- 本文の内容
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- パーソン・オブ・ザ・イヤー ゼレンスキー大統領と「ウクライナの精神」を選出
- ドローン攻撃 ウクライナのドローンがロシア空軍基地2カ所を攻撃
- 核戦力 核戦争「脅威が増している」
- ロシア産原油 「上限価格設定国には輸出せず」
成長し続ける素晴らしいチーム
米国のタイム誌は7日、毎年恒例のパーソン・オブ・ザ・イヤーに、ウクライナのゼレンスキー大統領および「ウクライナの精神」を選出したと発表しました。
タイム誌はゼレンスキー氏について、「侵攻開始後もウクライナに留まり、国民に勇気を与えた」と指摘。
また、世界中に行動の波を引き起こし、ロシアに対抗する上で決定的な役割を果たしたと評価しました。
私としては、ゼレンスキー大統領だけでなく、大統領を支えるチームを評価したいと思います。
あらゆるスタッフの頭脳が非常に明晰であり、合理的に考えて行動しているチームに支えられ、今後もますます大統領の人気は上がるでしょう。
ゼレンスキー大統領は支持率が下がった時に、ミンスク合意を反故にするような言動を示しました。
それがプーチン大統領の怒りを買って今回の戦争に発展したことを考えれば、彼に一切の非がないとは言い切れません。
ですが、その後の行動は非常に立派であり、ゼレンスキーチーム全員を大いに讃えたいと思います。
ゼレンスキー氏には役者としての才能があっただけでなく、今では大統領としてのリーダーシップについても日々学び、成長していっているように見えます。
日本の「反撃能力」を議論するうえで重要
ロシア国防省は5日、モスクワ近郊と西部にある二か所の空軍基地が、ウクライナのドローンによる攻撃を受けたと発表しました。
また、ウクライナのクレバ外相は8日、「ロシアがウクライナで何をしても良い一方で、ウクライナには同様の権利がないという考え方は、道義的にも軍事的にも誤り」との考えを示しました。
クレバ外相も知性と信頼感にあふれた思考と話し方を持った、優秀なゼレンスキーチームの一員です。
今回の攻撃については、日本の今後の安全保障を議論するうえで参考にすべき重要な事例だと考えます。
今まではロシアに攻撃されても、ウクライナは迎撃するだけの専守防衛でしたが、今回はロシア領内で攻撃準備をしている基地を攻撃しました。
これこそ、先日岸田首相が打ち出してきた、先制攻撃ではない「反撃能力保有」という考え方です。
相手の基地を攻撃して出撃自体をできなくしてしまうことは先制攻撃に見えるかもしれません。
ですが、明らかにこちらに対する攻撃の準備をしているところを叩くのは「反撃能力」の行使であり、正当だというのが今回の議論です。
ウクライナのケースでは、ロシアから何度も攻撃されているうえでの反撃でした。
とはいえプーチン大統領は予期せぬ反撃に激怒したようで、言動が少しおかしくなっています。
現在のウクライナの迎撃システムは、借り物のシステムを使いながらもミサイルの8割を撃ち落としている実績があるようです。
8割の迎撃能力はかなり優秀で、あれだけの攻撃を受けていながらも死者数は比較的少なく済んでいます。
これが、アイアンドームと呼ばれるイスラエルの迎撃システムになると、カバーできる範囲が狭いなどの条件付きですが、9割のミサイルを迎撃できると言われています。
専守防衛の迎撃システムだけで良しとするか、それとも反撃能力を持つべきか、ウクライナの事例を他山之石として、我々もしっかり議論すべきところです。
追い詰められたロシアの混乱ぶり
ロシアのプーチン大統領は7日、世界的な核戦争のリスクについて「脅威が増している」との考えを示しました。
その上で、ロシアが核兵器を先制使用する事はなく、抑止力として保持していることを強調しましたが、9日には「米国が敵の核戦力を無力化するための予防的な攻撃を容認している」として、ロシアも同様の先制攻撃ができるよう検討することは可能との見方を示しました。
最近のプーチン大統領の発言は混乱が多く、かなり追いつめられているような印象があります。
先日も、軍人の功績を表彰する場で、かなり酔っぱらいながら話している姿が報道されました。
今までにはなかったことです。
動画の中でプーチン大統領は、「ウクライナのインフラを攻撃するのはクリミア大橋を破壊された報復」と発言していますが、一方的な侵略を始めたのがどちらなのかを考えれば、起承転結がおかしい理屈です。
それを動画に撮られて、ロシア国営テレビで報道されているという醜態を晒しているのは、精神的にも不安定なのではないかと推測してしまいます。
市場に後れをとった間の抜けた制裁
ロシアのノバク副首相は4日、主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアが、ロシア産原油の取引価格の上限を1バレル60ドルとする制裁を決めた事について、上限価格を設定する国には原油を輸出しないとの考えを示しました。
またノバク氏は、価格上限の設定は非市場的で非効率であり、世界貿易機関(WTO)のルールなど自由貿易の規範に反する市場への介入と強調し、減産も辞さない構えを示しました。
原油価格の推移をみると、高品質な北海やテキサス産の原油で80ドル程度、低品質なロシア産の原油は既に60ドル程度にまで下落しています。
そんな時に60ドルに上限を定めたところで、制裁として機能するのかどうかは疑問です。
どちらに転ぶかはわかりませんが、私からすると、間の抜けた合意に見えてしまいます。
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※この記事は12月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はドローン攻撃のニュースを大前が解説しました。
大前はウクライナのドローン攻撃について解説したうえで、「日本で専守防衛と反撃能力について議論する際に、ウクライナの事例は非常に参考にすべきである」と述べています。
自社での前例がないことに取り組む場合、先行して取り組んでいる他社の事例を研究することが大切です。
成功のための要点を抑えたうえで自社の実態に合わせてアレンジし、さらに他社の事例から見えてきた課題を克服できないか検討するところまで取り組んでみましょう。
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