大前研一「ニュースの視点」Blog

KON969「百貨店大手/日本交通グループ/三菱商事~21世紀的なスキル獲得に繋がる運用を望む」

2023年2月13日 三菱商事 日本交通グループ 百貨店大手

本文の内容
  • 百貨店大手 東急百貨店本店が閉店
  • 日本交通グループ パート運転手の募集開始
  • 三菱商事 最長2年間の休暇認める制度導入

弱みだったホテル、食事の充実に期待


東急百貨店本店が先月閉店しました。

東急百貨店本店は1967年に開業し、地上8階地下3階の店舗では、近隣の高級住宅街である松濤の住民向けに高級ブランドを揃えるなど、渋谷のシンボルの1つとして親しまれてきました。

今後跡地には地上36階建ての複合ビルを建設し、外資系のラグジュアリーホテルなどが入るとのことです。

渋谷はいわゆるターミナル駅で、駅直結の商業施設としてデパートがありました。

その代表格が東急百貨店です。

一方で、ホテルが少なく、高級ホテルに分類されるものはセルリアンタワーしかありません。

逆に新宿は、ハイアット系の最高峰であるパークハイアットをはじめ、ホテルが充実していて百貨店が物足りないという現状があります。

帝国ホテルや六本木のグランドハイアットと比較すると、私に言わせればセルリアンタワーは見劣りしてしまい、外国からのゲストに使っていただいた経験もほとんどありません。

渋谷は若者の街であり、ハイテク企業が集まる街でもあります。

近年では再開発も進み、スクランブルスクエアも完成しました。

しかし、ホテルや食事の充実度も改善して中身から変わっていかないと、ただ電車と人が集まるだけの街で終わってしまうと危惧しています。

ちょうど池袋は没落を食い止めようと、豊島区長と西武グループ、ヨドバシカメラが協議を重ねています。

渋谷にとっては、自分たちより苦労している街があるという安心感があるかもしれませんが、私としては、池袋とは比べ物にならないほどの洗練された街を目指して欲しいところです。




高齢化・人手不足をITと女性活用で解決する試み


タクシー大手の日本交通グループであるハロートーキョーが、配車アプリ「GO」を運営するモビリティテクノロジーズと提携し、求人サイトでパート運転手の募集を開始したことがわかりました。

週3日、1日5時間からのシフト制で、午前6時から午後10時の間で希望の勤務時間帯を選べ、高齢化や新型コロナ禍でタクシー運転手が減少する中、雇用形態を多様化し、人材を確保する考えだとのことです。

非常に興味深い取り組みです。

タクシードライバーの人手不足・高齢化は深刻で、2008年には35万人以上いたタクシードライバーが、2020年には25万人ほどにまで減少しています。

平均年齢は60歳を超え、平均勤続年数は約10年となっており、女性の中から候補者を探さないと供給がまったく追いつかない状況になっています。

今回の取り組みでは、普通自動車第一種運転免許さえ持っていれば応募でき、普通自動車第二種運転免許の取得費用は会社が出すことになっています。

さらにシフト制で時間に融通を効かせる働き方ができる上、トラブルに巻き込まれるリスクが高い”流し”の営業はやらないという女性にとって働きやすく安心な設計がされています。

会員登録が必要な配車アプリ「GO」の専属ドライバーとして働いてもらうことで、身元がはっきりしている客だけを回せるという仕組みです。

深刻な人手不足の解決策として、デジタル技術を活用し、リスクを回避しつつ女性に機会を提供することは、企業戦略として非常に面白いと受け止めています。




21世紀的なスキル獲得に繋がる運用を望む


三菱商事が新たに導入する人事制度で、国内や海外の大学・大学院で学位の取得を目指す社員を対象に、最長2年間の休暇を認めることがわかりました。

これまで大手商社は、1つの部門でキャリアを積む縦割りの人事制度を採用してきましたが、近年、脱炭素やDXなど課題が部門横断的になる中、社員の多様なスキル取得を後押しし、会社の競争力強化につなげる考えです。

大学などで採用されている、長期勤続者に対して一定期間長期休暇を与えられるサバティカルのような制度だと理解しています。

過去にオムロンが8か月の長期休暇制度を導入したことがありましたが、その時は上手くいきませんでした。

当時の日本はワーカホリックの会社人間が当たり前の社会でした。

そのため、休暇中も仕事が気になる、復帰したときに席があるのか不安になる、いっそのこと米国横断でもしようと国外に飛び出してみても、米国支社があるシカゴに立ち寄りたくなってしまうといった悲しい日記が雑誌で紹介されていました。

今ならこうしたことは起こらないと思います。

本来リスキリングは、ドイツのシュレーダー元首相のように国が責任をもって取り組むべきことです。

とはいえ、商社が制度として2年間のリスキリングの機会を取り入れたことは評価します。

学位取得のための休暇だと紹介されていますが、大切なのは学位ではなくスキルの取得です。

私に言わせれば学位にはなんの価値もなく、新しいことができるようになり、21世紀的な取り組みを牽引できるような人材になることこそを重視すべきだと考えます。




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※この記事は2月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日本交通グループのニュースを大前が解説しました。

大前は「この求人で注目してほしいのは、女性向けであることや、必要な免許がなくても応募可能で免許取得の費用を企業で負担する点」「予約客のみを乗せる仕組みによって女性運転手の安全を守っている」と指摘し、「人手不足を解消するための企業戦略として非常に興味深い取り組み」と述べています。

解決策立案の際はできるだけ制約条件に縛られず、自由に思考するよう心がけることで新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

企業が抱えている課題、そして社会課題に立ち返ることを忘れずに、アイデアを膨らませてみましょう。


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