大前研一「ニュースの視点」Blog

KON952「イラン情勢/北朝鮮情勢/日中関係~強大になった中国との外交は独自路線を取るべき」

2022年10月10日 イラン情勢 北朝鮮情勢 日中関係

本文の内容
  • イラン情勢 拘束女性死亡への抗議デモ収束せず
  • 北朝鮮情勢 北朝鮮が弾道ミサイル発射
  • 日中関係 国交正常化50年でレセプション

SNSが抗議デモを後押し


イランでスカーフの被り方をめぐり当局に拘束された女性が死亡した問題で、先月17日に発生した抗議デモが各地で続いています。

国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルによると、30日までに死者は52人、負傷者は数百人に上ることがわかりました。

警察による暴行を疑う見方がSNSで拡散したことなどが要因で、イスラム法の厳格な遵守を求める保守強硬派のライシ政権が対応に苦慮しています。

死亡したマフサ・アミニさんに対してはかなりの暴行があったと言われており、デモ隊と警察も派手に衝突したようです。

もともとサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の一部の首長国に比べると、イランは女性の服装についてそこまで厳格ではありませんでした。

しかし、SNSでデモの様子が世界中に広がっており、どのように収束を図るのかが難しいところまでエスカレートしているのが現状です。




同じ対応を繰り返しても事態は改善しない


韓国軍合同参謀本部は先月29日、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射したと発表しました。

これについて浜田防衛相は、いずれも最高高度約50km、飛距離は約350kmで、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したと推定。

2日連続の発射については例がないとし、「国際社会の平和と安全を脅かすもので断じて容認できない」と非難しました。

今年に入ってから約2週間に一回のペースでのミサイル発射です。

そのたびに緊急安全保障理事会を開いていますが、そろそろ対応を変えるべきなのではないかと考えます。

毎回「断じて容認できない」というようなコメントを出してはいますが、状況は変わっていません。

報道に関しても、NHKはミサイルと地震だけは毎回テロップを出して速報で報じますが、ぼんやりと見ていた気分が少し改まる以上の効果はありません。

無視する方向なのか、米韓と協調してなんらかの厳しい措置をとる方向なのかはわかりませんが、何か対応の変化をつけるべきです。




強大になった中国との外交は独自路線を取るべき


日本と中国が国交正常化した日中共同声明の調印から50年となった先月29日、都内のホテルで記念のレセプションが開かれました。

レセプションでは林外務相、福田元首相、孔鉉佑駐日中国大使が挨拶したほか、岸田総理と習近平国家主席がメッセージを寄せ、建設的かつ安定的な関係構築等を呼びかけました。

50年前の田中角栄と周恩来とのミーティングは歴史的な出来事でした。

とはいえ、国民党の中華民国・台湾を排除し、共産党の中華人民共和国を正統としたのは間違いだったと私は考えます。

キッシンジャーとニクソンが日本の頭越しに中国と手を結んだ経緯がありましたが、日本は焦って追随するべきではありませんでした。

そもそも、国連の常任理事国は共産党の中華人民共和国ではなく、国民党の中華民国・台湾でした。

第二次世界大戦の戦勝国は中華民国だったからです。

それが共産党に追われ台湾に逃れ、ニクソンが中国と手を結んだ際に国連からも追われるわけですが、その時点で共産党の中華人民共和国には常任理事国を引き継ぐ正当性はなかったはずです。

それを、なんの正式な意思決定もなく常任理事国としてしまったのも間違いでした。

これは、ソ連崩壊の際にロシアを常任理事国として拒否権を持ったまま残してしまったことも同じで、そのせいでウクライナ侵攻や4州併合という暴挙があっても国連が機能しないという、現在進行形の問題を生み出しています。

日中国交正常化の当時は中国は貧しい国でした。

日本は台湾・中華民国に戦後賠償という形で支援していましたが、中華人民共和国にも支援をする必要が生まれたため、二重の賠償にならない工夫が求められました。

そこで採用されたのが政府開発援助(ODA)という形で、これが田中派の利権になったという歴史があります。

日中のGDPについて、1980年代には日本が中国を大きく上回っていましたが、2010年に逆転し、いまでは中国のGDPは日本の約2.5倍となっています。

広大な市場と廉価な労働力は日本経済にとって必要不可欠なものになり、時に政府から、時に大衆から攻撃されながらも、日本企業は中国進出を続けました。

今では中国にある日系企業の拠点数は2018年の時点で3万拠点以上と、米国の3倍以上となっています。

また、中国が経済的に台頭するにつれ、国家としてのパワーバランスも変化しました。

日本の防衛費はGDPの1%という制約があり、かつGDPも成長していないため、ずっと約500億ドルでした。

それを中国は2000年代初頭に颯爽と抜き去り、2020年には約3,000億ドル近くにまで増加しています。

また、尖閣諸島海域への中国公船の侵入も、それに比例するように増加しています。

日中の2000年の歴史に及ぶ交流は大切にするべきですし、国交正常化50周年も祝うべき記念だとは考えます。

ですが中国はもうかつての貧しい中国ではなく、予測不能で強大な隣国でもあります。

習近平の強権がさらに強まり、プーチンのような独裁者になる可能性も警戒しなくてはいけません。

今後の米中対立は避けられず、そうなれば日本と米国との利害はこれまで以上に一致しなくなるはずです。

いつまでも米国追従の中国外交では日本に利はありません。

国交正常化50周年を機に、独自の中国外交が展開できるようになることを期待します。




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※この記事は10月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は北朝鮮情勢のニュースを大前が解説しました。

大前は「北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、日本の対応がいつも同じになっている」と指摘し、「弾道ミサイルの発射数が増えている今、無視するのか、あるいは他国と協力して厳しい対応をするか、いずれにせよ変更すべき」と述べています。

企業が置かれている状況の変化によって、課題に対する有効な打ち手も次第に変化していきます。

改めて現在の課題を捉え直し、既存の施策を見直すことでより効果的に解決に結びつく打ち手が見つかるかもしれません。



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