大前研一「ニュースの視点」Blog

KON975「日銀総裁/アフリカ情勢/米英豪安全保障協力~日銀次期総裁の手腕に期待」

2023年3月27日 アフリカ情勢 日銀総裁 米英豪安全保障協力

本文の内容
  • 日銀総裁 政府の日銀人事案を可決
  • アフリカ情勢 中部アフリカ諸国を歴訪
  • 米英豪安全保障協力 豪州が米原子力潜水艦を最大5隻購入へ

日銀次期総裁の手腕に期待


参議院本会議は10日、日銀の次期総裁に経済学者の植田和男氏を起用する政府の人事案を、賛成多数で可決しました。

これを受け、政府は4月9日付けで植田氏を総裁に任命する見通しで、日銀初となる学者出身の総裁が誕生します。

岸田首相の名人事と評価します。

いい意味で予想を裏切られました。

高名な経済学者である植田氏が分析すれば、黒田総裁の10年間の金融政策が間違っていたことはすぐにわかるはずです。

2,000兆円の個人金融資産がある日本では、金利を上げることが景気高揚のために何よりも大事だということも、学者らしく明快に説明してくれるでしょう。

植田氏も黒田総裁の路線を引き継ぐと発言していますが、これは正式に選ばれるまでおとなしくしていただけだと私は考えます。

これからは過去10年間の失政を是正し、日本経済を正常化してくれると期待しています。




帝国主義時代の清算へ大きな転換点


フランスのマクロン大統領が、1日から5日にかけて中部アフリカ諸国を歴訪しました。

フランスは20世紀後半まで西アフリカに広大な植民地を持ち、各国の独立後も影響力を保ってきましたが、サハラ砂漠南部のサヘル地域で2013年から展開した対テロ作戦が十分な成果をあげられず、2022年に終了に追い込まれるなど地位が揺らいでいます。

マクロン氏は最初の訪問国のガボンで「フランサフリック(アフリカのフランス影響圏)の時代は終わった」と語りました。

アフリカのフランス語圏はアルジェリア、チュニジア、モロッコなどの北アフリカから、正式に公用語とされているコートジボワールなどの西アフリカ、コンゴ民主共和国などの中央アフリカ、マダガスカルとその周辺の島々まで広大な地域に及んでいます。

これらの国を今のフランスの国力で統治するのは不可能だということは誰もが理解していましたが、それをマクロン氏は今回はっきりと言葉にしました。

強いフランスの夢を追い続けるド・ゴールのような指導者とは一線を画す、マクロン氏の良い面が出たと考えます。

現在のこれらの国々ではイスラム国(IS)が暗躍していたり、ワグネルが戦闘員のスカウトに行っていたりしています。

経済面でも、中国が一帯一路の延長として影響力を強めようと画策しているなど、安定しているとは言えません。

難民たちは言葉の通じるフランスへ行きたがっており、そうした人々の動きを無視することはできないはずです。

マクロン氏の発言は、影響力を維持・行使するという重荷を下ろせるようになる一方で、旧植民地の混乱に対して無責任だという批判も起こり得ます。

一つの大きな転換点として、今後10年の動向に注目すべきです。

アフリカへの直接投資額は、中国は伸ばしているとはいえ現在5位。

英国、フランス、オランダ、米国に次ぐ順位です。

また、印僑が多くいる関係で、インドも10位につけています。

政府開発援助(ODA)を見てみると、国際開発協会(IDA)が一番多く、米国、欧州連合(EU)、ドイツ、英国、フランスと続いています。

日本単独では、アフリカ開発銀行や日本が創設を主導した世界エイズ・結核・マラリア基金よりも少なく、直接投資でもODAでも、存在感を減らし続けている状況です。




大きな抑止力を支える乗員の精神力


オーストラリアが米国から原子力潜水艦を最大5隻購入する見通しが明らかになりました。

オーストラリアは、中国の海洋進出を警戒する米国と英国の協力で、2040年を目途に少なくとも8隻の原子力潜水艦を配備する計画ですが、現在運用しているコリンズ級のディーゼル潜水艦が退役した場合、潜水艦が不在となる期間が生じる可能性があり、安保上の懸念が浮上していました。

米国、英国、オーストラリアの安全保障協力(AUKUS)の動きです。

オーストラリアはフランスに潜水艦を発注していましたが、それを横取りしたような形になりました。

2040年頃までと長めの期間ですが、思い切った決断だと思います。

潜水艦は大きな攻撃力を持ち、さらに姿が見えないという点が最大の特徴です。

それゆえ、「攻撃されるかもしれない、自分の行動を見られているかもしれない」という猜疑心、恐怖心を生じさせ、相手の行動を制約することが出来ます。

原子力潜水艦は一隻で一兆円ほどする高価な装備ですが、180日の長期にわたって海面に出ずに行動できる点で抑止効果が更に高まります。

日本も潜水艦を持っていますが、動力は原子力ではありません。

私の義弟は原子力潜水艦に乗務していたことがあり、内部のエピソードを話してくれました。

一年の半分を閉鎖された空間で、太陽の光を見ずに生活するということは精神面での負担が大きいそうです。

中には、突然奇声を発したり、妄想に囚われて寝床で暴れたりする乗員もいたらしく、そういう環境で核のボタンが管理されていることに少し恐怖を感じます。

また、マサチューセッツ工科大学(MIT)時代のクラスメイトも、半分ほどが原子力潜水艦での乗務経験がありました。

軍の制度で奨学金をもらって、学位を取りに来ていた人たちです。

MITでは、学生も原子炉を操作しながら研究するのですが、彼らは実際に潜水艦内の原子炉を扱っていたので、大学でのオペレーションも完璧でした。

私の出身校である東工大にも原子炉はありましたが、あまり学生が触る機会はなく、机上で勉強していた人と現場で働いていた人の違いを感じた思い出があります。

元乗員の学生たちは自信家が多かったのですが、彼らのように強い精神力を持っていないと、原子力潜水艦の特殊な環境では働けないのだと思います。




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※この記事は3月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はアフリカ情勢のニュースを大前が解説しました。

大前はフランス語を公用語とするアフリカの地域について触れ、「今のフランスの国力では広大な地域を治めるのは難しい」としたうえで、「マクロン首相はフランサフリックの時代は終わったと発言しているが、どのように状況が変化するのか今後10年程度は見ていく必要がある」と述べています。

経済やテクノロジー、働き方などの急速な変化により、ビジネスはかつてないほど予測不能な時代になっています。

変化が激しい時代においては、問題の解決策をいち早く提案し、実行する能力が求められます。

問題の本質を見極めて分析する力を養い、将来起こり得る変化に対してどのように対応すべきか考える習慣を身につけることが大切です。




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