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KON981「任天堂/セガサミーHD/エムスリー/楽天グループ」

2023年5月8日 エムスリー セガサミーHD 任天堂 楽天グループ

本文の内容
  • 任天堂 宮本氏「キャラはタレント」
  • セガサミーHD ロビオ・エンターテイメントを買収
  • エムスリー カナダ・スクリベンディを買収
  • 楽天グループ 楽天銀行が東証プライム上場

・任天堂 宮本氏「キャラはタレント
「ディズニーを超える勢いに期待」

日経新聞は21日「任天堂、キャラはタレント」と題する記事を掲載しました。任天堂のスーパーマリオを題材とした映画が5日、米国など海外で公開され、アニメ映画の公開初期の収入として過去最高を更新しました。任天堂は長らくゲーム事業の一本柱でしたが、宮本茂代表取締役フェローは、自社をタレント事務所と表現し「多様なIP(知的所有権)、知的財産の活用で成長を目指す」としています。

宮本茂氏はスーパーマリオやドンキーコングなど、様々なヒットゲームを生み出した方ですが、課長になるのも嫌がるほどに出世欲がない方だそうです。スーパーフェローという今の役割はご自身に合っているのではないでしょうか。

自らが産み、育ててきたマリオやドンキーコングなどのキャラクターが任天堂の強みであり、彼らをタレント事務所のように活用することで、売り上げを2倍、3倍にしていくといのが今回の趣旨です。地域別の売上高を見ても、欧州や米大陸で日本国内を上回る売上を出しており、グローバルで十分に通用するキャラクターを抱えていると言えるでしょう。

とはいえ、現時点の任天堂のカテゴリー別売上を見てみると、ゲームが1兆6000億円以上あるのに対して、IP関連の売上はスマートデバイス関連と合わせても500億円強で、増加傾向にあるものの規模としてはまだまだ大きな差があります。その中で、スーパーマリオの映画がアナ雪を上回る大ヒットを達成したことは、今後の成長戦略を占ううえで心強い実績になったと推察します。ご本人もここまでの大ヒットには驚いているのではないでしょうか。映画への貸し出し、ユニバーサルスタジオのような施設とのコラボレーションなどで、キャラクタービジネスの企業としてディズニーに迫り追い抜くという気概を感じました。


・セガサミーHD ロビオ・エンターテイメントを買収
「2匹のキャラクターに1000億円の価値」

セガサミーホールディングスは17日、モバイルゲーム『アングリーバード』を手がけるフィンランドのロビオ・エンターテイメントを買収すると発表しました。セガサミーは既存IP、知的財産のグローバルブランド化を進めており、ロビオの買収によりスマホゲームの開発ノウハウや、IP展開の相乗効果を見込むとのことです。

任天堂と同様、ゲームの会社がタレント事務所のようなビジネスを強化する動きです。アングリーバードは世界で50億ダウンロードを達成している有名なゲームです。キャラクターとしても、一目で認識できる個性を持っており、今後活用するにあたって使い勝手がいいと思われます。1000億円を投資して、有望なタレントが2匹増えたと言えるでしょう。


・エムスリー カナダ・スクリベンディを買収
「専門性を強化する価値のある買収」

医療情報サイトを手がけるエムスリーは、研究論文の校正プラットフォームを運営するカナダのスクリベンディを買収したと発表しました。スクリベンディは独自に開発した自然言語処理AIを活用し、文法修正の自動化など、作業時間の大幅短縮を実現しているとのことで、買収によりエムスリーは世界の顧客基盤を取り込む考えです。

医療業界では、医薬情報担当者(MR)などが売り込みに行く中で、学会で発表するための論文を書いて欲しいと学者に依頼されることが多々あります。とはいえ、その論文が世界で認められるクオリティを有しているかどうかは、MRもchatGPTも判断できません。そこで、高い専門性を有するスクリベンディに白羽の矢が立ちました。

買収価格は非公開ですが、かなり高額だったと推測します。ですが、学者側からのニーズに高いクオリティで応えられるうえ、開発が成功した時にはその成果が国際舞台で注目されるきっかけにもなり、世界に認められやすくなるというメリットもあります。価値のある買収だったと評価します。


・楽天グループ 楽天銀行が東証プライム上場
「モバイル事業の赤字には焼け石に水」

楽天グループ子会社でインターネット専業の楽天銀行が21日、東証プライムに上場しました。初値は公開価格を33%上回る1856円。これに伴い、楽天グループは一部の株式を売却し、717億円を調達する見通しです。

上場したこと自体は祝福したいところですが、楽天グループにはそれ以上の問題があります。717億円を調達したところで、楽天グループはモバイル事業で単年4000億円以上の赤字を出しているため、一年分の赤字補填にすらならないのです。インターネットサービス事業やフィンテック事業の利益も1000億円弱なので、モバイル事業の赤字を垂れ流しているのが現状です。

しかも楽天モバイルは繋がるエリアが少ないということで、ユーザーからの評判も良くありません。早く繋がりやすい周波数帯であるプラチナバンドを割り当ててもらって、モバイル事業の赤字を止めないと、楽天銀行がいくつあっても足りないくらい状況はひっ迫しています。


---この記事は2023年4月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

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