大前研一「ニュースの視点」Blog

KON947「日本電産/日野自動車/オリンパス~祖業への愛着より成長の機会を選んだオリンパス」

2022年9月5日 オリンパス 日本電産 日野自動車

本文の内容
  • 日本電産 関潤社長兼COOが退任へ
  • 日野自動車 小型トラックのエンジン性能試験で不正
  • オリンパス 科学事業売却交渉で米ベイン軸に調整

創業メンバーの強権ゆえに後継者選びが迷走


日本電産の社長兼COOである関潤氏が退任する見通しが明らかになりました。

関氏は2021年6月に永守氏からCEOを引き継ぎましたが、株価低迷などを理由に今年4月に永守氏が復帰。

関氏の後任には副会長で創業メンバーである小部博志氏が就任するとのことです。

日本電産の取締役会は11名中6名が社外独立役員で、組織図上は監査等委員会が取締役会を監査監督する形になっていますが、永守氏の強権を制御するという点ではうまく機能していないようです。

以前株主総会で永守氏が関氏を紹介していたことがありましたが、あたかも自分の意志に従えば上手くいくと言わんばかりでした。

そして今回は「関は経営力が低い」と評するなど、とても後継者に対する敬意があるとは感じられません。

そもそも、同社全体の売上・利益はこの3年右肩上がりで、関氏の経営手腕が問題視される理由はありません。

関氏が担当している車載事業の営業利益が3年連続で落ちているのも、自動車業界が苦境にあることが理由であって、関氏の問題ではありません。

永守氏が自動車業界の現状や車載事業との関連を知らないはずはないので、不可解な評価だと私は考えます。

日本電産の後継者と目された最高幹部が退任するのはこれで4人目です。

GEキャピタルで活躍された呉文精氏や日産自動車で功績を残した吉本浩之氏、シャープの液晶開発主任から社長まで務めた片山幹雄氏などの素晴らしい人材を引っ張ってきては、すぐに辞めさせてしまうという傾向が見受けられます。

私も以前、今回の関氏も長続きしないのではないかと発言したことがありましたが、予想通りになってしまいました。

次の社長は創業メンバーでもある小部氏とのことで、結局は身内から後継者を選んだ形になりました。

それなら最初から外部から招聘なんてしなければよかったのではないかと思ってしまう人事です。




親会社のトヨタは日野自動車を見捨てていない


日野自動車は先月22日、小型トラックのエンジン性能試験で不正があったと発表しました。

排ガスの測定が国交省の定める回数よりも少なかったということで、これを受けて日野自動車は3月の不正発覚で既に出荷を停止している大型中型トラクターだけでなく小型トラックの出荷も停止しました。

組織ぐるみの不正だと考えざるを得ません。

日野自動車はいすゞ自動車と大中型貨物車メーカーのトップを争う会社で、現在は販売台数首位です。

日本の4大トラックメーカーのうち、三菱ふそうとUDトラックスは外資の傘下にあるので、国産純資本の会社は日野といすゞだけです。

小型の貨物車に関してもゴミ収集車で大きなシェアを持ち、まさに日本が誇る素晴らしい貨物車メーカーであり、私も日野の4トントラックを愛用しているので、この組織ぐるみの不正はとても残念に思います。

親会社であるトヨタは共同出資会社であるCommercial Japan Partnership Technologies株式会社(CJPT)から日野自動車を除名することで怒りを表明しようとしているようですが、私には単にポーズをとっているだけに見えています。

技術開発のための会社であるCJPTから除名されたところで、日野自動車に大きなダメージはありません。

本当に不正を許さないという強い意志があるのなら、トヨタは日野自動車の株を手放すはずなので、今回の件に関するトヨタの本気度はそこまで至っていないと考えられます。




祖業への愛着より成長の機会を選んだオリンパス


オリンパスが生物顕微鏡などを手がける科学事業の売却交渉で、米国のベインキャピタルを軸に調整に入ったことがわかりました。

科学事業はオリンパスの祖業ですが、主力の内視鏡など医療機器事業に経営資源を集中させ、売却資金も成長投資に充てるとみられます。

注目すべきは4,000億円という金額です。

科学事業の営業損益は2023年予想で265億円とされており、これを4,000億円で売るとEV/EBITDA倍率はかなりの高水準となります。

オリンパスのセグメント別業績を見てみると、内視鏡が収益の柱で、次に治療機器が続き、3番目にこの科学事業が来ています。

4,000億円という高値で売れるのならば、3番目の科学事業は手放してでも、主力事業に投資することでさらなる成長が見込めるという算段だと考えます。

顕微鏡はオリンパスの祖業であり、かつては一世を風靡した事業でもあります。

その事業を手放すことには寂寥感もありますが、高額の売却価格を鑑みた冷静で合理的な経営判断だと思います。




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※この記事は8月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日野自動車のニュースを大前が解説しました。

大前はトヨタの対応について、「共同出資会社から除名するだけでは見せかけの対応に過ぎない」と指摘し、「トヨタは日野自動車の株式を手放すぐらいまでしないと、日野自動車の不正を本気で怒っていることは世間に伝わらない」と述べています。

不正や不祥事が起こった際は、社内環境を抜本的に改革する必要があります。

トップが「不正を許さない」というメッセージを発信したうえで、関係者や企業全体で不正や不祥事が起きない環境づくりに取り組むことが大切です。



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