日本経済
7-9月期GDP 前期比1.2%増
日本国債
格付け見直しを示唆
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▼ 政府主導の景気対策では効果は期待できない
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内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値は、
物価変動の影響を除いた実質で前期比1.2%増、年率換算では
4.8%増となりました。
またこのような中、政府は20日発表した11月の月例経済報告で、
日本経済は物価が長期的に下落するデフレーションに陥ったと宣言
しています。
日本経済がデフレーションに陥ったと聞いても、私は何とも不自然な
印象を受けてしまいます。というのは、そもそも日本経済は2001年に
デフレに陥ってから正式には「デフレ脱却」していないからです。
明確な「デフレ脱却宣言」がないまま、何となく好景気になったと
思ったら再びデフレに陥ってしまった、というのが現在の状況でしょう。
私としては、日本経済は「デフレに陥った」というよりも「長期低迷
している」と言ってもらった方が実態に即した表現だと思います。
99年からの10年間の日本の実質GDPの推移を見ても、一時期600兆円に
届く勢いを見せていたものの、結局500兆円強に留まっていて、
その成長率はごく僅かです。
※「日本の実質GDP」チャートを見る
また7~9月期のGDPが1.2%増とは言っても、それは輸出や設備投資が
上向いた結果で、「民間最終消費支出」はほとんど変化していません。
この10年間の項目別のGDP実質成長率を見ても、民間最終消費支出は
「ずっと横ばい」になっていることが分かります。
※「項目別のGDP実質成長率」チャートを見る
モノの値段が安くなるというのは一人の消費者としてはありがたい
と感じることですが、今後の日本経済にとって本当に良いことなの
か?という点は考えるべきでしょう。
貯蓄だけが増え続けるのではなく、日本経済の成長を促す、例えば
住宅関連の支出などが増えるような施策を打つべきだと私は思います。
政府も「住宅版エコポイント制度」の検討などを始めているようで
すが、一体、誰がわずかなエコポイントのために、数百万円規模の
住宅の建て替えをしようと思うのでしょうか?私には全く理解できません。
大切なのは、もっと経済のパイを大きくするという目的を明確に
持って、消費者のお金が市場に出てくるように仕向けることです。
この方法はいくつも考えられます。住宅の建て替えをした人を対象
に相続税を免除するというのも1つです。子供に資産を残せるわけ
ですから大きな需要があるでしょう。子供がいないというのであれば、
贈与税を免除しても良いと思います。
政府が予算を組んで国が主導で景気対策をしても全く効果はありま
せん。ですから、今民主党が実行していることは全て的外れです。
このようなことを続けていると、いずれは市場から制裁を受けるこ
とになると私は見ています。
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▼ このまま行けば、民主党はマーケットから制裁を受ける
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私が言うところの「市場からの制裁」とは、具体的に言うと「日本
国債暴落」です。実はこの兆候がすでに見え始めています。
英米系格付け会社フィッチ・レーティングスのソブリン部門統括
責任者、デイビッド・ライリー氏は日本経済新聞に対し、来年度の
国債発行額が、新政権がめどとする44兆円を大幅に上回った場合、
「中長期的な財政安定への取り組み不足が浮き彫りになる」との
認識を示しています。
国債が暴落してく方法というのはいくつかありますが、代表的なものの
1つが格付け機関による評価が著しく低下したことを契機とするものです。
もし今後、日本国債の格付けが「BB」を下回るようなことがあれば、
一気に日本国債が暴落する可能性も十分にあるでしょう。
そのときになって焦ってもおそらく止めることはできません。
さすがに対GDP比約200%の累積負債というのは、実績の数値として
悪すぎるからです。
この負債は次の世代の人たちが背負っているわけですが、彼らに
しても快く「支払います」とは言わないはずです。
現在の日本経済は「裸の王様」と同じ状況だと私は思っています。
誰かが「おかしい!こんな借金は、次の世代が支払うはずないだろう」
ということを声高に叫んだ瞬間、突然崩壊し始める可能性があります。
実際、格付け機関あるいはトレーダーの集団心理のどちらを契機と
してマーケットが反応するのかは分かりません。しかし、確実に
国債暴落という形でマーケットから制裁を受けることになると思います。
相変わらず民主党は「(自民党のやったことと民主党がやりたいこと
を合わせる)足し算の政策」を進めていて、「あれもこれも」と巨大
な予算を組むばかりです。このままでは全く効果は期待できないで
しょう。
私は色々なところでこの問題点について語っているのですが、一向
に民主党の耳には届いていないようです。
いつかマーケットから制裁を受ける日が来るでしょうが、これは
民主党にとっても脅威です。相手が政治家なら交渉可能でしょうが、
相手がマーケットではそうはいかないからです。
何とかそのような「取り返しのつかない」事態になる前に民主党に
は気づいて欲しいと思っていますが、今の民主党を見ていると、
一度民主党としては「冷や水を浴びなければ」気づかないのかも知れ
ないと感じてしまいます。