接触を認めていません。


 全国土地改良事業団体連合会の野中広務会長は21日、自民党本部で
 記者団に「予算の確保を最優先する。1議席よりも農民の生活が大事だ」
 と、今年夏の参院選で自民党から組織内候補を擁立する従来の方針を
 見直す考えを示しました。


 小沢幹事長の一連の行動は、これまで自民党が独占してきたあらゆる
 利権を全て民主党に移してしまうという、ただこの1点にのみ目的が
 あります。


 利権の多くは田中角栄元首相が作り上げ、脈々と自民党に受け継がれて
 きたものです。例えば、中国利権なら竹下派、台湾利権・北朝鮮利権
 などは竹下派の中でも金丸元副総裁が受け継いできた流れがあります。
 そしてそのままの流れで、未だに自民党に残っているものが多くあります。
 この点について民主党の力は弱い状況でした。


 小沢幹事長は、この状況を揺さぶりにかかっています。台湾ロビーと
 称される台湾政府と連携している日米の政治家グループがあります。


 これまで自民党と民主党の共同の議員団で構成されていたのに、
 小沢幹事長は、今後民主党だけで構成するという方針を示しています。
 これも明らかに台湾利権を狙ったものだと思います。


 昨年12月、小沢幹事長が民主党の議員約140人を含む、総勢約600人
 を率いて中国を訪問しています。この行為も、中国利権を根こそぎ
 自民党から引き剥がしにかかっている顕著な例でしょう。


 移設問題で話題になっている普天間基地や、辺野古基地などは米国の
 利権が絡んでいます。これも田中角栄元首相が作り上げたもので、
 それを金丸信氏が方程式として完成させたという歴史があります。


 おそらく何らかの工事が発生すると、多少の金額が議員に配分される
 ようになっているのだと思います。


 こうした米国の利権については、しばらく寝かしつけておいて一度話を
 白紙に戻す方が得策だと小沢幹事長は考えているかも知れません。


 これまで利権に関係してきた自民党議員の人たちとの関係を一度反古に
 してゼロに戻してしまえば、新たに民主党議員主体で利権関係者を
 まとめていくことは容易だからです。


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 ▼ 小沢幹事長の本質は、田中角栄氏の染色体にある
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 中国利権・台湾利権・北朝鮮利権といったアジアの利権、そして米国
 利権について、今小沢幹事長は強烈に揺さぶりをかけています。


 これらの利権を自民党から民主党に移すことで民主党による長期政権が
 可能だと考えているのでしょう。


 こうした小沢幹事長の動きを見ていると、つくづく田中角栄元首相の
 染色体が入っている人なのだと感じます。そういう目で見れば、小沢幹
 事長の行動は非常にわかりやすいと言えるでしょう。


 自民党の利権を根絶する、それが難しいなら予算の理由で案そのものを
 つぶしてしまう、という単純なことを徹底的に繰り返しているだけです。


 ですから、小沢査定には当然のことながら相当な「意図」が含まれて
 います。業界団体にしても民主党に従わない限りは予算もつかないし、
 陳情も受け付けないという話になることは間違いと思います。


 今、参議院選挙を前にして自民党の参議院議員が次々と離党を表明して
 います。参議院議員の中には業界団体の代表を務める人も多くいますから、
 このままの状況だと「やっていけない」というのが本音だと思います。


 小沢幹事長とはこういう行動原理に基づく人なのだと認識するべきで
 しょう。私に言わせれば、民主党の幹事長という立場にある人ですが、
 小沢幹事長は日本という国の将来像などは全く考えていない人だと思い
 ます。


 そして、そういう人が幹事長をやっているから小沢氏と意見の合わない
 となると、藤井氏のようにすぐに大臣を辞めさせられるという事態に
 なってしまうのです。


 自民党による安定政権が長期間継続できたのは、日本的な利権構造を
 抑えたからであり、それこそが重要なのだ、これが小沢幹事長の価値観
 なのでしょう。


 田中角栄元首相は、そういう意味で天才的な人でした。民主党としては、
 こうした旧来的な価値観を持つ人間を幹事長という重要な役割を担わせ
 ることについて、今一度再考してもらいたいと私は思っています。


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