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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON288 思慮に欠ける民主党~“KY”なパフォーマンスに飽き飽き~大前研一ニュースの視点~

2009年11月20日

 民主党 鳩山首相 資産報告訂正で陳謝
 事業仕分け作業開始 事業の是非を公開で判定
 国の借金が、864兆5225億円
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 ▼ 鳩山首相も小沢幹事長も非常識
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11日、鳩山首相は、過去7年分の資産報告書を訂正したことに対して
「やはり、恵まれた家庭に育ったものですから。そのことに関して、
 自分自身の資産管理が極めてずさんであった」と説明し陳謝しました。


 また民主党の小沢幹事長は、10日和歌山県高野町の高野山・金剛峯寺
 を訪ね、102の宗教団体が加盟する「全日本仏教会」会長の松長有慶・
 高野山真言宗管長と会談しました。会談後、「キリスト教もイスラム教
 も排他的だ」などと述べたことを明らかにしています。


 鳩山首相の発言を聞いて、何という常識知らずなのかと感じたのは、
 さすがに私だけではないでしょう。


 国会で鳩山首相は当初「数百万程度ではないか」と述べていましたが、
 実際には1桁多い「5千万円」だったわけです。「恵まれた家庭に
 育ったから、桁を1桁間違えました」などという言い訳を私も
 言ってみたい、と皮肉の1つでも言いたくなってしまいます。


 また、小沢幹事長の発言にも私は驚きました。仏教界の票が欲しい
 という目論見があったのだと思います。


 それなら、素直に「仏教はすばらしいと思う。ぜひがんばって欲しい、
 私もできることは協力します」とだけ言っていれば何ら問題は
 なかったはずです。


 わざわざキリスト教やイスラム教について、意見を述べる必要は
 全くなかったと思います。自身の発言が国際社会でどのように認識
 されるかとの配慮が欠如し、外交センスのかけらも持ち合わせて
 いない、ということを完全に露呈したと言えるでしょう。


 小沢幹事長の発言は、すでに英訳されて世界中に配信されてしまい
 ました。今後、想像以上の大きなネガティブな反応が寄せられる
 可能性も大いにあると私は思います。


 かつて文藝春秋が発行していた雑誌『マルコポーロ』が、ホロコースト
 を否定する記事を掲載したことを契機に、結局廃刊にまで追い込まれた
 ことがあります。


 小沢幹事長の今回の発言も海外で大きく取り上げられてしまうと、
 大きな問題に発展するかも知れません。


 日本の政治界で力を持つためには、麻生前首相・福田元首相、そし
 て鳩山首相のように「家柄」が極めて優れているか、あるいはかつ
 ての田中角栄氏、今の小沢幹事長のように「お金」を持っているか、
 という2つが大きな要因になっていると思います。


 残念なことに、国際的に評価されているどうか、あるいは、国民か
 ら支持を受けるようなビジョンや構想を示せるかどうか、というこ
 とはほとんど関係していません。


 せっかく民主党政権になっても、鳩山首相や小沢幹事長がトップに
 君臨し、「家柄」と「お金」にモノを言わせているようでは先が思い
 やられます。自分たちが非常識で国際感覚がないという事実を見つ
 めなおしてもらいたいところです。


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 ▼ 経済センスも行政センスもない民主党
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 10日財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」
 の総額が9月末時点で864兆5226億円に達したと発表しました。


 6月末に比べ4兆2669億円増え、過去最大額を更新。10月1日時
 点の推計人口の1億2756万人で計算すると、1人あたりの借金は
 約678万円となっています。


 日本のGDPは約500兆円ですから、まさに返済する予定の立たな
 い借金が増え続けているという状況です。


 民主党政権は国債発行によってさらに国の借金を増やそうとして
 おり、理解に苦しみます。日本は米国ほど財政問題が深刻ではない
 と思っている人も少なくないのかも知れませんが、実際はかなり
 危うい橋を渡っていると私は感じます。


 先日債券市場では、新発10年物国債利回りが1.475%まで上昇し、
 約4カ月半ぶりの高い水準になりました。これは日本国債への信用
 度が低下した当然の結果だと私は思いますが、ここに来て利回りが
 1.34%まで一気に下落する様相を呈しています。


 おそらく、「民主党も一時的に調子が悪いけれど、事業仕分けを通じ
 て経費削減計画もあるようだし、持ち直すのではないか」という浅
 はかな見解をマーケットの参加者が抱いているのでしょう。


 この考え方は単純すぎて危険だと私は思います。こんな楽観的な
 思考をしていると、いずれ日本国債はデフォルトしてしまいます。
 そして、日本はかつてのニュージーランド、ロシア、アルゼンチン
 の二の舞になる可能性すらあります。


 こうした経済危機のリスクに対する感覚も、民主党政権の動向を
 見ている限り、大きく世界標準の常識的な範囲から逸脱していると
 感じます。


 また、政府の行政刷新会議のワーキンググループは11日、事業の
 是非を公開で判定する「事業仕分け」の作業を開始したそうです。
 概算要求段階で過去最大の約95兆円となった2010年度予算の無駄
 遣いを洗い出し、歳出の削減を目指すとのことですが、私に言わせ
 れば「このワーキンググループの作業自体がムダ」なことであり、
 全く問題の本質が理解できていません。


 結局、1つ1つの細かい事象を取り上げては「賛成だ」「反対だ」と
 言い合っているだけだからです。今の行政の本質的な問題の1つは、
 「省庁縦割り・都道府県バラバラ」で意思統一がないために多くの
 「ムダ」が発生していることだと私は思います。


 だから例えば、道路の問題について「農業関連の道路と国交省関連
 の道路を全部くっつけたら、どのくらいの効果があるか?」という
 議論なら価値はあるでしょう。


 目に付いたものから1つ1つ個別に見て対応しても、その効果は
 限られています。そうではなく、予算そのものをゼロベースで作り直して、
 本当に必要なものかどうかを見極めることが重要です。
 民主党政権が考えるべきは、この点だと思います。


 船出したばかりの民主党政権ですが、率直に言えば、前途多難です。
 もっと頭を使って考えてほしいと私は感じます。そして、民主党の
 トップである鳩山首相・小沢幹事長は、世界の常識から自分たちは
 大きくズレているということを強く認識するべきでしょう。


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