- 本文の内容
-
- 金融庁 金融教育、国家戦略に
- 円相場 一時1ドル=140円超え
- 世界株式市場 株式時価総額、5兆ドル喪失
- 台所用刃物 世界で切れ味、輸出額最高に
現金預金の多さは日本が繫栄しない大きな原因
日経新聞は先月29日、「金融教育、国家戦略に」と題する記事を掲載しました。
これは金融庁がまとめた2022事務年度の金融行政方針で、金融教育について「国全体として体制を検討する」と明記したと紹介しています。
金融教育は学習指導要領の改訂により、今年の春から高校の授業の必修科目になりました。
しかし大学や社会人向けの講座は民間の金融機関が主体的に取り組んでいる現状で、官民が連携して推進する新たな体制を作り、資産所得の倍増を目指すということです。
私が連合の政策の中に「サイレントマジョリティのための新しい税制を」と題して提案した通り、NISAのような小額の投資制度を設けるだけでは足りず、もっと抜本的な改革をする必要があると考えます。
日本の家計における金融資産構成は他国と異なり、株式や投資信託に比べて現金預金の割合が非常に多く、総額1,000兆円を超える資金がほとんど金利のつかない銀行口座に眠っています。
つまり、他国では年に5%成長している資産が、日本では0.02%しか成長していないということになります。
この差は、日本が繫栄しない大きな要因です。
NISAの枠を拡大する程度のことでは解決しない、日本という国家の一大事だという認識をもって政策を考えてほしいと思います。
日本は円安ドル高、米国は株安ドル高が進む
2日のニューヨーク外国為替市場で円が1ドル140円を超え、およそ24年ぶりの円安ドル高水準となりました。
1日に発表された8月の全米供給管理協会(ISM)製造業景況感指数が市場予想を上回ったことを受け、連邦準備制度理事会(FRB)が今後も利上げを継続するとの見方が強まり、幅広い通貨に対しドル高が加速した形です。
FRBの方針の一方で、日本では黒田総裁がいる限り日銀の低金利政策は変わらないので、円安ドル高が是正されることはないと私は考えます。
円安傾向が止まらない日本に対して、米国では株安傾向が強くなっています。
また日経新聞は4日、「株式時価総額、5兆ドル喪失」と題する記事を掲載しました。
これは経済シンポジウムのジャクソンホール会議で、FRBのパウエル議長が金融引き締め継続への強い意思を示して以降、株安ドル高がさらに進み、世界の株式時価総額は1週間で約5兆ドル、およそ700兆円減少したと紹介しています。
4~6月期には米国がマイナス成長となった他、ヨーロッパはエネルギー高、中国はロックダウンの再開など先行き不透明な要素が多く、市場の乱高下が続くとの見方が増えているとしています。
エコノミスト誌によると、新型コロナ流行後に高騰したNetflixやZOOMなどの株価指数は、一時NASDAQ平均の2倍以上になりましたが、現在ではNASDAQを下回り、新型コロナ流行以前の水準まで下がりました。
注目を集めた銘柄だからといって、いつまでも好調だと慢心してはいけないという教訓です。
とはいえ、米国人はまだ株に期待を持っているように思われます。
特殊な技術を持ち大きな成長が期待できる
2021年の全国の台所用刃物の輸出額は、前の年に比べて28.6%増加のおよそ118億4,200万円で、さらに中部5県からの2021年の輸出額は20年前の4倍に拡大しました。
中でも全国の出荷のほぼ半分を占めるのが、鎌倉時代の刀鍛冶の流れを汲んだ岐阜県関市の刃物で、切れ味や耐久性に優れた高価な包丁の輸出が、北米や西欧向けに増加しているということです。
刀にルーツを持つ日本の刃物の研究は世界でも進んでいて、焼き入れをして鉄の性質を変えるマルテンサイト変態を上手く利用し、面心立方格子構造で錆もほとんどつかなくするような技術を持っています。
包丁だけでなく、食事に使うナイフなども切れ味がいいと評判で、料理コンクールの審査の際に日本の職人が作ったナイフを用意していたら、切れ味を気に入った審査員が持って帰ってしまったというエピソードもあります。
日本の有名な包丁の産地としては、大阪の堺、新潟の三条、岐阜の関とあり、特に関市はドイツのゾーリンゲン、英国のシェリンガムと並んで世界三大刃物産地と称されています。
焼き入れという特殊な技術を持つことが日本の刃物生産の強みで、もっと大きな産業になる可能性は十分に秘めていると考えます。
しかし、以前洋食器の生産でも好評を博している燕三条を訪れたことがあるのですが、何もないところで驚きました。
刃物をまとめて扱っているのは新幹線の駅の中の売店くらいです。
伊万里や備前のように、世界に通用する町の特産品が買える場所が整っていれば、世界中から観光客やバイヤーが集まって買い物できるようになり更に成長が期待できるはずなのに、その環境が整っていないことが残念です。
---
※この記事は9月4日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は台所用刃物のニュースを大前が解説しました。
大前は刃物の技術について「日本が誇る技術であり、今後より世界に広まる可能性を秘めているが、実際に産地を訪れてみると大々的にアピールしているわけではない」と指摘し、「例えば伊万里や備前のように街の中に店舗が連なっていて訪問した人々が製品を購入しやすい場所を設けるべき」と述べています。
自社の強みや技術をアピールする場合、目的やターゲットによって有効なアピールの方法は大きく変わります。
目的やターゲットが類似している企業の製品やサービスのPR事例を参考に自社の魅力を効果的に伝えられる手法を検討してみましょう。
▼大前メソッドで“構想力”を鍛える【BBT経営塾】
10月開講クラス(第42期)受講者を募集中!!
プログラム詳細・お申込みはこちら
https://bit.ly/2EgnFIJ