大前研一「ニュースの視点」Blog

KON977「AI活用/ChatGPT/米グーグル/台湾TSMC~AIに奪われる職業は必要な技能と法律で決まる」

2023年4月10日 AI ChatGPT 台湾TSMC 米グーグル

本文の内容
  • AI活用 AIの影響を最も受ける職業TOP20が判明
  • ChatGPT 大規模言語モデル「GPT-4」発表
  • 米グーグル 「Bard」試験版を一般公開
  • 台湾TSMC 半導体「2ナノ」本格

AI活用 AIの影響を最も受ける職業TOP20が判明
AIに奪われる職業は必要な技能と法律で決まる


情報雑誌penは、先日14日「教師が危険、人工知能(AI)の影響を最も受ける職業TOP20が判明」と題する記事を掲載しました。

AIが持つ52のスキルと人間の技能を関連付け、800以上の職業について受ける影響の大きさを調べたところ、テレマーケターや教師が上位となりました。調査を行った研究者らは、「AIに仕事を奪われるということではなく、一部の職務をサポートする役割も含まれる」としています。記事を詳しく見ると、TOP20のうち14が様々な教科の教師で占められています。先に生まれたことや知識があること、指導要領に従えることなどが意味を持たなくなるという、大々的に発表すると大騒ぎになるようなニュースです。
とはいえ、社会制度を鑑みれば、まだ「消える職業」を特定するのは時期尚早だと考えます。というのも、法律で守られている職業が存在するからです。

例えば薬剤師は、現在一人で扱える処方箋の数が1日40枚までと定められています。これが80枚になれば、すぐにでも薬剤師を半分に減らせてしまうということです。弁護士も日本では弁護士法72条によって、報酬を得る目的の法律事務を独占できていますが、国によってはもうAIが法律相談を担っているところもあります。ランキングに登場していなくても、実は首の皮一枚でしか繋がっていない職業というのも沢山存在しています。


ChatGPT 大規模言語モデル「GPT-4」発表
AIの進歩は民主主義を破壊し得る


米国のオープンAIは先月14日、大規模言語モデルGPT4を発表しました。一方、米国の非営利団体フーチャー・オブ・ライフ・インスティテュートは22日、高度なAIの出現で、人類が文明を制御できなくなる恐れがあるなどとして、「巨大なAI実験を一時停止せよ」とした署名活動を開始しました。

役人と政治家では、これだけのスピードで革命的な進歩を続けるAIの是非を判断できません。規制するかどうかは専門の識者に任せるしかないでしょう。イーロン・マスクは当初オープンAIに投資していましたが、営利に舵を切ったことを理由に投資を辞めました。それだけ危険な技術ではあります。AIを活用して銀行を騙すなど詐欺に使われたり、戦争に応用されたりする恐れもありますが、私が一番危惧しているのは選挙に悪用されることです。

かつてトランプ氏は、ケンブリッジ・アナリティカという選挙必勝請負会社を活用し、対抗馬であるヒラリー・クリントンの悪口をばらまいたことも一因となり、大統領の座を勝ち取りました。情報操作で有権者を騙すことが、選挙で有利に働いてしまうのです。ただでさえ嘘つきが跋扈し、政治を任せたい清廉な人物は出馬を敬遠するのが日本の政界と選挙制度です。ガーシー氏のような人物が28万票を集めて当選してしまうような国です。このうえ悪人がAIで嘘をばらまき、有権者を騙してライバルを蹴落として当選するようなことが可能になれば、立法府が機能不全を起こして民主主義が破壊されます。AIが民主主義の敵として機能してしまうことこそ、まず警戒すべき脅威です。


米グーグル 「Bard」試験版を一般公開
AI分野でグーグルは大苦戦


米国のグーグルは先月21日、対話型AIサービス「Bard」の試験版の一般公開を米国と英国で開始しました。

グーグルは2月にBardの開発を発表し、これまで社員など限られた範囲で試験を重ねてきましたが、一般にも利用を広げるとのことです。マイクロソフト社がオープンAIに巨額の投資をして、ChatGPTを自社の検索エンジンであるBingに組み込みました。グーグルも検索サービスの現王者として、AIを取り入れるべくBardを開発しましたが、かなり苦戦している状況です。Bardは「自信満々に間違うことがあります」と、ユニークな注意書きが公式に出されるほどに精度が低く、地域によっては既に公開を中止してしまっています。現状ではChatGPTの方が広く受け入れられており、Bardの活用は目途が立っていないと言わざるを得ません。


台湾TSMC 半導体「2ナノ」本格
日本は素材や部品で勝負するしかない


台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が2ナノ品と呼ばれる最先端半導体の新工場の建設を本格化させています。

1工場あたりの投資額およそ2兆円。これを本社のある新竹市に4カ所建設する計画で、2025年の量産開始へむけ急ピッチで建設が進んでいるとのことです。TSMCは台湾で、韓国のサムスンは韓国で、何兆円も投資して生産しようという方向性が明確になってきました。日本にはそこまで勢いと余力がある会社がなく、微細構造の半導体については、これからも両国に大きな差をつけられてしまいそうです。

米国は補助金を出して半導体工場を誘致しようとしていますが、中心となれる人材が不足しているため難航しています。韓国でもサムスンが20年間で31兆円を投じて半導体の新拠点を建設することが発表されました。まさに桁違いの投資額です。とはいえ、素材や検査機械、製造機械などは日本とオランダに頼るものも多く、尹大統領も来日時に「日本の素材、部品、設備企業を誘致したい」と発言しています。




---※この記事は2023年4月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はAIやChatGPTのニュースを大前が解説しました。
大前は、「AIに奪われる職業は必要な技能と法律で決まるがまだ「消える職業」を特定するのは時期尚早だ」と述べています。
最近、話題のChatGPTやAIですが、ビジネスとテクノロジーは、いまの時代、切っても切れない関係です。
システムに関する理解が無ければ、会社を変革するための実行策を考えることが難しいと言っても過言ではありません。
誰もがテクノロジーに関する基礎知識を持つことが求められます。

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