- 本文の内容
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- 金融規制改革 フィンテック企業の全銀システム加盟を解禁
- 貿易統計 8月の貿易収支2兆8,173億円赤字
- 都心オフィスビル 都心オフィスに「23年の崖」迫る
全銀システムに加盟できるだけでは不十分
全国銀行協会は15日、キャッシュレス口座を提供するフィンテック企業に対し、「銀行間の送金システム(全国銀行データ通信システム)への加盟を解禁する」と発表しました。
これによりフィンテック企業は、早ければ2023年にも全銀システムへの接続が可能になります。
利用者は自分の決済アプリから他人の銀行口座に送金したり、他人が銀行口座から送ったお金を自分の決済アプリで受け取れるようになるとのことです。
フィンテック企業の立場からすれば、全銀システムに加盟できるようになるだけでは不十分です。
日本でフィンテック企業が育たない最大の原因は、規制で全銀システムが使えないことではなく、利用料が高すぎることなのです。
例えばクレジットカードの場合、業種にもよりますが、加盟店は3~4%もクレジットカード会社に利用料として抜かれます。
これが中国のアントフィナンシャルに比べるとはるかに割高なのです。
今回の規制緩和も、まだまだユーザーの利便性を考えた改革ではないと私は思います。
手数料に踏み込む必要があるのです。
円安と貿易赤字の二重苦が定着する危機
財務省が15日に発表した8月の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8,173億円の赤字となりました。
エネルギー価格の高騰や円安により、輸入額が前年同月比で49.9%増加したことなどが要因で、赤字額は比較可能な1979年以降単月として過去最大となりました。
日本の危機的局面です。
日本からの輸出が多かった時代は、円安のメリットが確かにありました。
ですが、日本は既に輸出大国ではありません。
産業構造が変わり、日本企業の製品の多くが中国などの海外で生産されるようになった今、当時のような円安のメリットはありません。
むしろ輸入しないと賄えないエネルギーや食糧などが円安によって価格高騰し、苦しい経済状況になっています。
統計を見ると、2020年1月から2021年の8月までの貿易収支はほぼプラスマイナスゼロで横ばい、それ以降は明確な下降トレンドで赤字が続いています。
対外直接投資や第一次所得収支は黒字ではあるものの、爆発的に伸びているわけではありません。
一方で、輸入額は2020年から増え続けており、約3割を占める鉱物性燃料を除いても増加トレンドを描いています。
このまま貿易赤字が定着する可能性は十分にあり、さらに円安が定着するようなことになれば、日本経済は窮地に立たされます。
黒田日銀総裁はじめ、財務省や経済産業相はこの状況に対して明確な打ち手を示しておらず、私に言わせれば、危機を認識しているのかどうか甚だ疑問です。
需給悪化で不動産価値暴落を懸念
日経新聞は16日、「都心オフィスに『23年の崖』迫る」と題する記事を掲載しました。
2023年に東京23区で供給される大規模オフィスビルの面積は推計で132万平方メートルで、この20年間で最も少ないとされる2022年の2.7倍にのぼると紹介しています。
一方、オフィス需要は少しずつ戻りつつあり、立地や機能面に優れた大型ビルには入居企業が集まるとの見方もあり、オフィス需要の推移への関心が高まっているとのことです。
オフィス需要は回復しつつあるという見解を鵜呑みにするのは危険です。
あくまでも「立地や機能面に優れた大型ビル」には入居企業が集まるというだけで、需要が増えているわけではないと考えられるからです。
2.7倍という巨大な供給を埋めるほどの需要がない限り、最新鋭のビルに入居者が戻ったとしても、それは最新鋭ではないビルの入居者を奪っているだけにすぎません。
そうして玉突き的に入居者を奪っていった結果、ペンシルビルのようなところの入居者がいなくなり、賃料が坪単価1万円を切るような悲惨な事態になると予想します。
都心5区の新築オフィスビルの平均空室率を見ても、2020年には5%以下だったものが40%以上にまで跳ね上がっています。
ここにさらに巨大な供給が加われば、さらに上昇することは避けられません。
日本では90年代半ばに同じような状況があり、そのまま不動産価値の大崩壊という地獄をみました。
現在も、かつてのあの事態に向かっているんだと考え、用心しておくべきです。
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※この記事は9月18日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は都心オフィスビルのニュースを大前が解説しました。
大前は都心5区の新築オフィスビルの平均空室率や1990年代に不動産価値が大幅に下落したことに触れ、「オフィス需要は回復しつつあるという見解を鵜呑みにするのは危険」と述べています。
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