- 本文の内容
-
- 福島第一原発事故 「中間指針」見直しへ素案
- エコカー減税 2023年4月末までの期限を3年間延長
- マイナンバーカード 米アップル・クックCEOに協力要請
- デンマーク情勢 多様な家族認めるデンマーク
賠償に加えて現実的な方針転換も必要
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は12日、福島第一原発事故の賠償基準の見直しに向けた素案をまとめました。
長期避難における移住を、「故郷変容」の損害と新たに位置づけることなどを盛り込んでおり、すでに10兆円を超える東京電力の賠償額はさらに膨らむ見通しです。
原子力関係者は、地元の双葉、大熊、南相馬に対して嘘をついていたわけですから、賠償額が膨らむことは当然のことです。
起こらないと言っていた事故が起こり、故郷が一変してしまった方々に対して責任があります。
私としては、原発の跡地を更地にして返還するという方針から、新たな場所に移住してもらい、新しい町をつくることを全面的にサポートする方針に改めるべきだと考えます。
町の除染が完了したとしても、戻ってくる住民は1割から2割に過ぎないとみられており、これでは町を維持することはできません。
原発と福島の状況を色々と分析した結論としては、いつか戻れるという前提は現実的ではないと言わざるを得ません。
日本はハイブリッドカーを再評価すべき
自動車の取得時と車検時にかかる重量税を燃費性能に応じて軽減する「エコカー減税」について、政府与党は、2023年4月末までの期限を3年間延長する方針を固めました。
半導体不足で納車が延びていることを受け、車の購入者に負担がかからないよう配慮するものですが、減税の適用基準は2024年から段階的に引き上げ、2025年以降は事実上、ガソリン車を優遇の対象外とする方針です。
世界中で電気自動車への期待が高まっていますが、一度立ち止まって考えるべきだと思います。
現在では、電気代に補助がない場合には、電気自動車よりハイブリッドカーの方が安いという現実があります。
本当に一番環境に良い仕組みを検証するには、様々な研究結果を待つ必要がありますが、私としてはガソリンを併用するハイブリッドカーを推奨するべきだと考えます。
現状で一番燃費が良いということもありますし、日本には世界に先行する技術もあります。
日本が国策としてやるべきことは、ハイブリッドカーこそ優遇し、世界に向けてその環境性能をPRし、広めていくことです。
スマートフォン搭載を機に抜本的改革をするべき
岸田首相は15日、総理官邸で米国アップル社のティム・クック最高経営責任者(CEO)と面会し、iPhoneにマイナンバーカードの機能を搭載するよう協力を要請しました。
政府はマイナンバーカードを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、クック氏は「取り組みたい」と応じたとのことです。
なお、アンドロイドのスマートフォンには2023年5月に搭載できる見通しとのことです。
スマートフォンベースでのマイナンバー制度が実現するなら大歓迎です。
ただしその場合は、住基ネットからスタートした今のカード方式はすべて放棄して、エストニア方式へ切り替える必要があります。
単に現状の制度をスマホに移植するだけでは、トラブルの原因になるだけです。
日本はただでさえスマートフォン後進国で、海外から帰国する際の手続きも不便です。
その原因は、端末側に情報を登録し、それを読み取ってもらうという発想にあります。
逆にクラウド側に我々のデータが蓄積されていて、手続きの際にはIDの提示のみにするべきなのです。
アンドロイドに加えてiPhoneでもできるようになるのなら、完全にスマートフォンベースにするしかありません。
エストニア並みの洗練された仕組みになることを期待します。
制度の背景にある合理的発想にこそ注目を
「家族の多様性を認める国は出生率も高いことが知られており、代表例が北欧のデンマークだ」と日経新聞で紹介されました。
デンマークでは、原則生物学上の両親が子供の養育の最終責任者であると定められた上で、子供が生まれてからの結婚や法律婚によらないパートナーシップなど様々な形が認められているとのことです。
また、日本で結婚離れが広がる背景として、多様なニーズやリスクを受け止められない社会と制度が理由としてあげられるとのことです。
20年前から私が提言していたことですが、ここで重要なのは、現在の戸籍制度を撤廃することです。
出生からの日数で親権の所在が決まるなどの不合理な制度が存在する原因は、日本の戸籍が男性中心に設計されていることにあります。
デンマーク式の重要なところは、女性中心の制度である点です。
女性は出産しているのだから、子どもの母親が誰かはその場でわかり、子どもは生まれた瞬間にデンマーク国籍として登録されます。
父親は不要で、その子の責任は母と国が持つという形式です。
その後男性が「その子の父親です」と申請すれば、その男性にも責任が生じる形になります。
スマートフォンで出来る簡単な手続きで、母親からの異論がなければそれで終わりです。
夫婦でも、夫婦でなくても、生物学上の父であるかどうかも問われません。
日経新聞が20年かけて私の意見を理解してくれたことは評価しますが、もう少し詳細に現在の問題点とデンマーク式の優れた点を分析して欲しいところです。
デンマーク式だけでなく、フランス、米国、スウェーデンなど様々な国の工夫を調べたうえで、よりよい提言があることに期待します。
---
※この記事は12月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はエコカー減税のニュースを大前が解説しました。
大前は「電気自動車へ電気を充電して走行する場合、ハイブリッドカーで走行するよりも1kmあたりの費用負担が大きくなる」と現状を指摘し、「現在の日本の場合、技術的にもハイブリッドカーの方が発達しているため、国をあげて補助すべき」と述べています。
問題解決を進める際には、現場の実態に即した解決方法を検討することが求められます。
そのためには目の前の解決策に安易に飛びつくのではなく、他の解決策はないのか?代替策はないのか?と解決策の妥当性を検証することが大切です。
▼プログラミング経験ゼロから3ヶ月でデジタル変革リーダーを育成!
『デジタルファーストキャンプ』2023年1月期生 申込受付中
年末年始もオンライン説明会を連日開催
https://digitalfirstcamp.com/