大前研一「ニュースの視点」Blog

KON970「日銀/経団連/世界的工業デザイナー/国内新型コロナ対策~新総裁の金利引き上げに期待」

2023年2月20日 世界的工業デザイナー 国内新型コロナ対策 日銀 経団連

本文の内容
  • 日銀 次期総裁に植田和男氏
  • 経団連 新たな副会長6人の人事案
  • 世界的工業デザイナー 奥山清行・取締役の辞任届受理
  • 国内新型コロナ対策 マスク着用は個人判断へ

新総裁の金利引き上げに期待


政府は日銀黒田総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事を固めました。

経済学者出身の日銀総裁は初となりますが、植田氏は「現在の日銀の政策は適切であり現状では金融緩和の継続が必要」との考えを示しました。

黒田氏と考え方が近すぎない人を選んだ結果、日銀審議委員も務めたことがある学者出身の植田氏に決まったと考えます。

現在日銀副総裁の雨宮正佳氏が有力候補でしたが、黒田総裁時代と変化がつけられないという判断だと推測します。

植田氏はマサチューセッツ工科大学で、イスラエル銀行総裁も務めたスタンレー・フィッシャー氏の元で学んでいました。

この教室は数多くの世界的人材を輩出しており、バーナンキ元連邦準備制度理事会議長や、欧州中央銀行総裁でイタリア首相も務めたドラギ氏、サマーズ元財務長官もフィッシャー氏の教え子です。

元々金融引き締め論者でもありますし、このような素晴らしい経済学者の中に名を連ねる以上は、安倍元首相と黒田総裁の金融政策の問題点に気づいていないはずがありません。

今は黒田氏の路線を継続すると言っていますが、そのうちに歪みを正す方に舵を切る可能性はあると思います。

飼料・燃料の高騰で、米国の卵の値段が2倍以上になっているのを見てもわかるように、エネルギーと生鮮食品の価格上昇は世界的な事象です。

これは金利を上げれば解決するものではありません。

ですが、円安を止めて、輸入品の価格上昇に拍車がかかる状況を防ぐことは可能です。

私は以前から、個人金融資産が2,000兆円ある日本では、金利を上げたほうが景気が良くなると主張してきました。

植田氏の元でなら、金利引き上げが実現するのではと期待しています。




経団連の機能不全を象徴する人事


経団連は6日、新たな副会長6人の人事案を発表しました。

水や環境ビジネスの世界大手であるヴェオリアの日本法人会長の野田由美子氏を外資系企業から初めて起用し、戸倉会長は「人格や識見、各業界での実績などを総合的に判断して選んだ」と語りました。

この人事を見て、経団連には心底失望しました。

評価できるのはNTTの澤田会長くらいです。

銀行、重工、商事と三菱系から3人も起用し、外資系初の女性と言う触れ込みで野田氏の起用。

経団連が機能していないことを象徴する人事です。

野田氏は横浜の副市長も含め、いろいろな場所を渡り歩き、現在はたまたまヴェオリアにいますが、基本的には頼まれたことを行っているだけです。

常に雇われている立場で、自分で事業をやったことがない人が、何を期待されて経団連の副会長に選ばれたのでしょうか?男性ばかりで硬直化していると批判される経団連の副会長に、女性が入っていたら華やかで世間体もいい。

老人たちの考えそうな、浅ましい発想です。




輝かしい業績のデザイナーが有罪判決で辞任


ヤンマーホールディングスは9日、取締役で世界的な工業デザイナーの奥山清行氏からの辞任届を受理したと発表しました。

奥山氏は2013年に同社の取締役に就任。

16年には奥山氏がデザインしたトラクターがグッドデザイン金賞を受賞しましたが、去年10月、山形市内の県道を制限速度88キロオーバーで走行したとして、執行猶予付きの有罪判決を受けていました。

奥山氏はエンツォフェラーリを設計した業績がある方です。

今は出身地の山形に住んでいるようですが、蔵王の側道でとんでもない交通違反をしてしまいました。

信号のない場所だったそうですが、88キロオーバーは擁護できません。

おそらく今回も、エンツォを運転していたのだと思われます。

北陸新幹線、山形新幹線の最上級席であるグランクラスをデザインしたのがこの奥山氏の会社で、実際に設計していたのは土屋陽太郎氏という人物でした。

土屋氏は現在ヤンマーに在籍しており、トラクターなども実際は奥山氏と一緒に手掛けたものです。

奥山氏は社外取締役として関わっていましたが、有罪判決が出た以上は辞任せざるを得ません。

実は奥山氏は言動に難のある人物として有名で、イタリア時代から多くの言行録が噂されていました。

イーロン・マスク氏をはじめ、ビジネスの世界にはこうした「能力最高・性格最悪」という人物が散見されるようです。




日本の政治家の責任逃れ体質を露呈


政府は10日、新型コロナ対策のマスク着用について、来月13日から国内外を問わず個人の判断に委ねる方針を決定しました。

結局は「マスクをつけなくていい」と断言する能力・勇気がないだけです。

オーストラリアでもドイツでも、政治家の判断でマスクの強制は終わりました。

日本では情けないことに、あやふやなことを繰り返す政治家ばかりです。

岸田首相も「マスクを外して、みんなの笑顔を見せながら卒業式をやってもらいたい」などと格好つけたことを言っていますが、生徒はマスクを外して保護者はつけていろと言うのでは筋が通りません。

マスクを付けることを強制したのであれば、外すタイミングについても明言するのが道理です。

国民の判断にゆだねることは、体のいい責任逃れでしかありません。




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※この記事は2月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内新型コロナ対策のニュースを大前が解説しました。

大前は海外の事例を紹介し、「政府はマスクの着用について方針を明示する判断力がない」と指摘し、「マスク着用を個人の判断に任せるといういい加減でひどい対応」と述べています。

重要な局面では、迅速かつ質の高い決断力が必要なことも少なくありません。

自分なりの決断基準や目標に立ち返り、失敗を恐れず決断する力がリーダーには求められます。


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